足下でキャリーが重視される中、バリューが引き続きパフォーマンスを牽引しています。
4月初旬のいわゆる「解放の日」以降に市場で見られた波乱は、5月と6月に貿易協定が実現するという楽観的な見方へと変わりました。これは、トランプ政権が当初4月に予定していた懲罰的な相互関税の発動を延期したことに起因します。7月初旬に貿易戦争が再び激化するなど、貿易政策に関する発表に多少の揺れはあったものの、株式市場は依然として史上最高値を更新し続け、7月中旬時点の投資適格社債のスプレッドは再び80ベーシスポイント(bp)を下回りました。1
2025年2月以降、クレジット市場が上昇と下落を繰り返す中、SAFIポートフォリオは単独および同業他社比較ベースのいずれにおいても良好なパフォーマンスを示しました。中期債戦略では、2025年の年初来超過収益のドローダウン(縮小)はなく、長期債戦略でも約10bpのドローダウンにとどまりました。一方、モーニングスターの米国投資適格社債オープンエンドファンドのパフォーマンス平均は、運用報酬控除後で36bpのアンダーパフォーマンスとなりました。その後の回復局面でもSAFIファンドのパフォーマンスは力強く、ファンダメンタルズ重視戦略に対して相対的な優位性を維持しています。SAFIがさまざまな市場環境下で安定的なパフォーマンスを上げたことは図1にも示されています。
図2:システマティック米国投資適格社債ファンド(中期債および長期債)のパフォーマンス
| 中期債(1~10年物)ポートフォリオ | 長期債(10年超)ポートフォリオ | |||||||
| 四半期 (%) | 年初来(%) | 1 年 (%) | SAFI開始以来 (%)* | 四半期(%) | 年初来 (%) | 1 年 (%) | SAFI開始以来 (%)* | |
| システマティック米国高クオリティ社債(グロス) | 2.19 | 4.67 | 8.29 | 5.57 | 1.26 | 3.85 | 5.44 | 0.86 |
| ベンチマーク | 2.03 | 4.4 | 7.51 | 4.72 | 1.13 | 3.67 | 4.62 | -0.12 |
| 超過リターン(グロス) | 0.16 | 0.27 | 0.78 | 0.85 | 0.14 | 0.18 | 0.82 | 0.98 |
| システマティック米国高クオリティ社債(ネット) | 2.19 | 4.67 | 8.27 | 5.55 | 1.26 | 3.85 | 5.43 | 0.85 |
| ベンチマーク | 2.03 | 4.4 | 7.51 | 4.72 | 1.13 | 3.67 | 4.62 | -0.12 |
| 超過リターン(ネット) | 0.16 | 0.26 | 0.76 | 0.84 | 0.13 | 0.18 | 0.8 | 0.97 |
| トラッキングエラーボラティリティ | 0.21 | 0.31 | 0.38 | 0.42 | ||||
| インフォメーションレシオ | 3.62 | 2.69 | 2.12 | 2.3 | ||||
出所:State Street Investment Management、2025年6月30日現在。システマティック米国投資適格社債ファンドのポートフォリオは、2023年12月31日付でSAFI投資プロセスに移行しました。過去の運用実績は将来の成果を示す指標として信頼できるものではありません。1年未満の運用成績は年率換算されていません。本資料に記載された運用成績は、運用報酬控除前(グロス)および控除後(ネット)の数値で示されています。運用報酬控除前の数値にはリターンを低下させる可能性があるアドバイザリー手数料やその他の手数料を反映しておらず、控除後の数値はそれらの費用を差し引いています。*開始日:2023年12月31日。ファンドの履歴はこの期間以前にも存在しますが、SAFIアプローチでは運用されていません。SAFI中期債戦略のベンチマークは「Bloomberg Intermediate Corporate ex Baa Index」、SAFI長期債戦略のベンチマークは「Bloomberg Long Corporate A+ Index」です。
当社の中期債および長期債のシステマティック債券戦略は、第2四半期も引き続き強固なパフォーマンスを示し、A格およびA格以上のベンチマークをそれぞれ16bp、14bp上回りました(報酬控除前)。重要なことは、SAFIが効率的なアルファを生み出していることです。リスク調整後の超過リターンの効率性を見るインフォメーションレシオは、SAFI開始以来、2.3〜2.7の範囲で推移しています。
4月は厳しい市場環境となりましたが(詳細は前回のレポートをご参照ください)、5月と6月はリスク選好度が強まり、スプレッドが縮小する局面となりました。このような環境はバリュー・ファクターにとって有利に働き、実際に当社でもその傾向を把握しました。第2四半期において、バリューは中期戦略で14bp、長期戦略で24bpの超過リターンにそれぞれ寄与しました。過去のレポートでも述べた通り(SAFIに関するすべてのインサイトはこちらのページからご覧いただけます)、当社のSAFIポートフォリオはバリュー、モメンタム、センチメントという三つのファクターに分散することで、景気サイクルを通じて安定したアウトパフォーマンスを実現しています。バリューがより景気循環に連動しやすい性質を持つ一方、モメンタムはその逆の性質を持ち、景気の逆風下でも機能を発揮しやすい傾向があります。
当社が利用するモメンタム・ファクターは複数の資産にまたがる指標で、株式リターンを異なる期間で分析することで、発行体の魅力度(または非魅力度)を判断します。これは、株価が大きく下落した発行体に対して、債券投資家が損失を回避する一助となる可能性があります。ポートフォリオ内でモメンタムをバリューと組み合わせて活用することで、スプレッド拡大局面における「バリュー・トラップ」(正当な理由があって割安な債券価格がさらに下落する可能性がある発行体)を回避することができます。第2四半期にモメンタム・ファクターは中期債戦略において+4bpの超過リターンにとどまり、長期債戦略では11bpのマイナスとなりました。2025年は4月を除き、モメンタムは好調と言えません。一方で、バリューは4月のスプレッド拡大後にうまく機能し、アウトパフォーマンスに大きく貢献しています。こうしたファクターの分散こそが、当社のSAFIアプローチの中核を占める強みであると考えています。
当社のファンダメンタル・アクティブ債券運用チームは、「現在のクレジット市場では、ファンダメンタルズおよびテクニカル要因とバリュエーションがせめぎ合っている状況である」と指摘しています。スプレッドは歴史的に見ても極めてタイトな水準にあり、投資家が追加的なクレジットリスクを取っても対価が十分に得られないことを示唆しています。一方で、クレジットのファンダメンタルズ(企業のバランスシートや利益)は依然として健全で、総利回りが高水準にあることから、米国クレジット市場では年金、保険、個人投資家、海外投資家など幅広い層からの堅調な需要が継続的に発生しています。そのため、チームはクレジットに対してやや保守的なスタンスを取っており、長期的なキャリー・ドラッグ(保有に見合うリターンが得られない状態)による収益の低下を回避しつつ、一方で過度なオーバーウェイトによって、今後幅広く起こり得るマクロ経済や地政学的な動きがもたらす大幅な価格調整のリスクも認識しています。
こうした見解は、当社のシグナルが足元の環境を含むクレジット・サイクルの各局面で、ポートフォリオの配分調整をどのように行う傾向にあるかという点と一致しています。2物事は順調に見えても、そうでなくなる瞬間が訪れます。ファンダメンタルズの悪化が明確なトレンドとして現れる前に、スプレッドが拡大する可能性が高いと考えられます。現在のようにスプレッドがタイトでキャリーが重視される環境下では、バリュエーションが割高であっても、バリュー・ファクターが依然としてアウトパフォーマンスを達成し得ることをデータが示しています。
同時に、モメンタム・ファクターのシグナルには注意を払う必要があります。モメンタム・シグナルは、ポートフォリオをよりディフェンシブなセクター寄りにシフトするタイミングや、特定の発行体がアウトパフォームまたはアンダーパフォームする可能性が高まる局面などを示唆します。サイクルが本質的に転換するまでは、パフォーマンス面ではバリューが引き続き主導的な役割を果たすと考えられます。
全体として、当社のSAFIアプローチは順調に機能しており、安定的かつ効率的なリスク調整後アルファを引き続き提供しています。重要なことは、ファンダメンタルズ重視戦略に比べ、魅力的な上昇または下落局面での対応能力を示している点です。最終的に、SAFIがクライアントにもたらすメリットは何でしょうか? それは、競争力があり、かつ補完的なアルファを提供しつつ新たな「見通し」を迅速に、客観的に、かつ幅広く示す能力を備え、ファンダメンタルズ重視戦略よりも魅力的な手数料水準で実現できる点にあります。