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USDは中立に転換、短期的なリスクの後退を反映

金利上昇、原油価格の高止まり、そして米国経済の底堅い成長が9月の米ドル上昇を支えたことから、当社は米ドルの見通しをネガティブから中立へ引き上げました。また、英ポンドおよび日本円の見通しも中立へ変更し、ニュージーランドドルはポジティブへ引き上げました。

金利の高止まりとエネルギー価格の上昇は、投資家の警戒感を維持し、今後発表される第3四半期決算を厳しい目で評価する姿勢につながるとみられます。一方で、現在の堅調な経済成長と企業利益の力強い増加が、リスク回避の動きの拡大を抑制する可能性があります。これらはここ数カ月に見られた相反する要因とおおむね同様であり、引き続き相場が一定のレンジ内で推移することを示唆しています。しかし、現在は何らかの市場のひずみが表面化する可能性のある金利水準に近づいています。堅調な成長を踏まえると差し迫った問題ではないと考えられますが、投資家の懸念を高めるには十分であり、最近の為替相場のレンジを抜け出すきっかけとなる可能性があります。

こうした環境下では、米ドルが上方向にレンジを突破する可能性が最も高く、ユーロは下方向に抜ける可能性が最も高い通貨として際立っています。米国はG10諸国の中でも成長率が高く、原油価格や金利変動に対する感応度も比較的低いため、相対的に魅力的です。

一方、EUは金利とエネルギー価格の双方に対する感応度がより高く、フランスの債務持続性に対する懸念や、フランス国債(OAT)とドイツ国債(Bund)のスプレッドの急拡大が、さらなる下振れリスクをもたらしています。こうしたEUの成長および財政面のリスクは、今後もスウェーデン・クローナに波及する可能性があります。ただし、当社はスウェーデン経済の中期的な成長軌道をますます高く評価しています。また、食品および電力に対する付加価値税(VAT)の一時的な減税や公共交通機関への補助金によってインフレ率が人為的に押し下げられているため、市場はインフレ正常化のスピードを過小評価していると考えています。

スイスフランは、フランス国債のスプレッド拡大と国内経済の力強い成長に支えられ、引き続き上昇基調を維持する可能性が高いと考えられます。英ポンドも短期的にはユーロに代わる魅力的な投資先とみられます。政策金利が欧州中央銀行(ECB)より125bp高いことに加え、購買担当者景気指数(PMI)は景気拡大の継続を示し、小売売上高も市場予想を上回っています。また、労働市場は軟化しているものの底堅さを維持しています。

しかしながら、当社は引き続き英ポンドに対してネガティブな見方を維持しています。その理由は、英国債(ギルト)利回りの上昇による財政負担の拡大、力強さを欠く経済成長、そしてイングランド銀行が市場で織り込まれている今後1年間で4回の利上げを実施するとの見方に懐疑的であるためです。

リスク資産や商品市況との連動性が高いノルウェー・クローネと豪ドルは、中期的には魅力的に見えますが、短期的には高い市場変動性と世界的な株式市場の軟調さがリスク要因となっています。特に、9月には原油価格が15%上昇したにもかかわらずノルウェー・クローネはほぼ横ばいにとどまり、豪ドルはG10通貨平均に対して0.6%下落しました。これは、不安定な世界的リスクセンチメントに加え、ノルウェー銀行および豪準備銀行(RBA)の利上げ局面が終了に近づいていることから、高い商品価格による恩恵を打ち消していることを明確に示しています。当社は引き続き、より魅力的な投資機会が訪れるのを待つ姿勢です。

図表2: 2026年10月の方向性見通し

 Tactical outlookStrategic outlookComment
USD短期は堅調も、長期では財政赤字など構造的な逆風が残る
CAD当面は上値が重いが、中期的には回復期待
EURエネルギー高、金利高、財政リスクが重し 
GBP景気は底堅いが、財政制約が懸念材料 
JPY材料不足で方向感乏しいが、為替介入が下支え 
CHF安全資産需要は追い風も、中長期のキャリーは不利 
NOKファンダメンタルズは良好だが、市場リスクに敏感 
SEK短期は弱含みも、中期的な反発余地あり 
AUD高金利と底堅い成長が支援する一方、短期リスクに注意 
NZD割安感があり、中期的な回復余地が大きい

注釈:上の表における各通貨の見通しは全てG10通貨平均との相対評価です。

出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年9月30日時点。

USD - 米ドル

米ドル上昇を支えた9月の追い風堅調な雇用と個人消費の拡大、高い金利水準、エネルギー価格の上昇、そして力強い企業利益の成長が、9月の米ドル上昇を支えました。これらの要因は、米ドルが過去18カ月間続いてきたレンジ相場を上方向に突破する可能性を高めています。しかし、その前に、最近の急速な上昇ペース、昨日発表された弱めの雇用統計、コアPCEインフレ率の下方修正、さらに中東からの原油輸送量が戦争前の水準に近づいているとの報道を踏まえると、一時的な調整局面を迎えるリスクが高まっていると考えています。

もっとも、米国の成長率、インフレ率、エネルギー価格、およびFRBの金融引き締め見通しに大きな悪化が生じない限り、こうした調整は限定的かつ短期間にとどまると予想しています。そのような変化が今後4~6週間のうちに起こる可能性は低いとみています。雇用統計は軟調でしたが、過去3カ月平均では月間5万1,000人の雇用増を維持しており、完全雇用を支えるには十分なペースです。

中東からのエネルギー輸送量は増加し、原油価格も高値から下落していますが、精製エネルギー製品の価格は引き続き高止まりする可能性が高く、企業や消費者にとってはこちらの方がより重要です。同時に、AIブームと堅調な個人消費が、GDP成長率と企業利益の成長を他のG10諸国と比べて下支えすると考えられます。

来年に向けては、米ドルの逆風となり得る要因も存在します。2027年には、2026年に見られた大規模な減税や関税還付による押し上げ効果が再現される可能性は低く、家計貯蓄率の低下や実質賃金の継続的なマイナス成長により、個人消費の持続可能性について疑問が生じています。

しかし、まだ2027年ではありません。AI関連設備投資の拡大と、米国家計の根強い消費意欲による追い風は、こうした逆風をかなり長期間にわたって打ち消す可能性があります。

当社は引き続き、数年単位の長期的な視点では米ドルに対して慎重な見方を維持しています。関税やその他の政策に起因する米国のマクロ経済リスク、高水準の債務と財政赤字、そして経常赤字は、米ドルの長期的な魅力を損なう要因となっています。

設備投資ブームとAIを巡る熱狂は、最終的には成果をもたらす可能性が高いと考えています。しかし、その恩恵が本格的に現れる前に、市場が不安定になる局面をいくつか経験する可能性があります。革新的な企業群と、柔軟かつ活力のある米国の労働市場・資本市場は、米国を魅力的な投資先たらしめています。しかし、こうした企業への投資を維持しながら、顕在化している米国のマクロ経済リスクに備えるために、米ドルの為替ヘッジを一部組み合わせることも有効ではないでしょうか。

CAD - カナダドル

カナダドルの短期見通しは難しい局面にあります。プラス材料としては、景気回復の進展、エネルギー輸出価格の高止まり、そしてカナダ銀行(BoC)が総合インフレ率の上昇がインフレ期待に波及するリスクへの懸念からタカ派的な姿勢を示したことが挙げられます。また、特にエネルギー部門を中心とした設備投資は来年改善する見込みです。こうした要因はカナダドルを支えるものであり、当社のモデルスコアカードでも強気の評価となっています。しかし、米国との関税摩擦が継続する中での経済への下押し圧力に加え、コアインフレ率が数カ月にわたりBoCの目標である2%付近にとどまっていること、そして米国経済の加速とFRBのタカ派姿勢の強まりを背景に、カナダドルは引き続き上値の重い展開になる可能性があります。

先月、当社は米ドル/カナダドル(USD/CAD)のレンジを1.38~1.42と予想しましたが、その見通しはおおむね的中しました。現在では、カナダドルが来年にかけて1.30台前半から半ばへ向けてより安定的に回復する前に、USD/CADが1.44~1.45まで小幅に上昇する可能性が高まっていると考えています。実質政策金利は0%近辺にあり、長期的な均衡水準を下回っている可能性が高く、景気回復が持続的なものになれば上昇していくとみられます。

関税は課題ではあるものの、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)の下では貿易の約80%が引き続き実質的に関税の対象外となっています。当社は、米国との関税を巡る応酬が管理可能な範囲にとどまり、来年にかけて徐々に沈静化していくことを期待しています。

2027年から2028年にかけては、カナダの住宅ローン金利の低下も緩やかな景気刺激要因となる、あるいは少なくとも逆風ではなくなると考えています。金利上昇局面のピーク近辺で組成された住宅ローンが順次借り換え時期を迎えるためです。同時に、米国経済は引き続き健全さを維持するものの、今年後半から来年にかけてインフレとともに成長ペースが鈍化するとみており、相対的なカナダ経済の成長ストーリーは改善すると予想しています。最終的には、5年以上の長期的な視点において、当社の米ドル弱気シナリオが実現する場合、USD/CADは再び1.20近辺まで低下すると見込んでいます。

EUR – ユーロ

当社は、最近の経済指標の改善や9月の欧州中央銀行(ECB)による利上げにもかかわらず、ユーロに対してG10通貨平均比で弱気な見方を維持しています。最大の理由は、高止まりするエネルギー価格と高金利が引き続き大きな逆風になると考えられるためです。さらに、フランスの債務持続性に対する投資家の懸念、EUの潜在成長率の低さに対する長年の不安、中国との競争激化、AI分野におけるEUの出遅れ、そしてこれらの課題に対応するための改革の進展が緩慢であることなど、多くのリスク要因が存在しています。

このような状況では、ECBによる追加利上げがあと1〜2回実施されたとしても、ユーロの支援材料にはなりにくいと考えています。追加利上げは景気にさらなる負担を与える一方で、ユーロをG10通貨の中でも高金利通貨の一角に押し上げるには至らないためです。もっとも、来年は状況が異なる可能性があります。エネルギー価格が落ち着き、フランスの選挙をめぐる不透明感が解消され、米国経済が緩やかに減速し、FRBが今回の小規模な利上げ局面を終了させ、さらにドイツの鉱工業生産に見られる足元の改善がより広範かつ持続的な景気回復につながれば、ユーロを取り巻く環境は改善するでしょう。それまでは、ユーロには引き続き下押し圧力がかかり、さらなる下落リスクが高いとみています。

5年以上の長期的な視点では、当社はユーロに対してより前向きな見方を維持しています。ただし、その背景はEUの強さというよりも、前述の米ドルに関する見通しで述べたような米国の相対的な弱さにあります。米国が以前ほど信頼できる貿易・安全保障パートナーではなくなりつつある中で、EUの投資家が米国資産への集中投資を見直し、少なくとも平均的な為替ヘッジ比率を引き上げるべきだという考えには依然として十分な説得力があります。

一方で、他のG10通貨に対するユーロの見通しはそれほど楽観的ではありません。ユーロは日本円、ノルウェー・クローネ、スウェーデン・クローナ、カナダドル、豪ドルに対して割高な水準にあり、今後数年間にわたり、これらの通貨を大きくアンダーパフォームする可能性が高いと考えています。

 GBP – 英ポンド

当社は、英ポンドに対してG10通貨平均比で「中立ながらやや弱気」の見方を維持しています。中立とする理由は、英国の金利水準がG10通貨の中で上位半分に位置していることに加え、実質国内総生産(GDP)成長率も最近の市場予想レンジの上限に近い水準で推移しているためです。ただし、その成長率は絶対水準では年率1.4~1.5%程度にとどまり、決して力強いものではありません。また、バーナム政権は財政運営において比較的穏健な姿勢を維持しており、フランスの債務問題が注目を集める中でも投資家の信頼を保つことに成功しています。

一方で、当社が弱気バイアスを維持する理由も複数あります。英国経済は依然としてエネルギー価格上昇の影響を受けやすく、失業率は高めの水準にあり、実質賃金の伸びも鈍い状況です。また、英国債(ギルト)利回りの上昇により、政府が予算面で活用できる財政余地の多くが失われています。金融政策面では、コアインフレ率が2.6%まで低下していることに加え、賃金上昇率も力強さを欠いているため、イングランド銀行が市場で織り込まれている今後1年間で4回の利上げを実施する可能性は低くなっていると考えています。

長期的には、少なくとも米ドルやスイスフランとの比較では、そこまで悲観的な見方はしていません。3~5年の投資期間では、ポンド/米ドル(GBP/USD)は1.40を上回る水準まで上昇する可能性があるとみています。また、割高で低金利のスイスフランに対しても、今後数年間のトータルリターンベースで英ポンドが優位に推移すると予想しています。しかし、米ドルとスイスフランを除くその他のG10通貨に対しては、英ポンドの見通しはそれほど明るくありません。中長期的には、英ポンドはG10通貨の多くに対して苦戦する可能性が高いと考えています。

JPY - 日本円

当社は、9月に大きく上昇した日本円について、目先の新たな材料不足を踏まえ中立の見方としています。日銀は9月に市場予想どおり利上げを実施し、日本と米国の当局者も円相場を支持する姿勢を改めて示しました。また、米国と日本による協調的な為替介入の可能性が現実的な抑止力として存在しているため、円の下落余地は限定的であると引き続き考えています。

一方で、市場ではすでに日銀の金融政策見通しが上方修正されており、為替介入リスクも広く認識されていることから、現時点では円高をさらに後押しする新たな材料は多くないとみています。むしろ、日本以外で世界的に金利上昇が進んでいること、日本の短期金利が依然としてG10通貨の中で2番目に低い水準にあること、そして家計消費の低迷を踏まえると、短期的には円安圧力が優勢となる可能性があります。資金の本国回帰(レパトリエーション)も円を支える要因として注目されていますが、当社はこれが本格化するのは2027年、あるいは2028年以降になる可能性が高いと考えています。依然としてマイナスのキャリーコストが大きいため、ヘッジ比率を大幅に引き上げる動きにはつながりにくく、特に株式市場を中心とする海外資産の高いリターンが、日本の投資家に海外資産保有を続けるインセンティブを与えています。

もっとも、この状況は時間の経過とともに変化すると考えています。FRBによる現在の利上げ局面が終了し、将来の利下げが意識されるようになることや、世界の株式市場のリターンがいずれ落ち着くことによって、海外資産への投資妙味は徐々に低下する可能性があります。また、日本国内では力強い設備投資計画とAI関連分野の成長機会拡大が、国内投資を促進すると期待されます。さらに、日本円が上昇するために大規模な資金還流が必ずしも必要ではない点も重要です。証券投資や対外直接投資による資金流出ペースが大幅に減速するだけでも、円高要因として十分に機能する可能性があります。

長期的には、当社は米ドルに対する日本円の大幅な上昇余地を見込んでいます。当社の長期的な米ドル弱気シナリオに基づけば、今後3~5年の間に米ドル/円(USD/JPY)は120~130円のレンジまで低下する可能性が高いと考えています。

 CHF – スイスフラン

当社は、スイスフランについてG10通貨全体に対して中立的な見方を維持していますが、短期的にはやや強気のバイアスを持っています。スイスフランは、世界的に実質金利および名目金利が上昇する中で、名目政策金利がゼロ、実質政策金利がマイナスというスイスの金利環境を踏まえると、魅力度が低下しています。防衛的な通貨とされる日本円でさえ、現在では1.25%超のプラスのキャリーを提供しており、その水準はさらに上昇しています。このため、当社はスイスフランをキャリー取引の資金調達通貨として選好しています。その結果、マイナスの金利キャリーを背景に、トータルリターンベースでは中長期的にスイスフランに対して弱気な見方をしています。

一方で、短期的にはスイスフランの上昇を予想しています。その背景には、国内経済成長の加速、コアインフレ率が前年比0.5%へ持ち直していること、そして何よりフランス国債スプレッドの急拡大に伴う安全資産需要の高まりがあります。7月に米国と日本が協調して円買い介入を実施した後、市場ではキャリー取引の資金調達通貨として円を売る動きからスイスフランを売る動きへとシフトしていることが確認されました。

しかし、足元の環境では、こうした動きが一部巻き戻される可能性があります。決算発表シーズンを通じて株式市場のボラティリティが高まったり、世界的な金利が低下方向に修正されたりした場合、安全資産としてのスイスフラン需要はさらに強まる可能性があります。また、それに伴い、キャリー取引の一時的な巻き戻しが広がれば、スイスフラン上昇に拍車がかかることも考えられます。

NOK – ノルウェー・クローネ

当社はノルウェー・クローネについて引き続き前向きな見方を維持していますが、リスクと価格変動性の高い投資対象であると考えています。ノルウェー・クローネは原油価格の急上昇に連動して推移しており、8月にはG10通貨の中でも堅調なパフォーマンスを示しました。エネルギー市場における供給不足が続いていることや、米国とイランの対立を巡る状況に大きな進展が見られないことから、原油価格が高止まりし、さらなる上昇局面を迎える可能性が高まっています。

こうした環境はノルウェー・クローネにとって追い風です。また、ノルウェーの金利水準は豪ドルに次いでG10通貨で2番目に高く、これも支援材料となっています。もっとも、米国とイランが信頼性の高い合意に達した場合には、原油価格が下落し、ノルウェー・クローネには下押し圧力がかかる可能性があります。短期的な合意成立は当社のメインシナリオではありませんが、ノルウェー・クローネの買いポジションにとって最大のリスク要因の一つであることは間違いありません。

一方で、国内経済指標は原油高という追い風とは対照的な動きを示しています。GDP成長率、コアインフレ率、小売売上高はいずれも市場予想を下回りました。金利水準そのものは依然として高いものの、8月のノルウェー金利の上昇幅はG10諸国の多くと比べて小幅でした。このような国内経済指標の弱さに加え、原油価格の変動の大きさや、ノルウェー・クローネが歴史的にリスク資産との連動性が高いことを踏まえると、当社としても強気姿勢をやや抑制しています。

長期的な見通しはより明るいものです。ノルウェー・クローネは当社が算出する適正価値に対して依然として割安な水準にあり、安定的ではあるものの着実な潜在成長率、魅力的な金利水準、そして健全な政府財政基盤に支えられています。これらの要素を踏まえると、中長期的には上昇余地が大きいと考えています。

SEK – スウェーデン・クローナ

当社はスウェーデン・クローナに対して引き続き戦術的に弱気な見方をしています。ただし、クローナはすでに大きく下落しており、中期的に注目すべき前向きな兆候も見られます。現在の市場は、高い金利と力強く底堅い経済成長を評価する傾向がありますが、スウェーデンの政策金利は1.75%であり、税制要因を調整したコアインフレ率がおよそ2%であることを考慮すると、クローナにとって魅力的な金利環境とは言えません。また、高止まりするエネルギー価格やEU景気の低迷に対する高い感応度も、クローナの重荷となっています。

当社はエネルギー価格が近いうちに大きく低下するとは見ておらず、過去2カ月のコアインフレ率も前月比で市場予想を下回りました。このため、市場が追加金融引き締めを織り込む余地は限られています。さらに、ユーロ圏が抱える課題への投資家の関心が高まっていることも、クローナに対する下押し圧力として作用する可能性があります。その結果、クローナはG10通貨平均に対してさらに下落する余地があると考えています。

一方で、明るい材料もあります。家計消費が前年比4%増と堅調であり、総合PMIも57.6と力強い拡大を示していることから、2%台半ばの経済成長が見込まれています。これらはクローナにとって追い風となる要因です。また、11月に予定されているリクスバンク(スウェーデン中央銀行)の利上げも、クローナを支える材料になるとみています。

長期的な観点では、バリュエーション面もクローナに有利です。クローナは実質実効為替レートベースで見て依然として歴史的に割安な水準にあります。さらに、スウェーデンの政府債務残高対GDP比は33%と、多くの先進国と比較して低水準にあり、財政負担が重くなりがちな世界において優位性を持っています。また、当社の長期的な米ドル弱気シナリオが進展する中で、世界の投資家によるポートフォリオのリバランスの恩恵をスウェーデンが受けることも期待しています。総じて見ると、高いエネルギー価格、EU景気の減速、実質金利の低さに伴う波及リスクが、堅調な経済成長見通しによる恩恵を上回り、当面はクローナに下押し圧力をかける可能性が高いと考えています。しかし、中期的な反転につながり得る前向きな材料については、引き続き注視していく方針です。

AUD – 豪ドル

当社は豪ドルに対して中立的な見方を維持していますが、やや強気のバイアスを持っています。G10通貨の中で最も高い4.6%の政策金利に加え、今後6カ月以内に追加利上げが実施される可能性が高いことは、豪ドルのバリュエーションを下支えする要因です。また、総合PMIは景気拡大を示す51.3、失業率は4.6%と低く(新型コロナ禍前は5%を上回る水準で推移していました)、8月の家計消費も前年比6.8%増となっており、経済成長の底堅さを示しています。高金利と堅調な成長は、特に長期的な歴史的評価水準と比較して割安な豪ドルのような通貨にとって、通貨高につながりやすい環境と言えます。

しかしながら、足元ではやや魅力が薄れてきています。豪準備銀行(RBA)は利上げ局面の終盤に近づいている一方で、特にFRBを中心に他の主要中央銀行はよりタカ派的な姿勢へと移行しています。その結果、投資家の豪ドルに対する期待は以前ほど高くありません。また、最近の家計消費、小売売上高、住宅価格、失業率のデータには減速の兆しが見られています。加えて、テクノロジーセクター以外で株式市場の下落圧力が強まることや、ハイイールド債のクレジットスプレッド拡大は、歴史的に豪ドルにとって逆風となってきました。そのため、ファンダメンタルズ、金利水準、バリュエーションは魅力的である一方、新たに出てくる経済指標やニュースの内容がやや弱含んでいることから、当面の豪ドルに対しては慎重な姿勢を維持しています。

長期的には、当社は豪ドルに対してかなり前向きな見方をしています。特に米ドルやスイスフランに対しては上昇余地が大きいと考えています。オーストラリアの投資家は、為替ヘッジを行っていない米ドル建て資産を比較的多く保有しているとみられます。当社の長期的な米ドル弱気シナリオの下では、高い金利水準を持つ豪ドルは有利なポジションにあります。また、オーストラリアの投資家が為替ヘッジ比率を引き上げたり、米国への過度な投資配分を見直して、より分散されたグローバルポートフォリオへ資金を移したりする動きが進めば、豪ドルの追い風になると考えています。

NZD – ニュージーランド・ドル

当社はニュージーランドドルに対して、G10通貨平均比で強気の見方をしています。9月にニュージーランドドルがG10通貨の中で最も大きい2.3%の下落を記録し、52週安値を付けた結果、当社が推計する長期的な適正価値を16%下回る水準まで下落したためです。原油価格の上昇、世界的な投資家心理の悪化、そして9月1日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)が実施した利上げが比較的ハト派的な内容であったことが、海外で広範な利上げが行われる中でニュージーランドドルの重荷となりました。

もっとも、当社としても今回の強気シグナルがやや時期尚早である可能性は認めています。足元の経済活動は依然としてばらつきがあり、金利水準もG10平均付近にとどまっています。また、投資家心理のさらなる悪化による市場変動リスクも明確に存在しています。

しかしながら、ニュージーランド経済は2024~2025年の景気後退から着実に回復しつつあります。製造業購買担当者景気指数(PMI)と消費者信頼感指数はいずれも最近改善傾向を示しており、景気回復の広がりも確認されています。純移民流入の増加などを背景に、その回復は業種や地域を問わず浸透し始めています。したがって、やや早い段階かもしれませんが、当社はニュージーランドドルに中期的な回復余地があるとみています。今後さらに下落する局面があれば、段階的に買いポジションを積み増していくことが妥当であると考えています。

長期的な見通しについては、やや複雑です。当社の長期的な適正価値モデルによると、ニュージーランドドルは米ドルおよびスイスフランに対しては依然として割安であり、大きな上昇余地があります。一方で、日本円や北欧通貨に対しては割高な水準にあるとみています。

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