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レンジ相場が続く外国為替市場

外国為替市場では、8月も主要通貨が一定のレンジ内で推移しました。しかし、エネルギー価格の上昇や政策面での予想外の変化、さらには成長率見通しの変化により、通貨市場では新たな投資機会とリスクが生じています。

当社では、相反するファンダメンタルズ要因が作用していることから、外国為替市場は9月もレンジ相場が続くとみています。このような環境下では、米ドルはレンジ内で上昇する可能性がある一方、ノルウェークローネ、豪ドル、円はレンジ上限付近で推移し続けると考えられます。これに対し、スウェーデンクローナ、ユーロ、スイスフラン、英ポンドはレンジ下限に向けて下落するリスクがあります。もっとも、このやや米ドルに強気な見方とは対照的に、当社の公表モデルでは米ドルの順位が最も低くなっています。インフレ率や景気指標が市場予想を下回る状況が続けば、米ドルには引き続き下押し圧力がかかる可能性があります。

ただし、こうした順位付けは必ずしも安定的ではありません。各通貨のシグナル強度の差は小さく、経済指標のサプライズにわずかな変化が生じるだけでも順位が大きく変わる可能性があります。また、金融政策や地政学的な動向は依然として重要かつ変動の大きい要因であり、モデルでは迅速に捉えきれない点にも留意が必要です。

世界経済は引き続き底堅く推移しており、企業収益の伸びも良好です。金融環境も総じて支援的であることから、高金利通貨や資源価格の恩恵を受けやすい通貨にとって追い風となっています。通常、9月から10月にかけてはリスク資産の変動が高まりやすい季節ですが、力強い企業収益の伸びを背景に、今年は比較的落ち着いた市場環境となる可能性があります。

ただし、当社の懸念は高まりつつあります。第2四半期から夏場にかけて、米国以外の地域ではエネルギー価格の上昇という逆風があったにもかかわらず、経済成長は市場の低い期待を上回りました。特に、ユーロ圏、英ポンド圏、スウェーデン、スイス、日本などのエネルギー純輸入国でその傾向が顕著でした。しかし、現在は期待水準そのものが高まっているため、今後さらに好材料が続く可能性は低く、むしろ期待を下回る結果となるリスクが高まっています。

石油精製品価格やEUの天然ガス価格は依然として第2四半期平均を大きく上回っており、今後の景気成長の重しとなる可能性があります。また、紅海やホルムズ海峡を経由するエネルギー輸送の減少に加え、ロシア産石油製品の輸出が日量約200万バレル減少していることから、今後1~3カ月の間にエネルギー価格が再び大きく上昇するリスクもあります。さらに、多くの国で金利が数十年ぶりの高水準にあり、こうした状況も成長の下押し要因となっています。

一方、米国では雇用の減速、予想を下回るインフレ率、小売売上高の弱さなどを背景に、市場の期待水準が低下しています。他地域の期待が上昇するなか、米国の方が今後ポジティブなサプライズを生み出しやすい状況にあると考えられます。実際、本レポート執筆の約1時間前に発表された雇用統計は堅調な内容でした。また、米国経済は追加的なエネルギー価格上昇の影響も比較的受けにくいとみられます。

こうした相対的な経済指標のサプライズ余地に加え、FRBのウォーシュ議長による金融引き締め寄りの姿勢も踏まえると、モデル上のシグナルが弱いにもかかわらず、米ドルはレンジ上限に近づく可能性があると当社では考えています。一方で、下落リスクが高いのは、円を除く低金利のエネルギー輸入国通貨であるユーロ、スイスフラン、スウェーデンクローナです。英ポンドについても、エネルギー価格の影響を受けやすいことに加え、金利上昇によって財政面の柔軟性が低下していることから、相対的に脆弱な立場にあります。

石油精製品価格が過去最高水準に達し、金利も急上昇していることから、リスク資産のボラティリティが大きく高まる可能性があります。そのため、仮に原油価格が大幅に上昇した場合でも、当社は豪ドルやノルウェークローネに対して慎重な見方を維持しています。

こうした環境のなかで、最も恩恵を受ける可能性が高い通貨は円と考えられます。日本銀行は利上げペースを加速させる可能性があり、また2027年を見据えた国内への資金還流期待も高まっています。加えて、リスク資産のボラティリティ上昇は円を支援する要因となりやすいとみられます。

当社では、当面は米ドル/円相場が155~160円のレンジ内で推移すると予想していますが、150円近辺、あるいはそれをやや下回る水準へ向かう可能性は高まりつつあると考えています。また、円は他の低金利通貨に対しても、相対的に良好な投資環境にあるとみています。

図表2: 2026年9月の方向性見通し

 短期見通し中長期的見通しComment
USD景気の勢いは弱いものの、上振れ余地が拡大
CAD景気は改善も、関税が上昇余地を抑制する可能性
EUR利回りの低さと成長鈍化が重し
GBP利回りは高いが、成長の弱さと財政面の不透明感が懸念材
JPY高景気は底堅いものの、割高な水準で利回りも低くなっている。ファンディング通貨としての魅力あり 
CHF高い利回りと原油高が追い風だが、ボラティリティの高さには注意が必要
NOK低インフレ率と低利回りが重しとなる一方、景気は改善
SEK低インフレ率と低利回りが重しとなる一方、景気は改善
AUD景気は改善しており、豪州準備銀行(RBA)の利上げも支援材料だが、リスクには注意が必要
NZDニュージーランド準備銀行(RBNZ)の姿勢がやや慎重化、景気回復も緩やか

注釈:上の表における各通貨の見通しは全てG10通貨平均との相対評価です。

出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年8月30日時点。

USD - 米ドル

米ドルは、当社のモデル・ダッシュボードにおいて最も評価順位の低い通貨となっています。これは、雇用統計や小売売上高、インフレ率が市場予想を下回る結果となったことに加え、株式市場のパフォーマンスが他のG10諸国に比べて劣後したことを反映しています。こうした状況は、米ドルが過去12カ月のレンジの下限近辺で推移している現状と整合的です。今後1〜2カ月の間に、特に消費者物価指数(CPI)が再び弱い結果となれば、米ドルにはさらなる下押し圧力がかかる可能性があります。

ただし、モデルが示すシグナルの強さは依然として限定的である点に注意が必要です。そのため、経済指標や市場環境がわずかに改善するだけでも、米ドルの順位は急速に変化する可能性があります。実際に、その兆候はすでに見え始めています。FRBのウォーシュ議長はジャクソンホール会議で金融引き締め寄りの姿勢を示し、8月の雇用統計も堅調な内容となりました。また、石油精製品価格は今回の景気循環局面における最高水準へと上昇しています。

一方で、米国外では経済指標が予想を上回るケースが続いたことで、投資家は成長見通しを引き上げるとともに、イランとの紛争やエネルギー価格上昇による景気への影響を従来より軽視するようになっています。しかし、エネルギー価格の上昇が続き、紛争にも明確な終結の兆しが見られないなか、米国外でさらなるポジティブサプライズが実現することは徐々に難しくなっていくと考えられます。

総合的に判断すると、モデル上の評価は低いものの、今後1〜2カ月は米ドルが反発する可能性の方が高いと当社ではみています。ただし、その場合でも過去12カ月のレンジ内での動きにとどまると予想しています。

一方で、当社は米ドルの長期的な見通しについては引き続き慎重な姿勢を維持しています。8月には、その背景となる要因が改めて確認されました。米国の政府債務残高は40兆米ドルを超え、さらに米財務省がイールドカーブの平坦化を目的とした「オペレーション・ツイスト」を実施したことは、長期的な通貨価値の低下リスクを示唆しています。

もちろん、革新的な企業群に加え、柔軟性と活力を備えた米国の労働市場や資本市場は、引き続き世界の投資資金を引き付ける大きな魅力となっています。しかし、人工知能(AI)関連投資や米国株式への海外資金の集中が進むなかで、バリュエーションも高水準にあります。そのため、AIを巡る期待が大きく後退するような局面では、米ドルと米国株式が同時に下落する可能性も考えられます。

まとめると、関税や各種政策に起因するマクロ経済リスクの高まり、膨張する政府債務と財政赤字、そして恒常的な経常収支赤字などを背景に、米ドルの長期的な投資魅力度は低下しています。そのため、革新的な米国企業や魅力的な投資機会への投資を維持しながらも、米ドルのヘッジ比率を高めることで、こうした米国固有のマクロ経済リスクへの備えを検討する価値があると考えます。

CAD - カナダドル

カナダドルは引き続きレンジ相場で推移する可能性が高く、対米ドルでは主に1.38〜1.42カナダドルの範囲で取引されるとみています。雇用環境の改善、購買担当者景気指数(PMI)の持ち直し、市場予想を上回る小売売上高などを背景に、最近の景気減速局面を経て、国内総生産(GDP)は予想を上回る可能性があります。また、インフレ率は依然として目標を上回っており、景気改善とあわせて考えると、今後数四半期にわたりカナダ銀行による追加的な金融引き締めの余地があると考えられます。

一方で、課題は関税です。米国は8月に幅広い品目に対して追加で50%の関税を導入し、カナダも報復措置で対抗しました。この貿易摩擦は、改善に向かう前にさらに激化する可能性があります。こうした不透明感に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの可能性が高まっていることから、経済ファンダメンタルズが改善しているにもかかわらず、短期的なカナダドルの上昇余地は限定的になるとみています。

当社は中期的にはカナダドルに対してより前向きな見方をしています。金融政策は依然として適度に緩和的であり、実質政策金利は0%近辺と、長期的な均衡水準を下回っている可能性があります。景気回復が持続すれば、実質政策金利は徐々に上昇すると考えられます。関税は引き続き逆風要因ですが、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)の下で、貿易の約80%は引き続き実質的に無関税で行われています。また、2027年から2028年にかけては、高金利局面で組成された住宅ローンの借り換えが進むことで、低下した住宅ローン金利が家計の支援材料となる可能性があります。

同時に、米国経済は引き続き堅調に推移するものの、今年後半から来年にかけてはインフレ率とともに徐々に減速すると予想しています。全体としては経済環境が徐々に改善し、米ドル/カナダドル相場は2026年末から2027年初めにかけて1.30台半ばまで低下すると見込んでいます。また、当社の長期的な米ドル弱気見通しを前提とすると、今後数年のうちに米ドル/カナダドル相場が1.20程度まで低下する可能性もあると考えています。ただし、米ドル安はカナダドルにとって逆風となる可能性があるため、カナダドルは米ドルを除くG10通貨に対しては相対的に出遅れる展開が続くかもしれません。

EUR – ユーロ

当社は、最近の経済指標の改善や9月の欧州中央銀行(ECB)による利上げの可能性が高いことを踏まえても、ユーロについてはG10通貨平均に対して弱気な見方を維持しています。その背景には、イランとの紛争や原油価格の上昇が当面続く可能性が高く、景気見通しの重しになると考えられることがあります。エネルギー価格上昇にもかかわらず、EU経済は底堅さを示してきたことで投資家の評価を高めてきました。しかし、その結果として市場の期待水準も引き上げられており、紛争の影響が強まるなかでEUの天然ガス価格はすでに第2四半期平均を約60%上回っています。このため、ユーロ圏の経済指標が期待を下回る可能性は高まりつつあります。

このような環境下では、ECBによる追加の1〜2回の利上げがユーロを大きく支援する可能性は低いと考えています。金融引き締めはインフレ抑制には寄与するものの、同時に景気への逆風を強めることになります。また、利上げを実施しても、ユーロはG10通貨の中で特に高い利回りを持つ通貨にはなりません。こうした循環的要因に加え、高水準の債務、中国との競争激化、人工知能(AI)関連投資の恩恵の限定性、成長促進に向けた構造改革の遅れといった構造的課題も重なり、ユーロにとっては厳しい投資環境が続いています。

長期的には、当社はユーロに対して前向きな見方を維持していますが、その主な理由はユーロの強さではなく、前述した米ドルの弱さにあります。また、米国が貿易や安全保障の面で以前ほど信頼できるパートナーではなくなりつつあることを踏まえると、欧州の投資家が米国資産への集中投資を見直す、あるいは為替ヘッジ比率を引き上げる意義は引き続き大きいと考えられます。

一方、他のG10通貨に対する見通しはそれほど良好ではありません。ユーロは円、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、カナダドル、豪ドルに対して割高な水準にあるとみられ、今後数年間はこれらの通貨に対して大きく劣後する可能性が高いと考えています。

GBP – 英ポンド

当社は、英ポンドについてG10通貨平均に対して弱気な見方をしています。英国経済は依然としてエネルギー価格上昇の影響を受けやすく、失業率は高水準にあり、実質賃金の伸びも低調です。さらに、英国国債(ギルト)利回りの上昇によって利用可能な財政余地の多くが失われており、この秋に予定される予算編成の自由度を制約しています。金融政策面では、コアインフレ率が2.6%にとどまる一方で賃金上昇率が鈍化していることから、今後1年間で市場が織り込む2.75回分の利上げをイングランド銀行が実施できない可能性が高まっています。

また、財政面の制約が強まるなか、新政権にとっての追い風の期間も長くは続かないとみられます。限られた財政余力のもとで構造的な成長課題への対応を迫られるうえ、債券市場の監視も一段と厳しくなっています。

一方で、長期的な見通しは、少なくとも米ドルやスイスフランに対してはそれほど脆弱ではないと考えています。当社は3〜5年の期間で、英ポンド/米ドル相場が1.40を上回る水準まで上昇すると予想しています。また、今後数年間は、割高で低利回りのスイスフランに対して、トータルリターンベースで英ポンドが優位になるとみています。

ただし、米ドルとスイスフランを除くその他のG10通貨に対しては、英ポンドは中長期的に苦戦する可能性が高いと考えています。

JPY - 日本円

円は、7月下旬の為替介入による上昇分の一部を8月に失いましたが、当社は引き続き円を有望な通貨の一つとみており、特に他の低金利通貨に対して強気な見方をしています。当社では、9月の日銀による利上げの可能性はほぼ100%とみており、これは市場予想ともおおむね一致しています。また、インフレ率の高止まりに加え、為替介入への協力と引き換えに米国からの圧力が続く可能性を踏まえると、将来の利上げペースが加速し、政策金利は2027年半ばまでに1.75%に達する可能性があると考えています。

資金還流の可能性も円を支える要因として注目されていますが、当社ではこれは主に2027年以降のテーマになると考えています。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員会は8月21日に開催され、日本国債(JGB)への配分引き上げについて協議したのではないかとの見方が広がりました。

その後、ノルウェー政府系ファンドが日本国債の保有比率を引き上げたとの報道もありました。日本国債利回りの上昇に加え、資金還流の可能性が高まりつつあること、さらに円安方向のリスクが為替介入によって抑制される可能性があることを踏まえると、リスクバランスは円高方向に傾いていると考えられます。また、エネルギー価格の上昇が世界経済を減速させ、リスク資産に大幅な調整をもたらした場合には、安全資産需要を背景に円が堅調に推移する可能性もあるとみています。

もっとも、短期的には円高を抑制する要因も存在します。米ドル/円相場が150円方向へ向かうことは十分考えられるものの、米国のインフレ率が高止まりし、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続する場合には、155円を持続的に下回る展開は容易ではないと考えています。また、日本の金利水準は依然としてG10の高金利通貨と比べて低く、財政への懸念も引き続き断続的に円の重しとなる可能性があります。特に、エネルギー価格が再び急騰するような局面では、その傾向が強まると考えられます。

こうしたタイミングの難しさを踏まえ、当社はスイスフラン、ユーロ、スウェーデンクローナなどの低金利通貨に対する中期的な円買いポジションを選好しています。一方、高金利通貨に対する円買いについては、より機動的かつ戦術的なアプローチが適切と考えています。

長期的には、円は対米ドルで大きな上昇余地があるとみています。当社の長期的な米ドル弱気見通しを前提とすると、今後3~5年の間に米ドル/円相場は120~130円のレンジへ回帰する可能性が高いと考えています。

CHF – スイスフラン

当社は、スイスフランについてG10通貨平均に対してやや弱気な見方をしています。スイスの名目政策金利が0%、実質政策金利もマイナス圏にあるなか、世界的に実質金利・名目金利ともに上昇しており、スイスフランの相対的な魅力は低下しています。また、スイス国立銀行(SNB)は過度なスイスフラン高を抑制するために必要に応じて市場介入を行う姿勢を明確にしています。コアインフレ率も前年比0.4%にとどまっているため、政策当局には金利を0%に据え置く余地があります。

こうした環境は、政策金利が3.6%を超える米ドル、豪ドル、ノルウェークローネ、英ポンドに対してスイスフランに不利な状況となっています。また、防衛的な低金利通貨とみなされる円でさえ、現在では1%を超えるキャリー収益を提供しており、上昇基調にあります。このため、当社はスイスフランを調達通貨(ファンディング通貨)として選好しています。

低利回りと割高な評価水準を踏まえると、長期的にはスイスフランのより大きな下落余地があると考えていますが、現時点ではその見方をやや抑制しています。第2四半期のスイスの国内総生産(GDP)成長率が堅調だったことに加え、スイスフラン安や国内需要の加速を背景に、SNBが9月会合で為替介入に関する姿勢をやや和らげる可能性があるためです。また、原油価格がさらに上昇し、株式市場のボラティリティが高まる場合には、安全資産需要を背景として、短期的にスイスフランが支援される可能性もあります。

短期的な見通しに対する最大のリスクは、法定通貨の価値低下に対する懸念が再燃することです。米財務省が8月19日にオペレーション・ツイストを発表した後、スイスフランは金とともに大きく上昇しました。これは、投資家が将来的な通貨価値の低下を懸念したことを反映しています。米国の政策当局がさらにその方向に踏み込む場合には、スイスフランには追加的な上昇余地が生じる可能性があります。

もっとも、これは当社の基本シナリオではありません。量的緩和(QE)という形で米連邦準備制度理事会(FRB)の支援がない限り、米財務省によるイールドカーブの平坦化には限界があります。また、QEを伴わないオペレーション・ツイストは、米国政府債務の満期構成を短期化するだけであり、債務の貨幣化を意味するものではありません。債務の貨幣化は持続的な通貨価値低下への懸念を引き起こす重要な条件であるため、その点からもスイスフランの大幅な上昇を想定する必要性は現時点では高くないと考えています。

NOK – ノルウェー・クローネ

当社は引き続きノルウェークローネに対して前向きな見方を維持していますが、よりリスクが高く、値動きの大きい投資対象と考えています。ノルウェークローネは原油価格の急上昇に連動して推移しており、8月はG10通貨の中でも堅調なパフォーマンスを示しました。エネルギー市場の供給不足が続いていることや、米国とイランの対立に大きな進展が見られないことから、原油価格は高水準を維持し、さらなる上昇に向かう可能性があります。

こうした環境はノルウェークローネの支援材料となっています。また、ノルウェーの政策金利は豪ドルに次いでG10通貨の中で2番目に高い水準にあり、この点も追い風です。一方で、米国とイランが信頼性の高い合意に達した場合には、原油価格の下落を通じてノルウェークローネが下押しされる可能性があります。当社では短期的な合意成立を基本シナリオとはみていませんが、ノルウェークローネ買いポジションにとっては最も重要なリスク要因の一つと考えています。

もっとも、国内経済指標は原油価格の上昇という追い風とは異なる動きを見せています。国内総生産(GDP)、コアインフレ率、小売売上高はいずれも市場予想を下回りました。ノルウェーの金利水準は依然として高いものの、8月の金利上昇幅は多くのG10諸国を下回っています。こうした国内環境の弱さに加え、原油価格の変動性や、ノルウェークローネが伝統的にリスク資産の動向に左右されやすいことを踏まえると、当社の強気な見方にも一定の慎重さが必要と考えています。

長期的な見通しはより前向きです。ノルウェークローネは当社の推計する適正価値に対して依然として割安な水準にあり、安定的ではあるものの着実な潜在成長率、魅力的な利回り、そして健全な政府財政に支えられています。

SEK – スウェーデン・クローナ

当社は戦術的な観点から、引き続きスウェーデンクローナに対して弱気な見方を維持しています。ただし、いくつかの前向きな変化も見られており、今後の動向を注視しています。市場の関心が引き続き景気動向と金利に向かうとみられるなかで、スウェーデンクローナは複数の課題に直面しています。特に、リクスバンクの政策金利は1.75%ですが、その背景には前年比0.6%にとどまるコアインフレ率と、2023年の7.2%を大きく上回る8.7%の失業率があります。

今年のGDP成長率は約2%と見込まれており、多くのG10諸国と比べれば良好な水準ですが、相対的に低い利回りによるマイナス要因を打ち消すほどではないと考えています。また、スウェーデンは依然としてエネルギー輸入とEU向け需要への依存度が高く、その両方が米国とイランの対立による混乱の影響を受けやすい状況にあります。

もっとも、改善の兆候もいくつか見られます。サービス業および製造業の購買担当者景気指数(PMI)は景気拡大の強まりを示しています。コアインフレ率は前年比0.6%と依然として低水準ですが、4月までの12カ月間の0.0%からは上昇しています。また、小売売上高も改善しており、第2四半期のGDP成長率は前年比3.3%と堅調な結果となりました。スウェーデン経済はエネルギー価格上昇の影響を受けているものの、現時点では比較的うまく吸収しているように見受けられます。

こうした改善傾向が継続する場合、中東情勢がより持続的な解決に向かえば、スウェーデンクローナは回復に向けて有利な立場に立つ可能性があります。ただし、その過程には時間を要する可能性があり、改善する前に状況がさらに悪化するリスクもあります。

長期的なバリュエーションの観点からも、スウェーデンクローナを支える要因があります。実質実効為替レートベースでは依然として歴史的に割安な水準にあり、またスウェーデンの政府債務残高対GDP比率は約33%と、多くの先進国と比較して良好な水準です。財政負担が高止まりする世界において、この点は優位性として作用すると考えられます。

また、当社の長期的な米ドル弱気見通しのもとでは、投資資金の配分見直しによってスウェーデンも恩恵を受けると考えています。スウェーデンを含む欧州の投資家が米国資産への集中投資を減らす、あるいは保有する米国資産に対する米ドルの為替ヘッジ比率を引き上げる動きが進めば、スウェーデンクローナにとって中長期的な追い風となる可能性があります。

AUD – 豪ドル

当社は、中長期的な観点では豪ドルに対して前向きな見方をしていますが、現時点では中立的なスタンスを維持しています。当社の見方は「押し目買い」に近いものです。豪ドルは依然として歴史的な水準と比べて割安であり、G10通貨の中で最も高い政策金利を提供しています。

購買担当者景気指数(PMI)は再び拡大局面に入り、労働市場も堅調さを維持しています。また、インフレ率は豪州準備銀行(RBA)の目標レンジを上回っています。最近の経済指標の改善を受けて、追加利上げの可能性も再び意識されており、早ければ今月にも利上げが実施される可能性があります。

一方で課題もあります。石油精製品価格が今回の景気循環局面における最高水準へ上昇し、米国とイランの対立も続いていることから、世界経済の成長鈍化や株式市場のボラティリティ上昇リスクが高まっています。国内では住宅価格の下落が続いており、その他の経済指標が堅調であっても、RBAが追加的な金融引き締めを先送りする可能性があります。

複数年にわたる長期的な視点では、当社は豪ドルに対してより強気な見方をしています。特に米ドルやスイスフランに対しては魅力的な投資機会があると考えています。豪州の投資家は米ドル建て資産に対して相当規模の為替ヘッジなしのエクスポージャーを保有しているとみられます。

当社の長期的な米ドル弱気見通しに沿えば、豪ドルは比較的高い利回りの恩恵を受けるとともに、豪州の投資家が為替ヘッジ比率を引き上げたり、投資資産の一部を米国市場からより分散されたグローバル資産へ移したりする動きからも恩恵を受ける可能性があります。そのため、豪ドルは中長期的に良好なパフォーマンスを示す条件が整っていると考えています。

NZD – ニュージーランド・ドル

当社は、ニュージーランドドルについてG10通貨平均に対して中立的な見方をしています。ニュージーランド経済は2024年から2025年の景気後退局面から徐々に回復しており、製造業購買担当者景気指数(PMI)や消費者信頼感指数もここ数カ月で改善の兆しを示しています。また、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利を25ベーシスポイント引き上げ、2.75%としました。

こうした改善が見られる一方で、当社はニュージーランドドルに対して引き続き慎重な姿勢を維持しています。追加的なエネルギー価格上昇は景気回復を損なう可能性があり、直近の小売売上高もすでに弱含んでいます。また、コアインフレ率はRBNZの目標レンジである2~3%の範囲内に収まっており、市場が現在織り込んでいるほど追加利上げを急ぐ必要性は高くないと考えられます。

RBNZも直近の会合後に同様の見解を示しました。政策金利見通しが大幅に引き上げられない限り、現在の金利水準が通貨を支える効果は限定的と考えられます。政策金利2.75%はG10通貨の中では中位に位置しており、大幅かつ恒常的な経常収支赤字を抱える国としては、特に魅力的な水準とは言えません。

ニュージーランドドルは割安に見えるものの、金利が完全に正常化し、経済成長率が持続的に加速するとの見通しには依然として不確実性が大きく、当社が積極的な投資姿勢へ転換するには至っていません。

長期的な見通しはより均衡が取れています。当社の推計する長期的な適正価値に基づくと、ニュージーランドドルは米ドルおよびスイスフランに対して割安な水準にあり、上昇余地が残されていると考えられます。一方で、円や北欧通貨に対しては割高な水準にあるとみられ、これらの通貨に対しては長期的な見通しが相対的に見劣りすると考えています。

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