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ドルを優先する戦術的シフト

4月の為替市場は地政学リスクが主導し、イラン情勢の緊張や原油価格の変動が影響しました。米国経済の底堅さと不確実性を背景に、当社は戦術的に米ドルに対して強気の見方へ転じました。

ドルを優先する戦術的シフト

4月の為替市場は地政学リスクが主導し、イラン情勢の緊張や原油価格の変動が金利要因を上回る影響を及ぼす中、市場はやや楽観し過ぎている様子が見られました。米国経済の底堅さと世界的な不確実性の高まりに支えられ、当社は戦術的に米ドルに対して強気の見方へ転じました。

今後を見据えると、為替、株式、クレジット市場の動きが示唆する水準以上にリスクが高まっているように見受けられます。ホルムズ海峡は閉鎖されており、仮に5月中旬までに再開されたとしても、相応の輸送量が回復するまでに少なくとも2~3週間を要し、さらにそれらの貨物が最終目的地に到達するまでには追加で1~2か月を要する見込みです。停戦により、地域のエネルギーインフラへの攻撃といった、数か月または数年にわたり生産に影響を及ぼしかねない直近のリスクは低減しましたが、依然として不安定であり、いつでも崩れる可能性があります。

当社としては楽観的な見方を維持したいところですが、投資の観点からは、株式市場が過去最高値圏、クレジット・スプレッドが数年ぶりの低水準、為替のインプライド・ボラティリティが戦前の水準を下回っている、という状況では楽観視は難しいと考えます。市場には成長リスク・プレミアムがほとんど織り込まれておらず、短期的な見通しは依然として非常に不透明な状況にあります。

その結果、当社は米ドルに上昇余地があると見ています。米ドルに関するセクションで述べている通り、長期的な米ドル弱気相場の見方を放棄したわけではありません。しかしながら、米国は戦争による経済的影響を比較的受けにくく、純輸出国として原油価格上昇の恩恵を直接受ける立場にあります。また、短期から中期の経済見通しに大きく左右されないAI関連の設備投資ブームが続いていることも支えとなっています。カナダドルは米ドルに対しては苦戦する可能性が高いものの、原油輸出に支えられ、米国経済の動向との正の相関があることから、G10通貨の中では相対的に魅力的に見えます。

ノルウェークローネは今年最もパフォーマンスの良い通貨であり、原油価格の上昇から今後も恩恵を受けると見込まれます。ただし、当社はクローネに対してより大きなリスクも見ています。既に大きく上昇していることに加え、欧州連合(EU)の成長鈍化の影響を受けやすく、株式市場の下落局面に対して高いベータ特性を示す傾向があります。仮に状況が悪化し株式市場が下落した場合、クローネのボラティリティは上昇する可能性があります。

一方で、あまり楽観的ではない見方としては、長期にわたるエネルギー供給の混乱が、EU、英国、スウェーデン、日本などの原油輸入国の成長見通しに対してより深刻な脅威となる可能性があります。ホルムズ海峡の閉鎖が続く場合、ユーロ、英ポンド、スウェーデン・クローナは軟調に推移すると想定されます。円の見通しはより複雑です。4月下旬の為替介入は投機的な売りを抑制する可能性がある一方で、原油価格の上昇により、日本銀行が6月に円を支える利上げに踏み切る可能性があります。

企業収益の力強さ、AI関連銘柄へのエクスポージャー、日本国債の長期ゾーンにおける魅力的な実質利回りは、資本流入を引き付ける可能性があるほか、株式市場に再びストレスが生じた場合には安全資産としての支えが一部期待されます。円には長期的に魅力的な投資価値があると見ていますが、持続的な上昇をもたらす明確な短期的要因は見当たりません。むしろ、これらの要因は、当面の下落余地を抑制する方向に働く可能性が高いと考えます。

図表2: 2026年5月の方向性見通し

 Tactical outlookStrategic outlookComment
USDエネルギー危機下では優位だが、その後のリスクには注意が必要
CAD原油価格の高さは支えとなるものの、USMCAや弱い成長が重し
EUR低金利とエネルギー輸入依存が重し
GBP原油高、低成長、財政の不確実性が重し
JPY介入は支えとなるものの、短期的な材料に欠ける
CHF割高で利回りが低く、介入リスクあり
NOK高利回りと原油価格の上昇が支えとなるも、株式市場に対する高い感応度がリスク
SEKエネルギー輸入国であり、EUの成長リスクと低金利が重し
AUD高利回りと良好な成長があるものの、原油および株式市場への感応度が優勢
NZD利回りは高いものの、戦争による下振れリスクあり

注釈:上の表における各通貨の見通しは全てG10通貨平均との相対評価です。

出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年4月30日時点。

USD - 米ドル

米国は純エネルギー輸出国として、またエネルギー集約型産業への依存度が比較的低く、さらにAI関連の設備投資ブームによる経済的追い風を背景に、現在の混乱局面において相対的に優位な立場にあります。製造業PMI、雇用統計、小売売上高、企業収益といった最近のポジティブサプライズは、米ドルの底堅さを裏付ける要因となっています。実際、この地政学的ショックの中で真の安全資産であったのは米国の大型テクノロジー株のみであったとも言えるかもしれません。金は弱含み、米ドルは横ばい、米国債は下落し、従来の安全通貨であるスイスフランや日本円も軟調に推移しています。

米国テクノロジー企業の収益の安定性に対する再評価は、この危機を超えて持続する可能性があり、資本の米国流入を支え、一定期間は米ドルの下落を抑制する要因になると見込まれます。

当社の米ドル見通しは、今後1~2四半期においてより強気なものとなっており、仮に紛争が激化すれば2026年を通じてその傾向が続く可能性もありますが、複数年にわたる米ドル弱気相場の見方は維持しています。当社は、今後2~4年の間に米ドルが少なくとも15%下落すると予想しています。

革新的な企業に加え、柔軟でダイナミックな米国の労働市場および資本市場は引き続き、投資先としての米国の魅力を下支えしています。しかしながら、関税やその他の政策措置、高水準の債務および財政赤字、恒常的な経常収支赤字といった米国のマクロリスクの高まりは、長期的な米ドルの魅力を低下させています。時間の経過とともに、高水準の債務や政策運営は、米国の成長優位性を損なう可能性があります。ただしそれまでの間、投資家は、魅力的で革新的な米国企業やその他の投資機会へのエクスポージャーを維持しつつ、より顕在化しつつある米国のマクロリスクに備える手段として、米ドルのヘッジ比率を引き上げることを検討する可能性があります。

この見方に沿って、当社は、米国への約33兆ドルに上る外国ポートフォリオ投資において、複数年にわたり米ドルの為替ヘッジ比率が徐々に上昇すると見込んでいます。同時に、投資家がよりバランスの取れたグローバル配分を志向する中で、米国資産に向かう追加的な世界のポートフォリオ資金の割合は低下すると予想しています。

CAD - カナダドル

カナダドルは、エネルギー輸出国であり、より安定した米国経済と密接な関係を持つことから、イランを巡る紛争下においてG10通貨平均を上回るパフォーマンスを示す好位置にあります。これは、年初来のコモディティ価格の上昇や国内株式市場の堅調な推移を背景に、カナダを選好する当社のモデルシグナルとも整合的です。一方で懸念材料としては、現在進行中の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、カナダではCUSMA)の通商交渉が挙げられます。これにより不確実性が高止まりし、企業の設備投資、家計支出、労働市場の重しとなる可能性があります。

エネルギー価格の上昇は、マクロ全体ではプラスである一方、家計の財務状況をさらに圧迫し、消費を抑制する要因ともなり得ます。そのため、本危機においてカナダドルはG10通貨に対して相対的に底堅く推移する可能性があるものの、米ドルに対しては弱含みが続くと見込まれます。

中期的には、戦争やUSMCA再交渉の影響が落ち着いた段階で、より前向きな見方をしています。カナダドルは当社の長期的なフェアバリューの観点では割安な水準にあります。対立を伴うUSMCAの再交渉が貿易協定の失効に至るとは考えていません。最も想定されるシナリオは、包括的な新協定の締結には至らず、現行協定が維持されたまま、今後10年間にわたり年次レビューが実施されるというものです。これは望ましい状況とは言えないものの、北米が世界の他地域と比較して有利な相対関税水準を概ね維持することになります。

当社は、2026年後半または2027年初頭にかけて、米ドル/カナダドル相場が1.30台前半まで低下する余地があると見ています。最終的には、当社の米ドル弱気相場の見通しを踏まえ、今後数年で同相場が1.20近辺、あるいはそれ以下まで下落する可能性があると想定しています。ただし、米ドル安が逆風となるため、カナダドルは米ドルを除くG10通貨に対しては引き続き上値の重い展開となる可能性があります。

EUR – ユーロ

ユーロについては、主要なエネルギー輸入通貨であることから、当社は弱気な見方を取っています。小売売上高の低迷、サービス業PMIの悪化、消費者信頼感の急低下は、エネルギー価格の上昇がもたらす影響を浮き彫りにしています。これは、EUが構造的に低い生産性成長に直面している中で、米国の関税や中国からの競争圧力も加わり、景気循環面で厳しい環境となっています。

ドイツ主導の財政拡大は支援材料となるものの、その効果は既に為替市場に織り込まれており、実行の遅れや効果の限定化といった下振れリスクも意識されます。市場予想よりややタカ派的な欧州中央銀行(ECB)のスタンスは、金利上昇期待を強めています。これは一見ユーロを支える要因のように見えますが、利上げが時期尚早または過度に積極的となった場合、景気後退を引き起こすリスクがあり、結果的にはキャリーの改善にもかかわらず通貨の重しとなる可能性があります。

EU経済はエネルギーショックに対して脆弱である一方で、一定の下支え要因も存在します。失業率は低水準にとどまり、家計貯蓄は依然として高水準にあり、製造業PMIも過去4か月で改善し、拡大を示しています。エネルギーショックは成長およびユーロを抑制すると見込まれますが、供給混乱が大幅に悪化しない限り、景気後退を引き起こす可能性は低いと考えています。

長期的には、ユーロの強さというよりも米ドルの弱さを主因として、ユーロ/ドルに対して前向きな見方を維持しています。米国が貿易および安全保障のパートナーとしての信頼性を低下させる中で、EUの投資家が米国資産への集中したエクスポージャーを縮小、もしくは少なくとも為替ヘッジ比率を引き上げる余地は大きいと考えられます。今後3~5年でユーロ/ドルは1.30以上に上昇する余地があると見ています。

一方、他のG10通貨に対しての見通しはそれほど好ましくありません。ユーロは日本円、ノルウェークローネ、スウェーデン・クローナ、カナダドル、豪ドルに対して相対的に割高に見え、今後数年間にわたりこれらの通貨に対して劣後すると見込まれます。

GBP – 英ポンド

英ポンドについては短期的に弱気の見方をしており、3月から4月にかけての相対的な上昇を維持することは難しいと考えます。同通貨は純エネルギー輸入国であるため、中東情勢の影響を受けやすい構造にあります。より広い観点では、英ポンドは高水準の債務、恒常的な経常収支赤字、構造的に低い生産性成長といった脆弱な基盤の上に成り立っています。

エネルギーショックに対応する政策の選択肢も限られています。高水準の債務と、追加的な財政拡張に対する債券市場の感応度の高さにより、政府が十分な支援策を打ち出す余地は制約されています。同時に、過去5年間にわたりコアインフレ率が3%を上回っている中で、エネルギー価格の上昇も重なっており、イングランド銀行は金融緩和の余地が限られ、むしろ追加の金融引き締めを迫られる可能性があります。政治リスクも不確実性を高める要因となっています。

5月7日の地方選挙は財政見通しを不安定化させる可能性があり、スターマー首相には圧力がかかり、労働党の苦戦が見込まれます。仮に党首交代があれば、債務による財政拡張への懸念が一段と高まり、英ポンドおよび英国国債の重しとなる可能性があります。

長期的な見通しはより安定しています。特に米ドルおよびスイスフランに対しては相対的に良好と見ています。3年から5年の期間では、ポンド/米ドルは1.40以上へ上昇する余地があると見込まれます。また、総収益ベースで見た場合、英ポンドは割高で利回りの低いスイスフランを上回るパフォーマンスを示すと予想しています。ただし、米ドルとスイスフランを除くG10通貨全体に対しては、中長期的に苦戦する可能性が高いと考えます。

JPY - 日本円

月末に財務省は為替市場に介入し、円高を促しました。当社はこれを、持続的な上昇トレンドの始まりというよりも、下落余地を抑えるための措置と見ています。日本のエネルギー輸入依存、極めて低い実質短期金利、そして新たに権限を強めた高市政権がリフレ的な政策運営を志向する可能性への市場の懸念など、基礎的な要因は引き続き円高を阻む状況にあります。

短期的には金利面からの支援も限定的と見られます。エネルギー価格の上昇と堅調な賃上げによりインフレ率は上昇しており、日本銀行が早ければ6月にも利上げに踏み切る可能性が高まっています。しかしながら、これが持続的な円高の十分な材料になるとは見ていません。為替介入は日銀の金融引き締め圧力を和らげる要因となり得るほか、1~2回の利上げを実施しても、実質金利は大幅なマイナス圏にとどまる可能性が高いと考えられます。加えて、相対的な金利差も日本にとって有利な方向には動いておらず、多くのG10中央銀行が戦前の想定よりも積極的な引き締めを行うとの見方が引き続き織り込まれています。

より前向きな点としては、高市政権のリフレ志向に対する懸念はやや過度であると見ており、構造改革やAI関連設備投資への相応のエクスポージャーに支えられ、日本の企業部門に対しては引き続き前向きな見方を維持しています。日本は経常収支黒字により国内での資金調達比率が高く、急激な資本流出リスクが抑制されていることから、財政の持続可能性に関するリスクも緩和されています。中長期的には、日本の投資家が利回りの高い日本国債や底堅い国内株式へ資金配分を見直す動きが強まり、円を一定程度下支えする可能性があります。

長期的には、米ドルに対してより大きな上昇余地があると見ています。当社の米ドル弱気相場の見通しと整合的に、今後3~5年で円は対ドルで120~130円程度の水準まで上昇すると予想しています。

CHF – スイスフラン

スイスフランについては、短期および長期のいずれの観点においても、明確に弱気の見方を維持しています。フランはイランを巡る紛争において、通常の安全資産としての役割を果たしていません。スイスはエネルギー輸入に大きく依存しており、高いエネルギー価格により成長が影響を受けるリスクにさらされているEU経済にも依存しています。また、金と同様に、スイスの名目金利がゼロ、実質金利がマイナスである中、世界的に実質および名目利回りが上昇する局面では、フランの魅力は低下しているように見えます。さらに重要な点として、スイス国立銀行がフラン高の行き過ぎを抑制するために介入する用意があることを明確にしている点が挙げられます。

現在の中東情勢を超えた見通しにおいても、当社は弱気の見方を維持しています。フランは当社の長期的なフェアバリュー推計においてG10通貨の中で最も割高であり、同時に利回りおよびインフレ率は最も低い水準にあります。インフレ率はゼロ近辺にとどまり、成長率もトレンドを下回る可能性が高いと見込まれます。ロングのフランポジションに伴うマイナスの金利キャリーを考慮した総収益ベースでは、フランがG10通貨を上回るパフォーマンスを示すことは難しいと考えられます。米ドルに対してさえ、この不利な金利キャリーを補うためには、今後3~5年の間にフランがさらに10~15%程度上昇する必要があります。

さらに、今後1~3年にかけて想定される米ドルからのポートフォリオ再配分が、他の通貨ほどフランにとって有利に働くとは見ていません。スイスの投資家はすでに外国為替リスクの高い割合をヘッジする傾向があるため、米ドルのヘッジ比率をさらに引き上げる余地は限られています。言い換えれば、米ドル売り・フラン買いの動きが広がる余地は相対的に小さいと考えられます。

NOK – ノルウェー・クローネ

当社は、主要な産油国である地位に加え、高い利回りと堅調な成長基盤に支えられていることから、ノルウェークローネに対して前向きな見方をしています。ただし、クローネは相対的にリスクの高い通貨であると認識しています。ノルウェーは原油価格の上昇から恩恵を受ける一方で、同通貨は世界的なリスクセンチメントの変化に対して非常に敏感です。これまでのところ、原油価格の上昇と株式・クレジット市場の堅調な動きが同時に追い風となっており、その結果、クローネは際立ったパフォーマンスを示し、年初来でG10通貨の中で最も好調な通貨となっています。こうした状況が続けば、さらなる上昇が見込まれます。

一方で課題は、このような環境、すなわち原油価格の上昇とリスクセンチメントの改善が同時に続く可能性は高くない点にあります。このような動きは成長主導の景気拡大局面では見られることがありますが、現在の状況は成長にマイナスの影響を及ぼす原油供給ショックによるものです。いずれの時点かで、エネルギー価格の上昇が世界経済の成長を抑制する可能性が高く、特にノルウェーの主要貿易相手であるEUにおいてその影響が顕著となることが想定されます。歴史的に、このような局面では原油価格とクローネの相関関係に変化が生じています。EUの成長鈍化や株式市場の弱含みは、原油収入の増加によるプラス効果を相殺し、クローネの下落、あるいは少なくともさらなる上昇を抑制する可能性があります。

 長期的には、より前向きな見通しを維持しています。クローネは当社のフェアバリュー推計に対して歴史的に割安な水準にあり、安定した長期的成長見通しと強固な国家のバランスシートに支えられています。また、ノルウェーは財政・金融の両面で高い柔軟性を維持しており、これにより現在の関税ショックから生じる長期的なリスクを緩和することが期待されます。

SEK – スウェーデン・クローナ

スウェーデン・クローナについては、短期的には弱気の見方を維持しています。エネルギー価格の高騰は、消費者や企業のコストを押し上げることで直接的に成長を抑制するほか、EU経済の減速による外需の弱さを通じて間接的にも影響を及ぼします。相対的な金融政策も逆風となっています。リクスバンクは、前年同月比1.1%にとどまる3月のコアインフレ率や過去10年のレンジの上半分に位置する失業率を背景に、多くの中央銀行と比べて低金利を維持する余地が大きい状況にあります。その結果、金利差はクローナに不利な方向に動き、スイスフランを除く多くのG10通貨に対して不利な状況となっています。

短期を超える視点では、より前向きな見方をしています。戦争の影響が和らげば、金利差はスウェーデンに有利な方向へと移行する可能性があります。短期的には弱さが見られるものの、柔軟な財政政策とGDP比約33%という比較的低い債務水準に支えられ、経済は回復すると見込まれます。また、スウェーデンは防衛分野へのエクスポージャーも大きく、EUの財政拡張計画やNATOを巡る地域的な緊張の高まりの中で、その恩恵を受ける可能性があります。

短期を超える視点では、より前向きな見方をしています。戦争の影響が和らげば、金利差はスウェーデンに有利な方向へと移行する可能性があります。短期的には弱さが見られるものの、柔軟な財政政策とGDP比約33%という比較的低い債務水準に支えられ、経済は回復すると見込まれます。また、スウェーデンは防衛分野へのエクスポージャーも大きく、EUの財政拡張計画やNATOを巡る地域的な緊張の高まりの中で、その恩恵を受ける可能性があります。

AUD – 豪ドル

オーストラリアドルは中期的には当社が選好するG10通貨の一つであるものの、中東リスクが後退するまでは軟調に推移する可能性が高いと考えます。今後4~6週間の短期的なリスクは明確に下振れ方向に偏っていると見ています。オーストラリアはエネルギーの純輸出国である一方、精製エネルギー製品の約90%を輸入に依存しています。そのため、今回の紛争は企業および消費者のコストを押し上げ、家計需要や設備投資の重しとなる可能性があります。

戦争がより顕著な世界的成長の下押し圧力をもたらした場合、オーストラリアは産業用金属輸出においても下振れリスクに直面する可能性があります。また、アジア地域への相対的に高い依存度も、当該地域が今回の危機から不均衡に大きな影響を受ける可能性がある中で、さらなる脆弱性となります。オーストラリア準備銀行の高金利は一定の下支え要因となるものの、戦争開始以降の金利見通しの上昇はG10全体と概ね同様の動きとなっており、相対的な優位性は限定的です。

紛争が収束すれば、危機前からの強固な基礎的要因が成長および通貨の回復を支えると見込まれます。消費者物価指数(CPI)の上昇、個人消費の改善、住宅市場の堅調な動きは、長期的な悪影響が限定的であることを前提とすれば、比較的底堅い戦後の見通しを示唆しています。また、現在の不安定な環境下において中国人民元が安定している点も支援材料です。さらに、世界的に公的債務が高まる中、オーストラリアは世界的な景気減速に対して対応可能な財政余地を有しており、この点も重要な強みとなります。

 長期的には、当社はオーストラリアドルに対して引き続き前向きな見方を維持しています。オーストラリアの投資家は、米ドル建て資産に対して相応の未ヘッジ・エクスポージャーを保有していると見られ、今後はヘッジ比率の引き上げやより分散されたグローバル投資へと徐々にシフトすることが予想されます。グローバル市場が新たな関税体制に適応していく中で、オーストラリアドルには長期的に有意な上昇余地があると考えます。

NZD – ニュージーランド・ドル

ニュージーランドは純エネルギー輸入国であり、経常収支赤字も大きく、同国通貨は世界的なリスクセンチメントの変化に対して非常に敏感です。そのため、イランを巡る紛争についてより明確な見通しが得られるまでは、ニュージーランドドルは引き続き劣後すると見込まれます。

エネルギー価格の上昇は総合インフレ率を押し上げており、市場では2027年3月までに約5回の利上げが織り込まれています。しかし、ニュージーランドの景気回復はまだ初期段階にあり、エネルギーコストの上昇と金融引き締めの双方によって大きな圧力を受ける可能性があります。この組み合わせはスタグフレーション環境のリスクを高めるものであり、ニュージーランドドルにとって引き続き下押し要因となる可能性が高いと考えられます。

長期的には、見通しはより複雑です。当社の長期的なフェアバリューの推計では、ニュージーランドドルは米ドルおよびスイスフランに対して割安な水準にあり、上昇余地があります。一方で、日本円や北欧通貨に対しては割高に見え、G10通貨の中での相対的なパフォーマンスを制約する可能性があります。

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