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成長が為替市場を主導

投資家の関心が相対的な成長率、インフレ、政策見通しへとシフトする中で、地政学リスクやエネルギーショックが継続しているにもかかわらず、通貨間の差別化が進み、為替市場では成長が主導的な役割を果たしています。

投資家の関心が相対的な成長率、インフレ、政策見通しへとシフトする中で、地政学リスクやエネルギーショックが継続しているにもかかわらず、通貨間の差別化が進み、為替市場では成長が主導的な役割を果たしています。当社は戦術的にスイスフランに対して強気の見方をしています。

5月の通貨市場において、イランとの戦争は引き続き重要な要因でしたが、投資家は通貨の選別において、相対的な成長、インフレ、政策見通しに再び注目する様子が見られました。イランに関しては、停戦延長や長期的な和平合意への期待が断続的に高まったことで、原油輸出国と輸入国の間に広範な基調トレンドが生じました。米ドル、カナダドル、豪ドル、ノルウェークローネは、当初は合意期待を背景に軟調に推移し、その後5月中旬にかけて上昇しましたが、停戦の兆しが強まるにつれて再び弱含みとなりました。

こうしたイラン戦争による影響の中で、各国固有の経済、政策、政治の見通しが通貨ごとの差異を大きく左右しました。5月に最も上昇したのはニュージーランドドルで、ニュージーランド準備銀行のタカ派的な発言を受け月末に急騰しました。ニュージーランドは、和平合意からより大きな恩恵を受ける可能性もあります。通貨は、堅調な成長見通し、エネルギーへのポジティブなエクスポージャー、高い金利水準に支えられました。この点で特に目立つのは、米ドル、豪ドル、ノルウェークローネです。ただし、月中の豪州経済指標の悪化により、豪ドルはノルウェークローネに対して出遅れました。\

日本円は最もパフォーマンスが低調で、為替介入という支援要因を受け流し、極めて低い実質金利や過剰な財政支出への懸念に押されました。カナダドルは、第1四半期のGDPがマイナスとなり2四半期連続のマイナス成長となるなど、弱い経済指標を背景にG10通貨の中で2番目に低いパフォーマンスとなりました。ユーロと英ポンドも、成長の鈍さ、原油高への高いエクスポージャー、さらにポンドに関しては継続する政治リスクを背景に、G10通貨の中で出遅れました。

主なクロスマーケットのテーマは依然としてイラン/中東のエネルギーショックであり、これが原油価格を押し上げ、純輸出国に有利に働く一方で、主要な輸入国には圧力をかけています。この動きは米ドル、豪ドル、ノルウェークローネを押し上げています。和平合意が成立すれば、短期的に反動的な動きが生じる可能性が高く、特に米ドルとノルウェークローネが影響を受けやすく、紛争開始以降大きく出遅れているスウェーデンクローナは最も反発する可能性があります。ただし、スウェーデンの低金利、短期的な成長の弱さ、目標未達のインフレを踏まえると、国内ファンダメンタルズが改善しない限り、クローナの上昇は持続しない可能性が高いと考えられます。

6月に合意に至らない場合、原油在庫の減少に伴い圧力がさらに強まり、輸出国の優位が継続する可能性があります。一方で、原油高が最終的に株式市場全体の調整を引き起こす場合には、米ドルが豪ドルやノルウェークローネを上回ると考えられます。報道によれば停戦の大枠は整っているものの、市場環境は依然としてトランプ大統領に最終合意を承認させるほど弱くはなく、偶発的な再激化のリスクも引き続き存在しています。

2つ目の重要性を増しているテーマは、特に和平合意が成立した場合の成長格差です。米国は、AI主導の設備投資、強い企業収益、安定した労働市場に支えられて相対的に堅調である一方、欧州、スウェーデン、英国、カナダ、アジア太平洋の一部では需要の弱さや信頼感の低下に直面しています。その結果、和平による米ドル安があったとしても、その動きは浅く短命にとどまる可能性が高く、当社はFRBが据え置きを維持すると見込んでいます。ノルウェークローネは和平シナリオではやや弱含む可能性がありますが、原油価格が1バレル80ドルを上回る水準、高い利回り、一定の成長により、引き続き支えられると考えられます。

魅力度が低い通貨は、エネルギー輸入依存、成長の弱さ、低いキャリー、高いバリュエーション、または政策余地の乏しさが重なるものです。中でもスイスフランは、極めて低い利回り、割高な評価、スイス国立銀行による積極的な抑制により、特に目立っています。英国ポンドも、成長の弱さ、高水準の債務、対外赤字、政治リスクを背景に脆弱とみられます。ユーロも同様の理由から短期的に軟調が続くと考えられ、カナダドルはこれに加えて国内成長の弱さや、今後予定されている米国・メキシコ・カナダ協定(カナダではCUSMAとも呼ばれます)の通商交渉による圧力に直面しています。

図表2: 2026年6月の方向性見通し

 短期見通し中長期的見通し評価コメント
USD成長がより強く、原油エクスポージャーが支援材料
CAD原油高はプラスだが、USMCAと低成長が重し
EUR低利回り・低成長が重し
GBP原油高、低成長、財政不透明感が重し
JPY為替介入が支えだが、短期的な材料に欠ける
CHF割高で低利回り、かつ介入リスクがある
NOK高金利で原油も追い風だが、株式ベータの高さがリスク
SEKエネルギー輸入国であり、EU成長リスクと低利回りが重し
AUD高金利で成長も良好だが、原油・株式ベータのリスクが優勢
NZD高金利だが、戦争による下振れリスクがある

注釈:上の表における各通貨の見通しは全てG10通貨平均との相対評価です。

出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年5月31日時点。

 USD - 米ドル

原油に対するリスクプレミアム、そして近年では成長プレミアムも加わり、米ドルを引き続き支える可能性が高いと考えられます。米国は純エネルギー輸出国であることに加え、AI関連の設備投資の拡大による経済の追い風を受けており、現在のイラン戦争による混乱局面において相対的に優位な立場にあります。イラン戦争開始以降、米国の堅調な経済パフォーマンスと力強い企業収益の伸びが、ドルのさらなる支援材料となっています。

米国が停戦の長期化、そして持続的な和平合意へと向かう中で、短期的にはドルが売られる反応が生じる可能性があります。しかしながら、原油価格は2026年の残りの期間を通じて高止まりする可能性が高く、これに加えて米国のより強い成長、根強いインフレ、安定化する労働市場を背景に、FRBは政策金利を据え置く可能性が高く、少なくとも今後1~2四半期にわたりドルを下支えすると見込まれます。

現時点では米ドルは魅力的に見えるものの、当社は複数年にわたるドル下落局面(ベアマーケット)という見方を維持しています。革新的な企業群や、柔軟でダイナミックな米国の労働市場および資本市場は、資本投資先としての米国の強みを支えています。しかし、関税やその他の政策、高水準の債務および財政赤字、経常収支赤字といった米国におけるマクロリスクの高まりが、ドルの魅力を損なっています。

こうした顕著な米国のマクロリスクに対して、米ドルの為替ヘッジ比率を引き上げることで一部ヘッジしつつ、魅力的で革新的な米国企業やその他の投資機会へのエクスポージャーを維持するのはいかがでしょうか。当社は、今後数年間にわたり、このような戦略の魅力が一段と高まると考えています。そのため、米国への対外証券投資残高33兆ドルに対する米ドルの為替ヘッジは、複数年にわたり徐々に増加していくと見込まれます。また、よりバランスの取れたグローバル配分を志向する投資家の動きにより、新規のポートフォリオ資金流入に占める米国の比率は低下すると考えられます。これにより、ドルの長期的な弱含みが促される、あるいは米ドルの上昇余地が大きく制限される可能性があります。

 CAD - カナダドル

原油価格の上昇と米ドル高は、カナダドルを支えるプラス要因であり、当社モデルにおけるカナダドルのシグナルも強化しています。しかしながら、カナダ経済は2四半期連続のマイナス成長となり、テクニカル・リセッションに入っています。労働市場も弱含みで、失業率は6.9%に達しています。住宅価格もコロナ禍のピークから約20%下落しています。

購買担当者景気指数(PMI)も軟調です。また、米国との米国・メキシコ・カナダ協定(カナダではCUSMAとも呼ばれます)の通商交渉が不透明感をもたらしており、重要な貿易財セクターにおける投資や雇用の抑制要因となっています。このような低成長の環境に加え、コアインフレ率がカナダ銀行の目標付近にあることから、相対的に低い金利水準を維持することが可能となっています。総じて、当社のモデルシグナルは強いものの、カナダドルは引き続き軟調に推移すると見ています。

ただし、戦争の影響やCUSMA再交渉をめぐる不透明感が後退すれば、中期的にはより前向きな見方をしています。長期的な適正価値の指標で見ると、カナダドルは割安な水準にあります。当社は、意見の対立があるCUSMA再交渉が協定の破棄につながるとは考えていません。最も可能性が高いのは、包括的な新協定には至らず、現行協定を維持したまま今後10年間にわたり年次レビューが行われるという展開です。この状況は好ましいものではありませんが、北米域内の関税が世界の他地域と比べて相対的に有利である状況は概ね維持されます。

2026年後半から2027年初にかけて、米ドル/カナダドルは1.30台前半まで低下する余地があると見ています。最終的には、当社の米ドル弱気相場という見通しを踏まえ、今後数年で1.20台、あるいはそれ以下にまで低下する可能性があると見ています。ただし、米ドルの弱さが逆風となるため、カナダドルは米ドルを除くG10通貨に対しては引き続き冴えない動きとなる可能性があります。

 EUR – ユーロ

ユーロについては、主要なエネルギー輸入通貨である点を踏まえ、当社は弱気の見方をしています。小売売上の低迷、サービス業購買担当者景気指数(PMI)の悪化、消費者信頼感の急速な低下は、エネルギー価格急騰の悪影響を示しています。こうした状況は、欧州連合(EU)が低い生産性成長にとどまり、米国の関税や中国からの競争激化による圧力を受けている中で、困難な景気循環上の障害となっています。ドイツ主導の財政拡張は下支え要因ではあるものの、すでに為替市場に織り込まれており、追加的なリスクはその支出の実施が遅れる、あるいは効果が想定を下回る可能性の方に傾いていると考えられます。

当社は、6月に欧州中央銀行(ECB)が利上げを実施し、第3四半期にも追加利上げの可能性があると見ています。一見するとユーロにとってプラスに見えるものの、一時的な原油ショックに対応して早すぎる、または過度に積極的な利上げが行われた場合、より深刻な景気減速を招くリスクがあり、金利差の改善にもかかわらずユーロにとってはむしろマイナス要因となる可能性があります。

長期的には、主としてEUの強さではなく米国の弱さを背景に、当社は米ドルに対するユーロについて前向きな見方を維持しています。米国が貿易および安全保障の面で信頼性の低いパートナーとなりつつある中、EUの投資家が米国資産への集中したエクスポージャーを引き下げる、あるいは少なくとも平均的な為替ヘッジ比率を引き上げるべきとの考えは、十分に合理性があると考えられます。

一方で、他のG10通貨に対する見通しはそれほど楽観的ではありません。ユーロは、日本円、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、カナダドル、豪ドルに対して割高であり、今後数年にわたりこれらの通貨に対して大きく劣後する可能性が高いと見ています。

 GBP – 英ポンド

当社は短期的に英ポンドに対して弱気の見方をしています。英ポンドは純エネルギー輸入通貨であるため、中東情勢による紛争の影響を受けやすい状況にあります。米国とイランの停戦延長や和平合意が実現すれば、この圧力は一部緩和される可能性があります。しかし、ポンドは高水準の債務、持続的な経常赤字、構造的に低い生産性成長という脆弱な基盤の上に成り立っているため、和平が持続的な支援材料になるとは当社は考えていません。

高水準の債務と、追加的な財政支出に対する債券市場の許容度の低さが重なり、政府が財政支援を拡大する余地は大きく制約されています。同様に、エネルギー価格の上昇や、過去5年間にわたりコアインフレ率が3%を上回っている状況の下で、イングランド銀行は成長を支えるために十分な利下げを行うことが難しくなっています。こうした経済の弱さや政策余地の限界に加え、英ポンドは大きな政治リスクにも直面しています。

キア・スターマー首相の地位は不安定であり、年内にも党内でのリーダーシップへの挑戦に直面する可能性が高いとみられています。その結果、首相が退任に追い込まれる場合には、債務による財政支出の拡大に対する懸念が市場で高まり、英ポンドと英国債(ギルト)がともに下落する可能性があります。一方で、5月7日の地方選挙の結果が不振であったことから、市場は早期のリーダーシップ挑戦を懸念していましたが、現時点ではスターマー首相は今後2~3カ月程度は安定しているとみられており、これは当面、英ポンドにとってわずかながらプラス材料となっています。

より長期の見通しでは、少なくとも米ドルおよびスイスフランに対してはそれほど脆弱ではありません。3年から5年のスパンでは、ポンド/米ドルは1.40以上まで上昇する可能性があると見ています。また、総収益ベースでは、今後数年間にわたり、割高で低利回りのスイスフランを上回ると考えています。

一方で、米ドルおよびスイスフランを除くその他のG10通貨に対しては、中期および長期の両面でポンドは苦戦すると見ています。

 JPY - 日本円

当社モデルは円に対してやや前向きなシグナルを示していますが、短期的な材料は見当たらず、上昇余地が顕在化するまでには時間がかかる可能性があると考えています。実際、日本および円には好材料が多く存在します。力強い成長、目標を上回るインフレの持続、堅調な企業収益、有望な企業改革、利回りの上昇、そしてAI関連の設備投資の拡大への高いエクスポージャーなどが挙げられます。

さらに、財務省は市場介入を実施し、700億ドルを超える米ドルを売却して円を買い入れ、円高を促しました。当社はこれが円の上昇トレンドを誘導することを目的としたものとは考えていませんが、下値を抑える効果はあり、結果として円の将来リターンの分布に上振れ余地をもたらしているとみています。

問題はタイミングです。短期的には、円の低迷状態から抜け出すきっかけとなる材料は見当たりません。日本はエネルギー輸入への依存が高く、米国とイランの問題が解決するまでは見通しの足かせとなります。当社は2026年に日本銀行(BoJ)が2回の利上げを行い、そのうち1回は今月に実施されると予想しています。しかし、これはすでに市場に織り込まれており、円高を引き起こすには十分ではないとみられます。その一因として、実質短期金利が依然として極めて低い水準にあることが挙げられます。さらに、市場では高市政権がリフレ的な政策ミックスを志向し、円安を長引かせるのではないかとの懸念が根強くあります。実際、先月には、年初に承認された大規模な財政拡張に加え、追加の補正予算の可能性についても議論がありました。

円には大きな上昇余地があるものの、明確なきっかけがなければ顕著な上昇は見込みにくいと考えています。想定されるきっかけとしては、財政スタンスの明確化、日本銀行によるより強力なフォワードガイダンス、株式市場や通貨キャリートレードを圧迫するような急激なリスク回避局面、あるいは外国資産に対するヘッジが不十分な日本の投資家に痛みをもたらすほどの円高進行などが挙げられます。

長期的には、当社の米ドル弱気相場という見方に整合的に、円は対米ドルで大幅な上昇余地があると見込んでおり、今後3~5年でドル/円は120~130円台まで低下する可能性があると考えています。

CHF – スイスフラン

当社モデルは、足元でのやや良好な経済指標と短期的なバリューモデルからのポジティブなシグナルを背景に、G10通貨に対するスイスフランの見方を前向きに転じています。この変化の大半は短期的なバリューシグナルによるものであり、この種のシグナルは通常、数週間程度しか持続しません。

ごく短期的な反発の可能性はあるものの、当社は引き続きスイスフランに対して明確に弱気の見方を維持しています。スイスはエネルギー輸入への依存度が高く、エネルギー価格上昇による影響を受けやすいEUの成長にも左右されます。和平合意は一定の支援要因となる可能性がありますが、米国とイランが停戦を延長したとしても、生産拡大や世界的な在庫再構築には時間を要するため、高原油価格は持続する可能性が高いと考えられます。また、金と同様に、世界的な実質金利および名目金利が上昇する中で、名目ゼロ金利かつ実質マイナス金利であるスイスに対する相対的な魅力は低下しています。さらに重要な点として、スイス国立銀行は過度なフラン高を抑制するために、必要に応じて介入を行う姿勢を明確にしています。

足元の中東ショックを除いても、当社の見通しは引き続き弱気です。スイスフランは長期的な適正価値の観点からG10通貨の中で最も割高であり、利回りおよびインフレ率は最も低い水準にあります。インフレ率は不快なほどゼロ近傍にとどまり、成長もトレンドを下回る可能性が高いと見ています。フランのロングポジションにおける利回りキャリーが一段とマイナス化している点を踏まえると、トータルリターンベースでスイスフランがG10通貨に対してアウトパフォームする可能性は低いと考えられます。対米ドルであっても、このマイナスのキャリーを相殺するためには、今後3~5年で少なくともさらに10~15%のフラン高が必要となります。

さらに、今後1~3年に想定される米ドルからのポートフォリオ分散が、他通貨ほどスイスフランにとって追い風になるとは見ていません。スイスの投資家はもともと外貨リスクの多くをヘッジしている傾向があるため、米ドルのヘッジ比率をさらに引き上げる余地はそれほど大きくありません。言い換えれば、米ドル売り・スイスフラン買いの余地は限定的であると考えています。

 NOK – ノルウェー・クローネ

当社は、高い利回りと堅調な成長を背景に、主要な原油輸出国通貨であるノルウェークローネについて前向きな見方をしています。今年は、原油価格の大幅上昇に加え、株式市場およびクレジット市場の堅調さが同時に見られ、いわば二重の追い風となりました。その結果、クローネは好調に推移し、2026年のG10通貨の中で最も高いパフォーマンスを記録しています。こうした環境が継続する限り、クローネはさらに上昇する余地があると考えられます。

このような良好な背景がある一方で、短期的なリスクも認識しています。(期待される)米国とイランの和平合意に近づくにつれて、原油価格はやや落ち着きを見せています。この影響で、5月下旬にはノルウェークローネにやや下押し圧力がかかりました。最終的な合意が発表されれば、追加的な弱含みとなる可能性があります。ただし、ホルムズ海峡の再開に伴う供給回復の遅れや、世界的な在庫の積み増しの必要性を背景に、2026年を通じて、さらには2027年にかけても、原油価格は1バレル80ドルを上回る水準で底堅く推移すると見込まれるため、下落余地は限定的と考えられます。3月以降の大幅な株価上昇は、いずれ一時的な調整局面を迎える可能性が高いとみられます。過去においてクローネは株価の下落に敏感に反応する傾向があり、これにより一時的にボラティリティが高まる局面も想定されます。

長期的には、より持続的に前向きな見通しを維持しています。クローネは当社の推計する長期的な適正価値と比較して歴史的に割安な水準にあり、安定した潜在成長率と強固なバランスシートに支えられています。また、ノルウェーは財政および金融の両面で高い柔軟性を有しており、現在の関税ショックによる長期的な悪影響を抑制する余地が十分にあると考えられます。

SEK – スウェーデン・クローナ

当社は短期的にスウェーデンクローナに対して弱気の見方を維持しています。過去数カ月において、イラン戦争に関連する原油価格の上昇やEUの成長見通しの悪化が、クローナの見通しに下押し圧力をかけています。和平合意が成立すれば一定の安心感をもたらす可能性がありますが、直近4~8週間に見られる成長およびインフレ指標の弱さがより重要な要因であると当社は考えており、包括的な和平合意が成立した場合でもクローナの上昇余地は限定的であると見ています。スウェーデンの政策金利は1.75%と、G10通貨の中で3番目に低い水準にあります。コアCPIFインフレ率は2026年の最初の4カ月のうち3カ月で前月比マイナスとなり、4月の前年比コアインフレ率は0.0%まで低下しました。

製造業PMIは成長を示唆しているものの、第1四半期のGDPがマイナスであったことや、4月の小売売上が弱含んでいることから、経済全体としては弱さが示されています。インフレ率が目標を大きく下回り、成長も低迷していることから、リクスバンクは緩和的なスタンスを維持せざるを得ず、イランとの和平合意が成立した場合であっても、クローナは下方向に偏りやすいと考えられます。

一方で、短期的な懸念を除けば、中期的にはより前向きな見方をしています。戦争の解消後には、金利差がスウェーデンに有利な方向にシフトする可能性があります。また、足元では弱さが見られるものの、柔軟な財政政策の支援により、スウェーデン経済は今年後半に回復に向かう可能性があります。スウェーデンの政府債務残高はGDP比33%と、非常に健全な水準にあります。

さらに、スウェーデンは防衛関連セクターへのエクスポージャーが大きく、これはEUの財政拡張計画の主要な受益分野であり、またNATOに対する米国の圧力を背景に地域としても重点分野となっています。バリュエーションの観点でも、クローナは実質実効レートで見て歴史的に割安な水準にあります。また、当社の長期的な米ドル弱気相場という見通しの下では、数年にわたり進展するポートフォリオの再配分の恩恵を受ける可能性があります。

スウェーデンおよびEUにおける大規模な対外資産の一部が米ドルから分散される余地は大きく、たとえそれが米ドルの為替ヘッジ比率の引き上げという形にとどまる場合であっても、クローナにとっては中長期的に大きな追い風になると考えられます。

AUD – 豪ドル

豪ドルは中期的にはG10通貨の中でも当社が選好する通貨の一つであり続けていますが、短期的には脆弱な側面があります。これは水準と変化の問題です。豪州はG10の中で最も高い利回りを有し、今年は最も高い成長率を示す経済の一つになると見込まれており、豪ドルは適正価値に対して割安な水準にあります。一方で、足元の成長モメンタムは弱含んでいます。豪州はエネルギー純輸出で大きな黒字を享受しているものの、精製石油製品の約90%を輸入しています。このため、イラン戦争はエネルギーコストの上昇を通じて企業や家計に打撃を与え、個人消費や設備投資を抑制する可能性があります。

和平合意が成立すれば精製エネルギー価格に一定のプラス効果が期待されますが、総合PMIはすでに縮小圏に低下しており、雇用統計も下振れ、直近のインフレ指標も予想をやや下回りました。このため、中期的には豪ドルの上昇を支える強固な基盤がある一方で、今後数週間にかけては値動きが弱含むリスクがあると見ています。

複数年のスパンでも、当社は豪ドルに対して非常に前向きな見方をしています。オーストラリアの投資家は、米ドル建て資産について為替ヘッジを行っていないエクスポージャーを多く保有しているとみられ、今後、為替ヘッジ比率の引き上げや、より分散されたグローバル・ポートフォリオへの移行が進む可能性があります。世界が新たな関税体制に適応すれば、豪ドルは長期的に大きく上昇する余地があると考えられます。

 NZD – ニュージーランド・ドル

当社はニュージーランドドルについて、G10通貨平均に対して中立的な見方をしています。ニュージーランド準備銀行が5月の会合後にタカ派的な声明を発表したことを受け、ニュージーランドドルは大きく上昇しました。これは、長期間にわたる低い利回りと通貨の割安な評価を踏まえれば妥当といえます。しかし、この上昇が6月を通じて持続するとは見込みにくいと考えています。ニュージーランドは純エネルギー輸入国であり、かつ大きな経常赤字を抱えているため、ニュージーランドドルはグローバルなリスクセンチメントの影響を受けやすい通貨です。その結果、イラン紛争に関する見通しが明確になるまでは、ニュージーランドドルはアンダーパフォームが続くと当社は見ています。

エネルギー価格の上昇により総合インフレ率が押し上げられていることから、市場では2027年3月までにほぼ5回の利上げが織り込まれています。しかしながら、差し迫った停戦合意により利上げ圧力は一部緩和される可能性があります。また、当社は原油価格が2027年にかけて高止まりすると見ているため、金融引き締めが進む中で、ニュージーランドの初期段階にある景気回復はエネルギーショックによる逆風を受ける可能性があります。

長期的には見通しはまちまちです。長期的な適正価値の推計では、ニュージーランドドルは米ドルおよびスイスフランに対して割安であり、上昇余地が十分にありますが、日本円やスカンジナビア通貨に対しては割高な水準にあります。

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