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ESGの観点から考えるロシア・ウクライナ戦争の意味

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は、ロシア・ウクライナ危機がもたらす投資課題について顧客に指針を示すために、状況と市場を注意深く見守っています。ここでは、ESG(環境・社会・ガバナンス)について当社に寄せられた、喫緊の質問に対する現在の見解をお伝えします。


EMEA Head of ESG Investment Strategy
Head of Policy Research

通常、このような紛争は、社会(S)とガバナンス(G)の観点から深刻な影響を及ぼします。国レベルでロシアに対するESG評価はどう変化しましたか?

ESG専門調査会社複数は、総合的なESGの観点からロシアを大幅に格下げし(中には最低格付けまで引き下げ)、ガバナンスの観点ではロシアを国家として最も厳しい分類に入れました。さらに、MSCIロシアIMI指数に採用されている全企業とロシアを本拠とする企業に対して、全般的なESGの格下げが確認されています。

 

戦争の結果(人権侵害など)は、ネガティブ(排除)スクリーニングにどのような影響を与えるのでしょうか?

ロシア・ウクライナ危機を背景とした排除の判断は、科せられる制裁との関連で考える必要があります。特定の地域について差別的な取り扱いをすることはできませんが、当社は当面、すべてのポートフォリオにおいて、ロシアの有価証券の買い入れを停止しています。

さらに当社は、資産運用の受託契約や商品の多くにおいて、社会規範の違反の可能性や特定の事業活動の除外など、ESGリサーチ項目に基づいた排除方針を設定しています。このような排除は地域とは無関係に行われます。

 

社会やガバナンスの評価は、ロシア国内外の企業にどのような経済的・財務的影響を与えるのでしょうか?

正確な結果を予見するのは困難ですが、現在の制裁や数多くの政策ベンチマーク指数から除外されることから、ロシアは事実上投資不可能な地域となり、国際的な投資家の視点からすると、ロシア企業に深刻な結果をもたらすことになるでしょう。また、ロシアへのエクスポージャーが今後のESGスコア計算上の問題になるかどうかも興味深い視点ですが、現時点でこの点について議論するのは尚早です。

 

ロシアは石油・ガスの輸出大国です。ESGの構成要素である環境(E)と地球規模の気候変動問題に関して、ウクライナ侵攻とそれに伴う制裁はエネルギー・セクターにどのような影響を与えるでしょうか?

長期的な移行期の燃料として原子力と天然ガスの選択、これが紛争がもたらす結果の一つだと考えます。この見通しは、欧州連合(EU)のタクソノミー変更に関する具体的な決定というよりも、経済とエネルギー安全保障上の考慮を受けたものです。また、結果として、脱炭素化スケジュールに関する規制の緩和がもたらされる可能性もあります。

とはいえ、化石燃料依存のさらなる解消を求めて、脱炭素化への取り組みが促進される可能性もあります。エネルギー純輸入国が世界GDPの90%以上を占め、世界の二酸化炭素排出量の90%以上がネットゼロ誓約の下にあることを考えると、これらの誓約は再生可能エネルギー分野を支援するものであり、今回の危機は地政学的な観点から再生可能エネルギーの導入を一層促進させる可能性があります。これらを背景に、ネットゼロの実現に不可欠な再生可能エネルギーへの過剰投資や、供給過剰といった懸念が緩和されることになるかもしれません。

特に、欧州の液化天然ガス(LNG)ショックとの関連で、米国のシェール・セクターは今回の危機から持続的に大きく恩恵を受ける可能性があります。同様に、LNG(およびロシア産以外の天然ガス)を取り巻くバリューチェーン全体も好況期を迎えるでしょう。

世界のエネルギー市場は再評価が必要です。ロシアにおけるエネルギー生産量の伸び率は低下していましたが、(中国の潜在的な投資を考慮しても)制裁の実施を受けて生産はより顕著に縮小するでしょう。この紛争は、世界の原油価格を一段と底上げする可能性があります。

 

SSGAは、世界に衝撃を与えた新型コロナ感染症は気候変動対策を促進するものであるという見解を2020年に発表していましたが、ロシア・ウクライナ危機において類似性はありますか?

短期的にはエネルギー安全保障が焦点だと考えられ、既存のエネルギーへの回帰が予想されます。しかし、それは短期的な現象であり、エネルギー純輸入国、特にロシア産の石油やガスに依存する国は、より早く自立するために再生エネルギー計画を加速させるでしょう。これを受けて、再生エネルギーが大いに注目され、投資が一段と加速すると予想されます。