Skip to main content
インサイト

金: 「OK、ブーマー!」

2023年春、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、金に対する現在の投資家センチメントを理解するため、金のETFに関するインパクト調査を米国で実施しました。データを分析すると、いくつかの興味深いトレンドが浮かび上がってきました。

5分で観られる
Chief Gold Strategist

筆者は50年超のキャリアを金のビジネスひとすじで生きてきましたが、その間、金の投資手段としての価値を最もよく理解しているのは、自分と同世代(および上の世代)だと感じることが多々ありました。ここで年を隠しても意味がありませんのではっきり申し上げると、筆者は1947年生まれ、ベビーブーマー世代の最高齢グループに属しています。改めて考えると、この説には一理あります。

米国の消費者物価指数の年間上昇率が13.5%と、2回の世界大戦直後の時期以来の最高水準に達した、1970年代の高インフレ期を過ごした世代ほど、金のインフレ・ヘッジとしての役割を実感として理解できる人々はいるのでしょうか。1987年のブラックマンデー、あるいは2008年の世界金融危機の際に、株式市場の歴史上最大となる1日の下げ幅を記録するのを目の当たりにした世代より、株式市場の下落に対するヘッジ手段としての金の役割をよく理解できる人はいるでしょうか。2011年や2012年のように、米ドルの下落に対して金がどのようなプロテクションを提供できるかも、この世代は経験しています。

これらは、我がベビーブーマー世代が金保有のメリットをより深く理解していると考える、極めて論理的な根拠のように思えます…が、実際はどれも間違っています。

先ごろ、SPDR ETFは米国で金ETFのインパクト調査を実施しましたが、その結果、ベビーブーマーやジェネレーションXよりも、ミレニアル世代の方が金への投資意欲が強いことが分かりました。これには筆者も驚きました。

ミレニアル世代が金投資でリード

調査に参加した投資家のうち、平均すると、ミレニアル世代の金への配分比率は17%と、ベビーブーマーとジェネレーションXのそれぞれ10%を上回っています。またミレニアル世代は、上場投資信託(ETF)を通じた金投資の手軽さを高く評価していることが示されました。金のETFを最善の金投資手段と回答した割合はミレニアル世代が69%と、ベビーブーマーの55%、ジェネレーションXの35%を上回りました。なぜミレニアル世代は、ジェネレーションXより金投資に意欲的なのでしょうか。考慮すべき点は非常に多くあります。多すぎてベビーブーマー世代には、消化しきれないかもしれません。

市場の不安定化を背景に、あらゆる世代が金投資を検討

景気後退リスクが依然として迫る中、現在の市場環境において金は、投資手段として引き続き極めて魅力的です。金を保有する投資家の半分以上は、今後6~12ヵ月間に金の保有を増やす見込みだと答えています。追加購入を予定している金ETFの投資家の割合は57%と、金地金・金貨、金鉱株、金の先物やオプション、コモディティ・ファンドなど他の手段を用いた金の投資家における割合(53%)を若干上回っています。

金のETFに馴染みのある投資家の60%は、金ETFはコモディティ投資の最善の方法であると考えています。投資家の間では、特に次の3つが金ETFの重要なメリットだと受け止められています。

  •  手軽さ(90%)
  •  現物の金を売買しなくても、価格変動から利益を獲得できること(89%)
  •  金ETFは投資家フレンドリーな商品であること(85%)

金の投資家は戦略的メリットに注目

足元でポートフォリオに金を保有している回答者のうち、ちょうど88%が金を保有する目的は、長期の戦略的投資だと答えています。約4分の3(71%)は金の保有により、投資ポートフォリオのパフォーマンスが改善したと述べています。

ポートフォリオに金を保有していると答えた投資家は、金を保有する主なメリットとして、景気後退期に価値を維持あるいは増やせること(68%)、分散化(67%)、インフレ・ヘッジ機能(67%)をあげています。

また、この調査では全投資家の80%が金には常に金銭的価値があると考えているものの、価格に影響する要因について理解していると考えている投資家は、41%にとどまることが明らかになりました。これに対して、自身のポートフォリオに既に金を保有している投資家の場合、75%が金の価格に影響する変数について理解していると回答しています。

そして、金ETFが人気を集めつつある

意外ではないでしょうが、金ETFに馴染みのある調査参加者の75%は、ETFはよりコスト効率的な金の投資方法だと回答しています。ただ興味深いのは、金ETFを保有する投資家の83%は自身の財務状況の見通しに楽観的で、その割合は金を保有していない投資家(73%)を上回っている点です。金ETFが市場の混乱時に底堅く推移することは証明されており、この先年末まで金価格や投資家需要は引き続き金利(Rates)、景気後退(Recession)、リスク(Risk)の3つの「R」に主に影響を受けると思われます。

金のETFに関するインパクト調査によって、金のメリットやポートフォリオで果たす役割について投資家に啓蒙する余地が、まだかなりあることが分かりました。金投資の方法や金がポートフォリオにもたらすメリットについて業界が啓蒙を続ければ、金投資に対する需要はさらに伸びるとみられます。