先行きが不透明な時は集中投資を避け、SPDR® S&P® 米国高配当株式 ETFの配当成長戦略がもたす安定性を利用すれば、ボラティリティの影響を軽減できる可能性があります。
配当成長戦略は、華やかなAI関連銘柄に比べると、父親や祖父の乗っていたオールドモービル(米国最古の自動車メーカー)のように感じられるかもしれません。しかし市場のボラティリティが上昇している時は、銘柄として面白みには欠けますが、有配企業のもつ安定性が魅力となることが多くあります。
株主価値の還元に力を入れてきた企業は多くの場合、盤石なバランスシートや安定したキャッシュフローといった特徴をもつことが、先行き不透明な経済環境を乗り切る助けとなっています。そして毎年増配を続けてきた企業で構成されるSPDR® S&P® 米国高配当株式ETF (SDY) のような配当成長ファンドは、配当収入の増加、分散効果の向上、市場ドローダウンの抑制により、不透明な市場環境下で投資家を支える役目を果たします。
安定性についてお話しましょう。2005年に設定されたSPDR® S&P Dividend 米国高配当株式ETF (SDY)は、S&P高配当貴族指数の値動きに概ね連動する投資成果を追求します。S&P高配当貴族指数は、S&Pコンポジット1500指数の構成銘柄のうち、過去20年以上連続して増配を続けている銘柄から構成されます。各銘柄の構成比率は予想配当利回りを基準としています。1
140社を超えるETFの構成銘柄の連続増配年数は平均34年で、うち9銘柄は60年以上にわたり増配を続けています(図表 1). これらの企業が増配を始めたのはジョン・F・ケネディが大統領だった時代で、ビートルズの訪米前です。
こうした実績は、ETF構成企業が様々な市場レジーム、経済環境、およびマクロサイクルを通じて株主還元の向上に努め、実現し続けてきたことを示しています。
配当の安定性と一貫性を重視した結果、SDYの保有銘柄上位10社には、コカ・コーラ、ベライゾン、ペプシ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM、エクソン、マクドナルドといった有名銘柄が並んでいます。それらの顔ぶれから、株主価値の還元を重視する企業が幅広いセクターに及んでいることがわかります。(図表2)
図表2:SDYのトップ10保有銘柄
| 企業名 | GICSセクター | 保有比率 |
| ベライゾン | コミュニケーション・サービス | 3.09 |
| リアルティ・インカム | 不動産 | 2.53 |
| シェブロン | エネルギー | 1.96 |
| アッヴィ | ヘルスケア | 1.87 |
| ケンビュー | 生活必需品 | 1.83 |
| コンソリデーテッド・エジソン | 公益事業 | 1.76 |
| WECエナジー・グループ | 公益事業 | 1.71 |
| キンバリー・クラーク | 生活必需品 | 1.70 |
| ジョンソン&ジョンソン | ヘルスケア | 1.65 |
| エクソン・モービル | エネルギー | 1.61 |
出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.,、2025年3月21日時点。特性は表示された日付時点のもので、変更される可能性があり、その後は最新情報としてして依拠されるべきではありません。2025年3月21日時点で保有銘柄トップ10がファンド全体の19.71%の比率を占めています。
過去数年にわたる大幅な株価上昇後(相場上昇を牽引したのは無配当の超大型株)、S&P500指数の配当利回り(1.34%)は過去の平均(2.75%)を下回っています2。足元の配当利回りはインフレ率も大きく下回っています3(現在のインフレ水準(2.8%)、過去20年間の平均インフレ率(2.6%)および5年フォワード・ブレークイーブン・インフレ率(2.2%)に基づく)。
とはいえ、SDYのベンチマークは信頼できる有配企業で構成されており、過去12ヵ月の配当利回りは2.9%です4。これは市場の過去の配当利回りとインフレ指標を上回る水準であり、名目および実質ベースでの配当収入の増大が期待できることを示しています。
過去のトレンドも同様の結果を示しています。SDYは設定以来、過去12ヵ月配当利回りは比較可能な市場エクスポージャー(S&P1500指数)の過去12ヵ月配当利回りを一貫して上回ってきました。これはSDYのベンチマークの銘柄選定方法ならびに配当利回りによるウェイト付けによるものです。
SDYの配当利回りは一貫して市場を上回ってきました。 過去12ヵ月配当利回りは平均3.6%、最低2.5%、最高7.2%でした。これに対して、市場全体の配当利回りは平均1.9%、最低1.3%、最高2.4%でした。平均すると、SDYの配当利回りはS&P1500指数を112ベーシスポイント(bp)上回っています(図表3)。
米国株エクスポージャーの超大型成長株への集中に懸念がある場合は、SDYを利用することによって、足元の市場でトップを占める企業への集中を抑えつつ米国株に投資できます。実際、SDYが組み入れているマグニフィセント・セブン銘柄はマクロソフト1社で、同社は配当利回りが低いためウェイトは相対的に小さくなっています。
SDYは上位銘柄が全体に占める割合も市場全体を下回っています。上位10銘柄の構成比率はわずか19%で、それに対してS&P500指数は31%、S&P1500コンポジット指数は32%となっています5。また最大構成比率は、市場全体で約7%であるのに対してSDYは3%であり、ここからも銘柄固有のリスクが低いことが分かります6。
SDYには、成長株に大きく偏った市場ポートフォリオを分散する効果もあります。S&P 500指数の内訳はグロース株が30%、バリュー株はわずか10%で7、残りは「コア」資産です。
しかし、SDYの内訳は純粋なバリュー銘柄が20%、純粋なグロース銘柄はわずか4%で、残りは「コア」資産です8 。市場全体とSDYの割合を50/50にすることで米国株式への配分のバランスは改善します。純粋なグロース株と純粋なバリュー株の割合を50/50にすると、それぞれの構成比率は17%、15%となり、足元でグロース株に大きく偏った「市場」の保有によるリスクを分散できます。
図表4:SDYのマグニフィセント7の保有比率は他と比較して低い
企業名 |
S&P 500 指数 |
S&P 1500指数 |
SDY |
アップル |
6.80% |
6.27% |
- |
エヌビディア |
5.99% |
5.52% |
- |
マクロソフト |
5.99% |
5.52% |
0.30% |
アマゾン |
3.82% |
3.52% |
- |
アルファベット |
3.76% |
3.30% |
- |
メタ |
2.70% |
2.50% |
- |
テスラ |
1.43% |
1.31% |
- |
合計 |
30.49% |
27.94% |
0.30% |
出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.,2025年3月21日時点。特性は表示された日付時点のもので、変更される可能性があり、その後は最新情報としてして依拠されるべきではありません。
SDYはセクターの分散にも役立ちます。市場はITやIT関連セクターに大きく集中していますが、SDYは特定の1セクターへの偏りは大きくありません(図表5)。
市場全体を表す指数と異なり、SDYではいずれのセクターも構成比率は3%以上20%未満です。SDYで構成比率が3%近辺にあるのはIT関連セクターです。つまり、市場全体を反映する指数と併用すれば、SDYは単一銘柄への集中度を抑えつつセクターのエクスポージャーを拡大できるということです。
図表5:SDYはセクター別でみても情報技術の比重があまり高くない
GICSセクター |
S&P 500指数 |
S&P 1500指数 |
SDY |
コミュニケーション・サービス |
9.5% |
9.0% |
3.0% |
一般消費財 |
10.2% |
10.5% |
4.5% |
生活必需品 |
5.9% |
5.8% |
17.2% |
エネルギー |
3.4% |
3.5% |
3.6% |
金融 |
14.1% |
14.5% |
10.3% |
ヘルスケア |
11.1% |
11.0% |
7.9% |
資本財 |
8.4% |
9.3% |
18.0% |
情報技術 |
30.5% |
29.0% |
6.1% |
素材 |
2.0% |
2.3% |
7.8% |
不動産 |
2.2% |
2.6% |
5.2% |
公益事業 |
2.5% |
2.5% |
16.4% |
出所: ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、2025年3月21日時点。構成比率は提示されている日付時点のもので、今後変更されることがあり、その後の時点では最新とみなされません。緑の網掛けはオーバーウェイトを示しています。
SDYには規模の分散効果もあります。SDYは大型株、中型株、小型株に資産を分散し、様々な規模にわたる底堅い配当成長銘柄を利用することで、配当・バリュー銘柄バイアスとともに小型株ファクター・ティルトのメリットも期待できます。
配当成長銘柄は、質が高く、様々な経済環境を乗り越えて株主に価値を還元し続けてきた実績があることから、市場全体に比べてストレス期を上手く乗り切ってきた歴史があります。SDYの平均月間ドローダウンは、約20年前の設定以来、市場全体(S&P1500指数)を下回っています(図表7)。
市場のパフォーマンスが特に悪かった15ヵ月間を見ても同じ傾向が当てはまります。2005年以降のパフォーマンス下位15ヵ月間の平均ドローダウンは、市場全体の-9.4%に対してSDYは-9.1%でした9。これは、数十年にわたって増配を続けることで、企業の財務の健全性と規律が守られていることを示しており、先行き不透明な時代には特に魅力的な特徴です。
関税、貿易問題、根強いインフレ、および金融政策の先行きが不透明なことから、市場の変動は続くと考えられます。安定的なポートフォリオを目指すなら、あらゆる規模の有配企業を対象として以下のように、クオリティ、バリューおよびサイズの要素を考慮したSDYへの配分を検討するのがよいでしょう。
確かに、配当戦略による利益で富を築くことは、過去数年にわたって投資家が獲得してきたリターンに比べると時間がかかるかもしれません。しかし、SDYは配当収入と市場ベースの値上がり益の双方の獲得を目指しており、今日の不透明な環境で投資家がまさに求めているもの、すなわち日曜日のドライブのような心地良さを提供できるかもしれません。