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連邦準備制度の独立性について懸念はあるか?

拡張的な財政政策と今後の人事異動を背景に、米連邦準備制度の独立性に対する懸念が高まっています。財政と金融政策の連携が強まれば政策の効果は高まる可能性がありますが、インフレ抑制能力に対する投資家の懸念は重要なフィードバックループとなります。そのため、市場は最終的に債券市場を通じて評価を下すことになるでしょう。

Chief Economist
Head of Macro Policy Research

ポストコロナ期における拡張的な財政政策の復活を背景に、中央銀行の独立性が低下しているのではないかという懸念が世界的に高まっています。特に米国では、連邦準備制度理事会(FRB)の今後の指導者交代をめぐって懸念が強まっています。

しかし、中央銀行の独立性が単純に低下しているという見方には、重要な留意点が2つあります。

指導者の交代は選挙サイクルごとに起こる

第一に、選挙サイクルごとに新たな金融政策担当者が任期中に登場します。人事の変更があるからといって、それだけで制度全体が大きく変わるわけではありません。FRBのガバナンスは安定性を維持するよう設計されており、新しい政策担当者が就任しても、組織の多くの部分では継続性が保たれます。

より良い連携が、より良い成果につながる可能性もある

第二に、より議論を呼ぶ点として、政府支出を管理する財政政策担当者と、金利やマネーサプライを管理する金融政策担当者との連携が強まることで、政策の組み合わせが改善され、より良い成果につながる可能性があります。

両方の政策分野を理解し、互いに矛盾しない意思決定ができる経験豊富な政策担当者がいることで、国家の戦略的目標の達成に向けて、より強力で整合性のある政策を構築することが可能になります。実際、2010年代初頭のユーロ圏危機から得られた教訓のひとつは、財政政策と金融政策の連携が欠如すると、望ましくない結果を招く可能性があるということです。

市場と投資家が最終的な判断を下す

一部では、これは政策の改善ではなく、独立機関を行政府の意向に従わせることが目的ではないかとの懸念もあります。では、それがより良い政策協調なのか、政治的な支配なのかを誰が判断するのでしょうか?答えはシンプルです。市場が判断します。

世界の投資家たちは、FRBの独立性が本当に脅かされているのか、あるいは制度的な意思決定の質が低下しているのかを最終的に評価します。もし市場参加者が、FRBがインフレを適切に管理できないと判断すれば、それはインフレ連動資産の価格に反映されるでしょう。

私たちは、こうした懸念がまずタームプレミアムの拡大によるイールドカーブのスティープ化という形で現れると考えています。過去2年間、イールドカーブの長期側(30年債と5年債の差)がスティープ化する動きは、タームプレミアムの上昇と並行して進んできました。昨年11月の選挙結果を受けてカーブが急激に傾斜したこともありましたが、これは金融政策サイクルの現在地、すなわち景気循環を通じて維持できない引き締め的なスタンスを反映している面もあります(図表1参照)。

インフレへの懸念が強まれば、穏やかなブル・スティープナーから、より厄介なベア・スティープナーへと移行する可能性があります。また、この変化は、今後数年間にわたって続くと予想されるドル安の長期的な追い風をさらに後押しすることになるでしょう。

コメントではなく、イールドカーブを見る

財政拡張や人事異動の中で、FRBの独立性に対する懸念が高まるのは理解できます。しかし、状況は単純な白黒ではありません。FRBのガバナンスや、政策協調による潜在的なメリットは、こうした懸念に対する重要な反論材料となります。

最終的に、FRBの信頼性が損なわれているかどうかを決めるのは、政治的な憶測ではなく市場の動きです。投資家がインフレ管理能力の低下を感じれば、それはイールドカーブ、タームプレミアム、インフレ連動資産の価格に反映されます。FRBの信頼性が本当に危機に瀕しているかどうかを示すのは、市場であり、市場の論者や政策担当者自身ではありません。

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