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市場心理を読む

金が主役となる

強力なマクロ環境の後押し、軟調なドル、堅調な需要を背景に、金が主役となっています。強気相場が持続する理由、ボラティリティを引き起こす可能性のある要因、そして2026年に投資家が注意すべき主要なリスクを探ります。

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Head of Gold Strategy

過去を振り返ると、米ドルと金は一貫して逆相関を示してきました。これは主に、金価格が米ドル建てであることに起因しています。ドル安になると米国以外の買い手にとって金が割安になり、金需要を押し上げやすくなります。こうした逆相関は長期にわたり維持されることが多く、米ドルの価格サイクルに対して逆方向に働くカウンターウェイトとして機能してきたことを裏付けます。金利差の変化、財政をめぐる不透明感の高まり、世界的な資本移動などによってドルが今後数年間で下落する場合、金にとって追い風となる可能性があります。その意味で、構造的なドル安環境は、金が数年にわたり良好なリターンを上げてきた過去の局面と同じように、金にとって好ましい環境と言えるでしょう。

今週のハイライト

世界の金需要の主な源泉

出所:ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント

 強気相場において金市場の持続的な調整をもたらす要因とは?

2023~2024年に形成され始めた歴史的な金の強気相場サイクルは、2026年末まで継続する可能性が高いと思われます。実際、今後6~12ヵ月間で金価格が6,000ドル/オンスを突破する可能性は、4,000ドル/オンスを下回る可能性よりも高いとみられます。金に対する構造的なマクロ経済面の追い風として、以下の要因が挙げられます(ただしこれらに限定されません)

1. 世界的な債務負担の増加と通貨安懸念の高まり
2. 株式と債券の相関性の高まり
3. 金ETFへの資金再流入と金への資金再配分サイクル
4. 米連邦準備制度理事会(FRB)議長が交代する中でFRBが利下げに踏み切る可能性
5. 中国、個人投資家、新興諸国の中央銀行からの旺盛な現物需要。

しかし、そうした貴金属価格の上昇に対するリスクは何でしょうか?また、金は投機的なバブル状態にあるのでしょうか?後者の問いに対しては、当社は明確に否定します。金の取引価格は一段高い水準に切り上がったように見受けられます。さらに、世界金融危機後からコロナ禍後にかけて、外貨準備資産としては過小評価されていた金には、おそらく4,000~4,500ドル/オンス程度の緩やかな下限が新たに形成されていると思われます。

もっとも、金価格が直線的に推移する可能性は低い点を認識しておくべきです。そして、過度な投機はボラティリティを上昇させる可能性があります。資産クラスとして注目が集まり、短期投資家の関心が強まる局面では、1月30日~2月2日に見られた約14%の下落のように、折に触れてテクニカルな調整が発生すると思われます。また、発生確率はきわめて低いものの、特定のシナリオ下では金価格が20~25%下落し、4,000ドル/オンスを下回る可能性も排除できません。

資産価格の下落要因は多岐にわたりますが、金に関しては以下の3つの要因が想定されます。

  1. 「米国売り」のテーマが「米国買い」に反転し、米ドルが持続的に上昇するシナリオです。米ドル建て効果は金に対する投資家センチメントにとってきわめて重要です。昨年年初からの7~8ヵ月間で米ドルが1970年代以来の大幅な下落を記録したのと同時期に、2025年に対米ドルの金リターンが1979年以来の高水準となったことは驚くに当たりません。これは、「オルタナ・フィアット(代替法定通貨)」需要が発生したためです。米国債イールドカーブのスティープ化、平時に拡大する米財政赤字、不安定なトランプ政策(および米国債に対する海外需要に及ぼし得る波及効果)といった組み合わせは、総じて米ドルにはマイナスに、貴金属にはプラスに働いてきました。第2次トランプ政権下における地経学的な不透明感の高まりは、左側のテールリスクのヘッジ手段として金需要を押し上げている可能性があります(図表1)。したがって、財政・インフレ起因のタームプレミアムが低下する中で、「米国売り」のテーマが急反転し、米ドルと米国デュレーションへの需要が大きく高まれば、2026~2027年にかけて金価格が下落し得るテールリスクの一つとなります。
  2. アジアの消費者の価格弾力性が高まり、金購入量が大幅に減少するとともに、スクラップ供給が増加するシナリオです。中国の金需要は金価格の安定にとってきわめて重要です。きわめて成長が著しいコモディティ消費国である中国は、原油や銅市場と同様に、金市場にとっても重要です。金に対する中国のリテール需要は驚くほど堅調です。2025年における非貨幣用金の輸入量は、金価格が240~250%上昇したにもかかわらず、2019年と同程度の水準でした。その背景には、第2次トランプ政権効果や「解放の日」以降の国内需要を下支えする政策に加え、人民元の切り下げ懸念および不透明な不動産市場の回復期待が考えられます。一方、パンデミック後の堅調な金需要に対して中国で「買い控え」が発生すれば(図表2)、需給バランスが崩れ、世界の金価格の下押し要因になる可能性が高まります。さらに、アジアでは宝飾品保有者の多くが価値の保蔵手段として金の保有を続けており、これが金のリサイクルやスクラップ供給を抑制してきました。こうした保有の傾向が目に見えて反転し、金の供給が増えれば、価格下落要因になり得ます。
  3. 中央銀行が金を一斉に売却するシナリオです。 公的部門は過去16年間にわたり外貨準備金としての金を積み増してきました。これは米ドルが変動相場制に移行してから最長期間となります。脱米ドル化や外貨準備の分散化傾向を踏まえると、こうした流れは今後も続く可能性が高いと言えます。経験的には、公的部門の購入は金価格の下限を引き上げ、ダウンサイドの価格ボラティリティは低下しています。足元で減速の兆しは見られないものの、中央銀行の金購入意欲が大幅に低下したり、金準備資産の大規模な売却が起きたりすれば、金には弱気材料となるでしょう。その場合、現物の需給バランスが崩れ、景気循環に左右されにくい金の買い手がいなくなり、宝飾需要やETF/民間投資がその不足分を埋める必要が生じると思われます。当社の見解では、可能性はきわめて低いものの、公的部門が毎年鉱山供給量の20~30%を購入している現状を踏まえると、このケースでは金価格はほぼ確実に弱気相場に突入すると見ています。

金への投資判断は、依然としておおむね建設的です。とはいえ、価格が急落し得るテールリスクは存在します。もっとも、これは長期的な視点での金の戦略的価値を否定するものではありませんが、2,000ドルから5,000ドル/オンスへの上昇相場に乗り遅れた投資家にとっては懸念材料となるかもしれません。

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