少額投資非課税制度(NISA)を活用した投資対象として話題になる米国株式。そのなかでも代表的な株式指数であるS&P500指数はニュースなどで耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、S&P500指数への投資だけでは、市場の中で局所的に生まれる成長機会や、セクターごとの強弱を十分に捉えきれない場面もあります。そこで新しい米国株式の投資手法としてのセクター投資について、その特徴などを解説します。まずはセクターについて知りましょう。
セクター(業種)は、意外と身近にある個別株式の分類方法です。例えば経済紙やニュースの株式市況で、「円安進行で自動車など輸送用機器が高い」といった表現や「金利上昇を受け、収益改善への期待から銀行株が買われた」といった表現を目にすることがあるでしょう。こうした似たような商品やサービスのまとまりをセクターや業種といいます。
米国では代表的なS&P500指数に採用されている銘柄について、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&PDJI)とMSCIが共同で開発した世界産業分類基準(GICS)を基に11のセクター(エネルギー、素材、資本財、一般消費財、生活必需品、ヘルスケア、金融、情報技術、コミュニケーション・サービス、公益事業、不動産)に分類しています1。なお、日本における業種(セクター)は、東京証券取引所に上場されている株式について、証券コード協議会が33業種に分類しています。
図表1:11セクターの概要
| 業種セクター | S&P500構成比率 | 具体的には? | 特徴 |
| エネルギー | 3.2% | 原油・ガス・精製・サービスなど、エネルギーの採掘と供給 | ※景気より国際的な資源価格に強く左右 |
| 公益事業 | 2.2% | 電気・ガス・水道など | ※日々使うので景気が悪くても比較的安定 ※ただし金利の影響大(設備投資が大きいため) |
| 生活必需品 | 5.0% | 食品・飲料・日用品など、生活に必要なモノを製造販売 | ※不況でも需要が比較的安定 ※ただし価格競争や原材料コストの影響大 |
| 不動産 | 1.9% | REITや不動産運営・管理など、物件を保有・賃貸する企業 | ※金利や物件需給の影響大 |
| ヘルスケア | 9.4% | 医薬品・医療機器・検査・病院など | ※景気に左右されにくく、高齢化で長期的な需要 |
| 素材 | 2.0% | 化学・金属・紙・パッケージなど、他産業の材料を提供 | ※原材料価格・世界需要に連動 |
| 金融 | 12.9% | 銀行・カード・保険・運用・取引所など | ※レバレッジが効いている企業が多く景気の影響を強く受ける ※金利が高いほうが有利 |
| コミュニケーション | 11.0% | SNS・検索・動画配信などプラットフォーム、通信キャリアやネット | ※SNS・広告・動画配信などは景気の影響大 ※一方、通信キャリアは景気に左右されにくい |
| 資本財 | 8.6% | 機械・建設・物流・防衛など、インフラをつくる企業 | ※景気循環(設備投資の波)の影響 |
| 一般消費財 | 10.4% | 車・旅行・外食・アパレルなど、ぜいたく品を製造販売 | ※景気の影響が強い |
| 情報技術 | 33.4% | 半導体・ソフト・クラウド・技術製品など、デジタルを動かす基盤 | ※新サービスやAIの進化で高い成長期待 ※一方、値動きも大きい |
出所:S&Pグローバル 2026年1月30日時点
米国株式や経済に関心のある人にとって、GAFAMやマグニフィセント・セブン(Mag7)といった用語は耳なじみのあるものだと思います。どちらも米国株式をけん引するハイテク関連銘柄群のことを示していますが、前者はアルファベット(グーグル)、アップル、メタ(フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフト、後者は前者にテスラとエヌビディアを加えた銘柄群です。
これらは一見すると同じセクターと思われがちですが、メタとアルファベットはコミュニケーション・サービス、アップルとマイクロソフト、エヌビディアは情報技術、テスラとアマゾンは一般消費財とそれぞれ異なるセクターに分類されています。具体的にどのような企業/銘柄が各セクターに分類されているか、各セクターの主要な銘柄を図表2で確認してみましょう。セクターの構成銘柄などについて、より詳しく知りたい方はS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのウェブサイトなど活用してみましょう。
図表2:11セクターの代表的な銘柄
| 業種セクター | 1位 | 2位 | 3位 |
| コミュニケーション | メタ・プラットフォームズA | アルファベットA | アルファベットC |
| 一般消費財 | アマゾン | テスラ | ホーム・デポ |
| 生活必需品 | ウォルマート | コストコ | プロクター・アンド・ギャンブル |
| エネルギー | エクソン・モービル | シェブロン | コノコフィリップス |
| 金融 | バークシャー・ハサウェイ | JPモルガン | ビザ |
| ヘルスケア | イーライリリー | ジョンソン・エンド・ジョンソン | アッヴィ |
| 資本財 | GE・アビエーション | キャタピラー | RTX |
| 素材 | リンデ | ニューモント | シャーウィン・ウィリアムズ |
| 不動産 | ウェルタワー | プロロジス | アメリカン・タワー |
| 情報技術 | エヌビディア | アップル | マイクロソフト |
| 公益事業 | ネクステラ・エナジー | コンステレーション・エナジー | サザン |
出所:ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、基準日:2025年12月31日
セクター投資を行うメリットは、米国株投資内で分散ができることです。例えば、S&P500指数の構成銘柄についてセクター別の構成比率をみると、情報技術だけで約34%を占めているほか、続く金融(約13%)、コミュニケーション・サービス(約11%)と上位3セクターだけで半分以上を占めています。このため個別銘柄単位では分散投資ができているとしても、特定の経済現象やテーマで同じような動きをするセクター群が指数そのものをけん引する形となっています。
こうした状況では、構成比率が高く、指数寄与度が高い情報技術やコミュニケーション・サービスの下落だけでS&P500指数が全体を押し下げる、ということもあり得ます。各セクターの特徴を捉えた投資による分散効果により、こうした影響を軽減する効果も見込まれます。一方で、株式相場のセンチメントが良い中でも、よりパフォーマンスの良いセクターへの投資比率を増やすことでS&P500指数以上のパフォーマンスを得られる可能性もあります。まずは図表1で取り上げた各セクターの特徴をよく理解することがセクター投資の最初の一歩といってもいいでしょう。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントでは米国ETFリサーチチームが、セクター投資についてタイムリーな分析を提供しています。セクター投資の理解や検討材料にご活用ください。