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グローバルマーケットポートフォリオ

金は分散投資においてきわめて重要

ポートフォリオにおける金の役割は変化しつつあります。ボラティリティの急上昇や「安全資産」としての位置づけに疑問が呈されることもありますが、金は依然として有力な分散投資手段です。特にアジア全域を中心に、金ETFや金地金、金貨に対する旺盛な需要がその役割を支えています。

Frederic Dodard
Head of Portfolio Management, ISG, EMEA
Amy Le
Investment Strategist

当社独自の資本市場に関する想定に基づくと、グローバル・マーケット・ポートフォリオ(GMP)の中期的な名目リターンは6.3%(米ドルベース、手数料・取引コスト控除前)、長期の名目リターンは6.1%になると予想されます。このリターンは、ほとんどの先進国における現在および予想されるインフレ率を十分に上回っており、株式やリスクの高い新興国債券が主なけん引役となっています。

2026年、金価格のボラティリティは過去最高に達しました。その要因として、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ予想の急激な変化、ケビン・ウォーシュ氏のFRB議長指名や中東情勢の混乱などを契機とした債券利回りの急上昇、米ドル高、および金価格が1オンス5,000ドルから5,500ドルへと急騰したことから利益確定のために活発に売られたことが挙げられます。

ストップロスの発動により、こうした動きはさらに強まり、金価格の変動は急激かつ予測不能なものとなりました。このような価格の乱高下にもかかわらず、2026年第1四半期の金価格は、前年同期比で49.4%上昇しました。GMPに占める金の割合は、2000年の1.2%から2026年第1四半期には6.1%まで上昇し、中央銀行による大規模な市場介入が行われた2011~2012年のピークを上回りました。

2026年初め、金の「安全資産」としての地位は低下

2025年、財政赤字懸念や根強いインフレ圧力の下で米国債などの伝統的な資産が低迷する中でも、金は安全資産として驚くべき底堅さを発揮しました。しかし、この目覚ましい価格上昇の裏にはぜい弱性が隠れていました。特にイラン紛争を契機として構造的な需要が低下するとともにリスク回避姿勢が強まったため、金は実質利回りの上昇に対してますます敏感になっていったのです。金価格を押し上げた要因が急速に反転し、金価格が急落する可能性が生じました。こうしたぜい弱性は、イラン紛争のぼっ発を受けて金価格が12%急落した際に露呈しました。地政学的混乱時にこのように価格が下落することは、特に実質利回りが上昇し、金保有の魅力が低下する場合には決して珍しくないことが浮き彫りになりました。

こうしたぜい弱性に加え、金の需要動向の変化が売り圧力をさらに強めました。各国中央銀行や中国の投資家が主要な買い手として市場に参入し、モメンタム・トレードによってファンダメンタルズに関係なく金価格が押し上げられたことにより、かつては信頼性の高かった金価格と実質利回りの相関関係が崩れました。とはいえ、2026年第1四半期に見られたように、こうした重要なサポート要因は一時的なものにすぎません。当時、各国中央銀行は自国通貨防衛のために金を売却したり(トルコ、インドネシア)、戦争遂行資金調達のために金を売却したりしていました(おそらくロシアやイラン)。さらに、中国および欧米市場における需要はより投機的なものとなり、金の伝統的な「安全資産」としての特性に変化が生じました。こうした変化と当時支配的だったリスクオフ・センチメントが相まって、金価格は第1四半期末に急速に下落しました。一方、第2四半期にはリスクオン・センチメントが広がりましたが、投資家が株式に対して強気姿勢に転じたことから金には好影響をもたらしませんでした。

その結果、金のモメンタムは急激に反転し、2026年のパフォーマンスはここまでかなりの期待外れとなっています。とはいえ、これは金が「安全資産」としての役割を失ったことを意味しません。むしろ、その役割に条件が付くようになったことを示唆しています。金は引き続き、地政学的緊張から恩恵を受ける可能性がありますが、それは実質利回りの上昇、限界需要の低下、そして投機的ポジションの反転によって、そのサポート要因が相対的にきわめて小さくならない場合に限られます。

とはいえ、金へ投資する根拠が失われたわけではありません。短期的には、各国中央銀行は持続的な買い手とはならない可能性がありますが、戦略的な準備資産を分散化しようとする中央銀行の幅広い意向は引き続き、金の長期にわたる戦略的な役割を下支えしています。

アジアが金地金・金貨需要の急増をけん引

第1四半期における金地金・金貨への投資はきわめて堅調であり、2013年第2四半期の記録にほぼ並ぶ水準となりました。そのけん引役はアジアであり、需要額は過去最高の740億ドルに達しました。購入の多くは1月に集中しましたが、一部の投資家が価格の下落を好機と捉えたため、四半期を通して買いが続きました。

中国では、金地金および金貨の需要が207トンと過去最高を記録しました。その背景には、金価格の上昇に加え、通商および地政学的リスク、ならびに投資需要を宝飾品から金地金や金貨へとシフトさせた付加価値税(VAT)の改革がありました。利下げ期待や依然として続く世界的な不確実性に支えられ、需要は引き続き高水準を維持する可能性が高く、保険会社が金保有額を増やす可能性もあります。

インドでは、金地金・金貨への投資額が前年同期比で30%以上増加して62トンとなり、第1四半期としては2013年以来の高水準を記録しました。この増加をけん引した要因は、金価格の上昇と宝飾品から利益率の低い商品へのシフトであり、ETFやデジタル・ゴールドでも同様の増加が見られました。今後の需要は、金価格やより幅広い経済要因に大きく左右されるとみられます。

底堅いETF需要

世界の金ETFは力強い勢いを維持しており、第1四半期の金保有高はさらに62トン増加し、勢いはやや鈍化したものの、投資家の需要が底堅いことを裏付けました。しかし、この全体的な堅調さの下で、地域ごとの資金動向には著しい差があり、アジアの伸びが北米や欧州の低迷を相殺して余りある状況でした。

こうしたかい離はアジアで最も顕著であり、けん引役として際立っていました。株式市場の変動や通貨安を背景とした、主に中国による戦略的な「安全資産」への投資に支えられ、資金流入は毎月着実に伸び、金保有高は84トンという大幅な増加を記録しました。インドや日本の投資家も、アジア地域の需要を押し上げました。一方、北米では、ドル高や金利上昇が資金流入に重しとなり、純資金流入額はマイナスに転じました。欧州における資金流入は2四半期連続で減少となる一方、オーストラリアを中心とするその他地域の資金流入により金保有高は合計2トン増加しました。

金のボラティリティは急速に正常化に向かう傾向

中東紛争を受けて取引に混乱が生じましたが、ボラティリティの上昇は金だけでなく、株式や債券にも及びました。一部の投資家は現金を手早く得るために金を売却しましたが、金価格はすぐに回復し、戦略的な役割を維持しました。歴史的に見て、金のボラティリティは株式の場合と同様に急速に平時の水準(年率10~18%)に戻り、ボラティリティの急上昇は通常、6週間程度で収束する傾向にあります(出所:ワールド ゴールド カウンシル、Juan Carlos Artigas、Ray Jia、Taylor Burnette、「You asked, we answered: Has gold's performance
structurally changed?」(2026年4月16日))。ボラティリティが長期間にわたって高止まりすることは珍しく、市場は通常、急速に安定化に向かいます。

こうしたパターンは、2020年3月に新型コロナウィルスのパンデミックが世界市場に影響を及ぼし、市場が広範囲にわたって下落した際にも明確に見られました。金の取引高は急増し、大きな金融ストレスが生じた局面では、金が潤沢な流動性を供給する役割を果たすことが浮き彫りになりました。

一時的な流動性ショックによりビッド・アスク・スプレッドは拡大しましたが、すぐに縮小しました。金のスプレッドは通常のレンジ内にとどまり、混乱は短期間で収束し、流動性はすぐに正常な水準に戻るものと予想されます。

金は引き続き分散投資の手段として機能

金は、ボラティリティが急上昇する中でも、「安全資産」としての役割を維持しており、投資家にとって引き続き戦略的に不可欠な資産です。インフレ・ショックを受けて債券と株式が連動する一方で、特に地政学的リスクや原油に起因するインフレ・リスクが生じた場合には、金との間には負の相関関係が維持されます。分散化されたポートフォリオでは、金は確実にリスクを低減します。流動性確保のために金が売却されたとしても、不確実性が続く場合には価格の回復により他の資産をアウトパフォームし、安定性を提供します。

2026年3月31日時点で、金はGMPの中で6.1%を占め、分散投資への寄与は全体の中で25%と、すべての資産の中で首位に立ちました。金は他の資産クラスとの相関が恒常的に低いため、ポートフォリオの分散化に欠かすことができない資産です。

不確実な情勢が続いていることから、世界の投資環境において金の輝きが色あせることは、当面ないものと思われます。

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