景気は底堅く金利環境は良好という、総じて好ましい状況を背景に、当社は債券市場に対して明るい見通しを維持しています。社債よりソブリン債を選好しますが、投資家はインフレや通貨リスクを考慮した慎重なアプローチが求められます。
2026年にかけて、当社は債券市場全般の見通しに対して明るい見方を維持しており、社債よりソブリン債を総じて選好しています。こうした当社の見方を支えているのは、良好な金利環境と底堅い景気です。社債からの利益は限定的と考えられるものの、新興国市場の債券、モーゲージ証券、およびストラクチャード・クレジットには投資機会が期待されます。
主要3中銀の政策スタンスは次の3つに分類できます―― 米連邦準備制度理事会(FRB)は明らかに利下げに傾き、欧州中央銀行(ECB)は中立的、日銀は依然として利上げモードにあります。こうした異なる政策スタンスから、今後数四半期の相対的なリターン予想を単純に導くことは可能です。しかし、現実はより複雑であり、金利サイクルは景気変動に伴い変化します。こうした政策の違いが織り込まれた結果、2025年第3四半期には主要7ヵ国(G7)の指標利回りにややばらつきが見られましたが、イールドカーブ上の関係が完全に崩れたと考えるのは誤りです。
ソブリン債は引き続き魅力的ですが、投資に際してはデュレーションを慎重に選び、インフレリスクに注意する必要があります。政府が財政赤字に対して信頼できる対応をとる意思があるかどうかは不透明であり、その動向はイールドカーブの長期セクターに影響する可能性があります。米国とフランスが特に注目されていますが、これらに限った話ではありません。債券自警団は日本や一部の欧州諸国にも注視しています。今後の展望として、米国債市場は引き続き来年のグローバル金利市場の要となるでしょう。
為替エクスポージャーも鍵を握ります。たとえば、ヘッジなしのユーロおよびスイスフラン建ての投資家は、自国通貨高により、海外債券、特に米ドル建ておよび円建ての債券のリターンから大打撃を受けました。今後も通貨主導のボラティリティが続くことが見込まれ、多くの債券投資家は通貨エクスポージャーのヘッジを優先事項とすべきでしょう。
米政府機関の閉鎖による大きな影響の一つは、経済指標の公表がほとんど行われなかったことです。ただ、データの公表は停止されましたが、米労働市場が軟調さを見せ始めていたことは既に明らかでした。インフレの状況はそれほど明白ではなく、公表データは一部FRB高官が妥当と感じる水準を若干上回り続けていますが、基調は(ゆっくりと)正しい方向に向かっている模様です。そのためFRBは2026年のインフレ予想(中央値)を9月の経済予測から若干引き上げましたが、平均インフレは2027年末には2.1%に低下すると予想しています。
FRBの政策緩和により短期米国債市場は安定し、労働市場がさらに軟化すれば、利回りの低下につながる可能性があります。一方、当社は米利回りが過去12ヵ月間のレンジの下限近くにある点を認識しています。これは、米利回りがこれ以上低下しないという意味ではありません。ただ、かなり急速にこの 水準に達したとみています。これにより2つの影響が考えられます。
ユーロ圏の国債も同様の状況に直面していますが、利下げ見通しの後退、足元の財政懸念を踏まえると、若干制約が強いと考えられます。当社は、景気がさらに大きく減速しECBが追加緩和を打ち出さない限り、リターンは小幅になるとみています。ただし、アクティブな投資アプローチを取ることで、リターン向上が期待できます。
たとえば、フランスとベルギーは、債務水準が高止まりし、さらに上昇しているため、中期的に債務の持続可能性リスクが高まっています。リスクを高めているこれらの要因は緩やかに進行し、経済・政治構造に深く根付いているため、長期的な格付動向を予測する手がかりとなり、アルファ獲得の機会をもたらします。オランダの年金改革もアロケーションの大幅な変化につながる可能性があり、リスクと機会を生み出しています。
英国債(Gilt)には潜在的な価値があるとみています。景気低迷および低インフレが続く可能性が高まっていることが、イングランド銀行による追加利下げ観測を支えています。財政政策の余地が限られているため、政府は市場の信認を維持し、急速に増加する公的債務を抑制するとともに、成長を後押しすることを目指しています。この潜在価値を最大限に引き出すには、歳出削減に対する信頼できるコミットメントが必要です。
アジアでは、日本国債は2026年に魅力的な投資機会となる可能性があります。利上げサイクルが明確に終了し、同時に日本の銀行が、保有する潤沢な現金を市場に投入すれば、日本国債(JGB)、特にカーブの中間部分のパフォーマンスを押し上げる要因となり得ます。一方、中国のソブリン債利回りはレンジ内での推移が見込まれます。足許のディスインフレ圧力により利回りの上昇が抑えられる一方、緩和的な金融政策スタンスの後退により下方余地も限定されると予想されます。
社債のファンダメンタルズは依然として強固ですが、ここから大きな上昇余地を期待するのは難しい状況です。全般的に、投資適格社債とハイイールド債のスプレッドは、ともに足元で低水準にあることを考えると、大幅に縮小する公算は小さいでしょう。それよりもモーゲージ証券、ストラクチャード・クレジット、プライベート・クレジットに妙味があります。とはいえ、社債はある程度魅力的なキャリーを引き続き提供していることから、コア資産にとどまるでしょう。興味深いのは、時価ベースで見ると、BB格債はB格債を上回り、ハイイールド市場に占める割合が過去最大となっている点です。
当社は新興国市場の債券に対して明るい見通しをもっており、中でも相対的に現地通貨建て債券を選好しています。魅力的なリスク・リターン・プロファイル、政策金利の低下、信用格付けの引き上げなど新興国の足元の動向が当社の明るい見通しを支えています。
外貨建て新興国債券は、米国の金利動向から恩恵を受ける可能性があります。スプレッドは縮小しているものの、リスクオフによる調整局面では、魅力的な買いの機会が生まれる可能性があります。とはいえ、米ドルのエクスポージャーには注意が必要で、米ドル以外の通貨を基準に運用する投資家の場合、不利な為替の動きが1四半期あるだけで、1年分のクーポン収入が相殺されてしまう可能性があります。
現地通貨建て新興国債券は、引き続き強固なファンダメンタルズに支えられています。総じて良好なインフレ環境の下で国内金利の低下観測が浮上すれば、米ドルが下落した場合と同様にリターンの押し上げ要因となり得ます。外貨建て債券と同様に、利回り調整で魅力的な買いの機会が生じる可能性もあります。