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システマティック・アクティブ債券運用:SAFI投資プロセスガイド

SAFI(以下「本戦略」)は、ルールおよびデータに基づく定量的アプローチにより、アルファの創出を図ります。

Senior Client Portfolio Manager
Global Head of Portfolio Strategists, Fixed Income, Cash and Currency

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SAFI:現代的な債券投資アプローチ

本戦略は、ファクタースコアという定量シグナルを用いて銘柄選択を行うと同時に、運用目標であるベンチマークの構造的なリスクとの整合性を維持することを目指します。このように、本戦略は主に銘柄選択からアルファの創出を図ります。このアプローチは、銘柄選択の意思決定における高い一貫性を保証するだけでなく、これを迅速かつ大規模に行います。具体的には、数千の証券を同時に評価し、アルファ創出の可能性を特定し活用します。さらに、気候変動などのサステナビリティ要因を銘柄選択の意思決定過程に統合できるため、SAFIは魅力的なアルファ創出の可能性を提供しつつ、クライアント固有のサステナブル投資における選好や目標に沿うことが可能となっています。

当社のシステマティックなファクターベースのアプローチは、投資適格債からハイイールド債まで、債券市場全体にわたる投資機会の特定に活用されてきました。このアプローチは、 今日の債券市場において、電子取引の改善によって大幅に改善された価格の透明性と更新頻度を活用しています。本戦略のシステマティックなアプローチは定量的かつルールに基づくものであり、きわめて定性的なファンダメンタルズ分析に基づく既存のアクティブ型債券戦略の大半とは異なります。こうしたアプローチの違いは、差別化されたリターン系列という形で大幅に異なる成果を生み出しており、これがシステマティック戦略の主要な魅力の一つとなっています。潜在的に創出されるアルファの水準だけでなく、その生成方法こそが、運用会社の分散による魅力的な効果を投資家にもたらすことを示しています。

ファクターリサーチの質は、あらゆる定量的アプローチを支える重要な要素です。そのため、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズでは、債券分野において最も経験豊富で高い評価を得ているクオンツ戦略チームのひとつであるBarclays Quantitative Portfolio Strategy(バークレイズQPS)と提携しています。バークレイズ QPSは、カスタム仕様のシステマティック戦略指数を通じてファクタースコアを日次で提供しており、当社はそのスコアを、精緻なポートフォリオ構築および効率的な運用に関する当社の専門知識と組み合わせて活用しています。これにより、当社は魅力的であると同時に差別化されたリターンを創出するように構築されたポートフォリオを通じて、この頑健な理論を実践に移すことが可能な比類のない組み合わせを実現したと考えています。このバークレイズ QPS(参考:バークレイズ QPS の紹介)との提携を通じてステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、当社の頑健なポートフォリオ管理および運用の専門知識と、QPS の先進的なファクターリサーチを組み合わせ、包括的なシステマティック・アクティブ運用戦略を提供しています。

当戦略のバックボーン

SAFI の投資プロセスとアルファの創出は、3つの重要なシグナル、すなわちファクターによって支えられています。

定量的シグナルは、債券市場におけるアウトパフォームの機会を特定することができます。

特定されたシグナル 目的 経済的根拠
バリュー(ピアグループに対する超過スプレッド=ESP) 過小評価されているリスクの特定

このシグナルは、業界、格付け、満期などの構造的およびファンダメンタルズ面の要因を調整した後、ピアグループ*と比較して割安な債券を特定することを目的としています。幅広い証券を分析することで、相対バリューシグナルはミスプライシングされている債券を特定します。基本的にESPは過小評価されているリスクの特定に役立ちます。

モメンタム(クレジットにおける株式のモメンタム=EMC) 株式市場が示す強いセンチメントを持つ魅力的な銘柄を特定し、バリュートラップを回避 モメンタムは、発行体の株価トレンドに焦点を当てます。株価に強いモメンタムがある発行体の債券はアウトパフォームが期待され、スコアが高くなります。株式と債券価格のリード・ラグ(先行・遅行)関係は研究で確認されており、EMCは債券の将来パフォーマンスを示唆する有益な先行指標となります。重要点は、株式モメンタムとバリューシグナルを組み合わせることによって、債券価格が経済的な理由からピアグループ比で割安となるときに発生するバリュートラップに陥るリスクが軽減され、投資の精度が向上することです。
センチメント(株式の空売り) 高度な金融知識を持つ投資家による積極的な空売り対象となっている高リスク発行体を除外 株式の空売り比率が高い発行体を特定するためのシグナルです。ヘッジファンドなど高度な金融知識を持つ投資家は、株式に大きな空売りポジションを取ることによって、当該企業に対してネガティブな見解を示します。したがって、大幅な空売り状況にある企業は潜在的な下落リスクがあるため、債券ポートフォリオから除外することが最善の策です。このセンチメント指標を使い、当社は投資家が積極的に空売りしている発行体を除外しています。

出所:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、バークレイズQPS、2025年3月20日時点

*セクター、格付け、満期などのグループ分類によりシステマティックリスクを管理。

SAFIは、有益なシグナルをシステマティックに適用し、ミスプライシングされている債券を特定することにより、標準的なベンチマークを安定的かつ偏りなく、構造的にアウトパフォームするようなポートフォリオの構築を目指します。

Pie Chart Construct

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SAFIの投資プロセスを詳しく解説し、データに基づくファクターを活用してアルファ(超過収益)を創出する実証済みの方法を紹介しています。このレポートでは、SAFI投資プロセスの概要、クレジットリターンを牽引するアルファファクターの説明、そして気候基準の統合に関するインサイトを提供しています。

投資プロセスのステップ

本戦略ではシステマティックなアルゴリズムに基づくアプローチを採用し、投資対象となり得るすべての債券を各ファクターへのエクスポージャーに基づいて評価します。効率的かつ実践的な方法で、これらのファクターへのエクスポージャーを最大化することを目指します。

シグナルの生成

バリュー、モメンタム、センチメントの3つのファクターに関するシグナルは、バークレイズQPSにより、カスタマイズされたシステマティック戦略指数を通じて、ベンチマークの各債券について毎日提供されます。投資対象となり得るすべての債券には、債券ごとに各ファクターのスコアと総合スコアの計4つのスコアが付与されます1

各シグナルのパフォーマンスへの寄与度は、その特性や動きの違いにより時間とともに変化します。バリューシグナルは、「通常の」市場環境ではアクティブリスクの主な要因となり、モメンタムシグナルは(ボラティリティが高まった期間におけるリスクとアルファの両方において)重要な補完的役割を果たします。一方、主に空売り比率の高い発行体のスクリーニングに使われるセンチメント(ESI)シグナルは、バリューやモメンタムと比較して、ポートフォリオ全体に対する寄与度は相対的に小さくなります。これは、社債指数に含まれる銘柄のうち、株式投資家によって複数の銘柄が同時に積極的に空売りされる場合がほとんどないためです。これらの発行体を除外することは、下落リスクを抑える上で効果的な方法です。

ポートフォリオの構築

当社のルールに基づくポートフォリオ構築は、以下の3つの主要原則に基づいています:

  • ポートフォリオの各ファクターに対するエクスポージャーの最適化
  • ベンチマーク指数に対して意図しないリスクの抑制
  • 効率的な取引執行

証券はファクタースコアへのエクスポージャーに基づいて選択され、ポートフォリオは、低取引コストで効率的な執行を確保しつつ、リスク上の制約に対して潜在的なリターンのバランスが取れるように最適化されます。指数構成銘柄のうち流動性の低い債券は、出来高やビッド・オファー・スプレッドなど個別債券レベルの流動性分析に基づき、投資適格銘柄群から除外されます2

投資家の固有の目標と制約はこのプロセスに組み込むことが可能です。これには、投資家が望むサステナビリティに関する任意の除外項目、指標、目標値が含まれます。投資対象となり得るすべての債券は、流動性に関するスクリーニングを実施したうえで、当社独自のポートフォリオ構築・分析フレームワークに投入され、指定された制約条件の下で総合ファクタースコアを最大化するモデルポートフォリオが生成されます。

これらの制約条件により、ポートフォリオは、顧客の投資ガイドラインや参照ベンチマークの様々なエクスポージャーおよびアロケーションとの整合性が確保され、ベンチマークとの構造的な差異ではなく、ファクターに基づいた銘柄選択が超過リターンの主要な原動力となります。

SAFIの主な利点

SAFIが投資家の皆様に提供できるメリットは以下の通りです:

  • 力強いアルファ創出の可能性:実証済みのシグナルをシステマティックに適用することにより、比較的少ないリスク量でベンチマークを安定的かつ大幅に上回る超過リターンが発生し、高いインフォメーションレシオ(IR)の実現につながります。
  • リスク分散:当社のシステマティック債券戦略は、ファンダメンタルズ分析に基本を置く既存のアクティブ債券戦略との相関性が低いことが実証されており、ベンチマーク指数のリスク特性を維持しつつ、魅力的な分散化メリットを提供します。
  • 透明性と規律のあるプロセス:ルールに基づく手法により、幅広い投資対象に対する一貫した銘柄選択の判断を大規模に行うことが可能となります。
  • ヒューマンバイアスの低減:システマティックアプローチはデータに基づくインサイト(洞察)に依拠することにより、客観性と透明性を維持し、投資判断において感情的なバイアスや認識上のバイアスの影響を回避します。
  • サステナビリティ・インテグレーション:サステナビリティを組み込むことにより、投資に関する意思決定がサステナビリティ目標と整合するため、サステナビリティ目標を設定している投資家に魅力的となります。

当社のシステマティック債券戦略は、比較的新しい高度な投資アプローチで、定量的な厳密性を基盤としつつサステナブル投資の慣行も統合することができます。SAFIはアプローチの透明性、投資の分散効果、サステナビリティの統合を併せ持つことで、今日の債券ポートフォリオにおいてアクティブ運用や責任投資を求める投資家に対して魅力的な提案を行います。
 

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