Skip to main content
2026年 年央ETFグローバル市場展望

ファンダメンタルズに従う勇気

ノイズに惑わされず、市場を動かす本質に目を向ける。成長と収益は依然として堅調であり、それを支える環境が変化する中でも、その基盤は揺らいでいない。

年初から数カ月にかけて、投資家はネガティブな見出しを次々と目にすることとなり、不安心理が増幅され、資本市場のボラティリティが断続的に高まる一因となりました。

強気相場の継続を揺るがしかねない、特に異例とも言える事案として、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長による議会証言(FRB本部改修に関する発言)を巡る司法省の刑事調査、トランプ大統領による国家安全保障上の理由を背景としたグリーンランドの取得示唆に対抗し、複数の欧州諸国が象徴的に同島へ部隊を派遣した動き、さらには米国・イスラエル・イランを巻き込む突発的に拡大した紛争などが挙げられます。

しかしながら、リスク資産の複数年にわたる上昇トレンドは維持されています。センセーショナルなニュースが投資家のソーシャルメディアを埋め尽くす中でも、市場は改めて、強気相場の源泉がファンダメンタルズにあることを示しています。

経済は拡大、企業収益も引き続き堅調

米商務省経済分析局(BEA)の速報値によると、第1四半期の米実質GDP成長率は年率換算で2%となりました。これは2025年第4四半期の0.5%から大きく加速しています1。さらに、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowによる最新予測では、第2四半期の成長率は3.7%に達すると見込まれています2

このような底堅い経済成長は、企業業績の顕著な伸びにつながっています。第1四半期の決算シーズン(概ね終了)では、S&P500構成企業の利益成長率は27.7%、売上高成長率は11.3%となりました。これは6四半期連続での二桁増益であり、パンデミックからの回復局面にあった2021年第4四半期以来の高水準です3

S&P500企業の84%が利益で予想を上回り、売上高でも80%が予想超過となりました。いずれも過去5年平均を上回る水準です。AI関連の設備投資(CapEx)拡大を背景に、情報技術セクターが決算シーズンの最大の勝ち組となり、利益成長率50.7%、売上成長率29%を記録しました5。今回の決算の大きなポイントは、AIに対する過度な懸念が急速に後退し、投資家の関心が再びファンダメンタルズに戻ってきている点にあります。

もっとも、こうした業績の強さが一部に集中しているとみるのは適切ではありません。11セクターのうち7セクターが二桁の利益成長を達成し、すべてのセクターで増収となりました

企業収益性はこれまでで最も高い水準にあります。S&P500企業の純利益率は、FactSetがデータの集計を開始した2009年以来の最高水準に達する見込みです7。ここ数四半期にわたる高い生産性の伸びは、企業が限られたリソースでより多くの成果を上げていることを示しています。こうした生産性向上は、年後半におけるFRBの利下げを実現するための重要な要素となる可能性があります。

市場は揺れても崩れず

このような良好な環境にもかかわらず、市場は繰り返し試練にさらされています。過熱感への投資家の警戒が続く中でも、株価収益率(PER)は今年、拡大ではなくむしろ低下しています。

現時点では、市場は中東での戦争とそれに伴う原油価格ショックを吸収しています。金利やコアインフレ指標は4月を通じて予想以上にレンジ内で推移しており、米国の中間選挙やそれに伴う政策不確実性への関心が高まる中でも、大きな変動は見られていません。

さらに、「One, Big, Beautiful Bill Act(トランプ政権の大型減税・財政パッケージ法案)」による景気刺激の余波や、FRBの利下げサイクルも、イラン情勢による潜在的な悪影響の多くを緩和してきました。加えて、大規模なAI関連の設備投資サイクル、比較的緩やかな規制環境、そして底堅い個人消費が、市場を引き続き下支えしています。

また、ワールドカップの開催、米国独立宣言署名250周年の記念行事、さらにスペースX、アンソロピック、オープンAIなど近年で最も注目度の高いIPO案件の相次ぐ登場は、年後半の景気を押し上げる可能性があります。

こうしたリスク資産を支えるファンダメンタルズの強さは、ヘッドライン主導の不安を上回っており、2022年10月に始まった強気相場の継続を可能にしています。

真のリスクは見出しにはない

しかし投資家は、過去40年以上にわたり世界経済と資本市場を形作ってきた環境が、ゆっくりと、しかし構造的に大きく変化している点を見落としている可能性があります。

グローバル化は、経済と投資環境に長期的な影響を残してきました。ベルリンの壁崩壊、ソ連の解体、北米自由貿易協定(NAFTA)の締結、中国の世界貿易機関(WTO)加盟などは、その代表的な出来事です。

自由貿易の拡大、多国籍サプライチェーンの構築、オフショアリング、そして企業効率の向上が、グローバル化の特徴でした。また、米国は主に世界の安全保障を担う存在として機能し、核保有大国間では平和の配当(ピースタイム・ディビデンド)が享受されてきました。グローバル化の支持者は、経済の統合が世界の安定と成長を促進すると考えていました。

投資家にとって、グローバル化は金利の低下、安定的なインフレ環境、企業利益率の上昇、そしてグローバルに統合された産業やテクノロジープラットフォームの台頭をもたらしました。この期間、伝統的な60/40ポートフォリオ、米国株、成長企業、長期債券、クレジット投資はいずれも平均を上回るリターンを生み出しました8

しかし、あらゆるものと同様に、光と影が存在します。数十年にわたるグローバル化の進展の後、その長期的な負の側面が顕在化しはじめ、より分断的で地域志向の強いグローバル経済へのシフトにつながっています。

クリミア併合、ブレグジット、トランプ氏の初当選、米中貿易摩擦、パンデミック、ロシア・ウクライナ戦争、トランプ2.0、解放の日、FRBの独立性を巡る議論、中東での緊張激化、そしてOPECのようなエネルギー同盟内部の亀裂——これらはいずれも、経済安全保障、レジリエンス、地政学的な連携といった新たな優先事項に突き動かされ、再構築されつつある現在のグローバル環境を示す兆候です。

この新たな体制においては、国家安全保障とAI分野での優位性が、各国共通の重要な目標となっています。

ポートフォリオの再構築:効率性からレジリエンスへ

強気相場は今後も続く可能性がありますが、投資ポートフォリオに適切な見直しがなければ、次に訪れる環境変化に十分に備えられない可能性があります。グローバル化の時代に有効だった投資戦略が、現在の環境では同様に機能するとは限りません。

投資家は、より高い金利水準、粘着性のあるインフレ、そして企業利益率の低下といった環境を想定する必要があります。

株式においては、大型グロース株への偏重を見直し、米国小型株、新興国株、防衛関連企業、さらにはAIインフラ構築(設備投資)を牽引する企業への分散投資を検討することが考えられます。

債券市場では、利回り上昇によりインカム収益の魅力は高まっているものの、インフレ環境下では実質リターンに引き続き下押し圧力がかかる可能性があります。金利リスクと信用リスクのバランスを取るうえでは、よりアクティブな運用が有効となり得ます。

また、インフレの持続と高金利環境は、異なる分散効果を持つマルチアセット戦略や、コモディティ、天然資源、インフラ、不動産、金を含む貴金属といった実物資産の役割を一段と高める可能性があります。

複数年にわたる強気相場の基盤自体は依然として揺らいでいません。経済と企業収益が成長を続ける限り、株式は長期的にインフレを上回るパフォーマンスを示すことが期待されます。しかし、グローバル化の「効率性」から脱グローバル化の「レジリエンス」への移行が進む中で、分散投資ポートフォリオには戦略的な見直しが求められます。


主な投資戦略の方向性:

  1. マルチアセット戦略と実物資産を活用し、新たなレジームに対応した分散投資を行う
  2. 世代のAIと経済再編の潮流を見据え、米国大型テック以外にも投資機会を拡大する
  3. 短期デュレーションやマルチセクター・クレジットを活用し、インカムとレジリエンスを重視する

執筆者

Michael W Arone

Michael W Arone

Chief Investment Strategist

その他のインサイト