金融および財政の後押しを背景に経済成長見通しが強さを増すなか、景気循環セクターが主導権を取り戻しつつあります。2025年第4四半期末以降、資本財・サービス、金融、エネルギーがけん引する形で景気循環セクター全体が幅広い上昇を見せています1。
エネルギーセクターは、2025年に数カ月にわたりアンダーパフォームした後、米国によるベネズエラのマドゥロ大統領拘束後、最初の取引日となった1月3日に強気基調への転換(テクニカル的に強気のブレイクアウト)を見せました。より重要なのは、金融や資本財・サービスなど他の景気循環セクターも年初から著しい上昇を示していることです2。金融および資本財・サービスセクターでのこうしたポジティブな動きは、12月の力強いパフォーマンスを土台にしており、両セクターとも同月は市場全体をアウトパフォームしました3。
金融および資本財・サービスセクターは2025年第3四半期にS&P 500指数をアンダーパフォームしましたが、足元の力強いパフォーマンスにより反転しています4。業界レベルでのポジティブな動向が両セクターの上昇の主因となっています。
金融セクターでは、銀行および資本市場業界が12月の同セクターの強気基調への転換と、2026年のポジティブな見通しの持続に大きく寄与しています。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ(昨年9月以降の累計75bpの利下げの遅延効果と、市場が予想する今年2回の追加利下げの双方)は、企業向け融資と資本市場の活動を押し上げる可能性があります。その結果としてイールドカーブがスティープ化し、金融セクター全体でより広範な収益性改善につながる可能性があります。
規制緩和に関しては、銀行規制・監督当局は、強化補完的レバレッジ比率(eSLR)やストレステストのモデルへの修正など、資本要件と監督基準の緩和につながる規制変更の最終決定、または提案をいくつか発表しました。さらに、バーゼルⅢ最終規制(Barsel III Endgame)が銀行の資本にとって中立的な内容となったことや、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)の追加資本要件の引き下げは、銀行の資本効率をさらに改善し、資本コストを低下させ、自己資本利益率(ROE)を押し上げる可能性があります。
さらに、 金融セクター内のM&AおよびIPO活動は、反トラスト法とマクロ経済面の環境改善に後押しされ、サイクルの平均を下回る現在の活動レベルを超えて、引き続き加速する可能性があり、投資銀行収益の力強い伸びにつながると見込まれます5。
デジタル資産市場の構造や資産のトークン化に関する規制面の進展も、資本市場におけるイノベーションを刺激し、新たな機会を生み出すと期待できます。
資本財・サービスセクターは第4四半期末に、航空宇宙・防衛産業のパフォーマンス改善に支えられ、アンダーパフォーマンスの基調から反転しました(図表2)。ベネズエラとウクライナ、南シナ海まで世界の地政学的情勢が依然として不安定ななかで、同セクターは世界的な防衛支出の増加と、電力需要の拡大や電力確保競争の激化から恩恵を受けています。
米国は単独で、国防関連支出・総投資(設備投資)に史上最高となる1.16兆ドルを割り当てており、地政学的環境を踏まえると、この数字は着実に増加していく可能性が高いと思われます6。防衛産業の利益は2025年第3四半期に81.5%増加した後、アナリスト予想では第4四半期も144%急増し、2026年は51%増と予想されています7。
防衛支出に加え、資本財・サービスセクターの47%強を占める機械・電機産業は、現在の人工知能(AI)設備投資サイクルの重要な構成要素である電力インフラへの需要と投資の拡大から恩恵を受ける立場にあります。アナリストは2026年の機械産業の利益を10.5%増と予想している一方、電機産業は20%の増益が見込まれています8。
米国がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した後、エネルギーセクターは、テクニカル的に、過去数カ月の三角保ち合いパターンから上抜けを果たしました(図表3)。その結果、S&P 500エネルギー指数は2024年11月以来の日中高値を記録しました9。
とは言え、政治情勢は流動的なため、エネルギーセクターのインプライドボラティリティの高まりが示すように、値動きは引き続き不安定となりそうです10。石油生産・精製大手およびエネルギー機器・サービスプロバイダが、ベネズエラでの操業体制の改善や資産回収の見通しから恩恵を受ける可能性があるため、現在はエネルギーセクターにとっての短期的なカタリストが作用しています。
しかし、世界的な原油の供給過剰の構図は継続しており、需要が回復し始めて原油価格が反発したとしても、長期的にはベネズエラ産原油の生産増加が見込まれることから価格上昇の余地は限られ、エネルギーセクターの中期的な見通しは依然として制約されています。こうした動向は、今年の原油先物カーブがコンタンゴ(順ざや)の形状となっていることに反映されています11。
ベネズエラは世界最大の確認済み原油埋蔵量を有していますが、長年にわたる過小投資と生産・輸送インフラの劣化により、生産量を十分な水準まで回復させるためには多大な資本と技術支援が必要になると思われます。同国からの供給が徐々に増加した場合は、原油価格とセクターの利益に対して下押し圧力がかかる可能性があります。
ベネズエラ情勢をめぐる不確実性の中で、投資インプリケーションは明らかです。それは、景気循環セクターに投資機会が浮上しているということです。エネルギーセクターの力強くも不安定な上昇基調への転換を受け、景気循環セクター全体が主導権を握りつつあることに注目が高まっていますが、特に金融および資本財・サービスセクターは、力強い利益見通し、金融政策の緩和、拡張的な財政刺激策を背景に上昇余地を持つ好位置にあると思われます。