2026年に入り、投資家を取り巻く環境は大きく変化しています。インフレ懸念、地政学リスク、財政赤字問題など、市場を揺るがす要因は少なくありません。こうした環境下で注目されている資産の一つが金です。金は実物資産として長い歴史を持ち、市場の不確実性が高まる局面では投資家の関心を集める傾向があります。一方、金には配当や利息がありません。保有しているだけでは定期的な収入を生み出さないことから、長期保有を考える投資家の中には物足りなさを感じる人もいるでしょう。そこで注目したいのが、金投資と米国高配当株を組み合わせる考え方です。
金は株式や債券とは異なる値動きを示す傾向があり、ポートフォリオの分散先として活用されてきました。近年は世界各国の中央銀行による金購入の増加や、地政学リスクへの備えなどを背景に、金の戦略的な価値に改めて注目が集まっています。もっとも、多くの投資家にとって金は、「資産を増やすための投資先」というより、「資産を守るための投資先」として位置づけられることが少なくありません。
一方で、資産形成には継続的なキャッシュフローも重要です。米国高配当株には、成熟したビジネスモデルを持ち、株主還元を積極的に行う企業が多く含まれています。高配当株の魅力は値上がり益だけではありません。定期的な配当収入が期待できるため、将来の資産成長を待つだけでなく、投資期間中も収入を得られる可能性があります。また、高配当企業は一般的に収益基盤が安定している企業が多く、相場環境によっては市場全体より底堅い値動きを示すことがあります。
S&P500高配当指数(米国高配当株)は、S&P500指数の採用銘柄のうち、原則として12カ月予想をベースにした配当利回り上位80銘柄に均等に配分した指数です。配当利回りはS&P500指数全体の配当利回りを上回る4%超え水準で安定的に推移しています。安定的で定期的なキャッシュフローが期待できます。また、情報技術など景気に敏感なセクターの比率が大きいS&P500指数に対し、S&P500高配当株指数は不動産や生活必需品などディフェンシブに分類されるセクターの比率が大きいことから、金と同様、より守りに近い投資を行うことも可能です。
金と米国高配当株は、一見すると共通点が少ない資産に見えます。しかし投資家の目的という観点から見ると、両者は互いを補完する関係にあります。金は分散効果や価値保存機能への期待。米国高配当株は配当収入と企業成長への期待。つまり、「金が守りを担う」、「高配当株が収入を担う」という役割分担が可能になります。
さらに、この組み合わせの魅力は収入だけではありません。金には、「中央銀行需要の拡大」、「インフレへの備え」、「地政学リスクの高まり」といった長期的な成長ストーリーがあります。一方、米国高配当株には、「米国企業の利益成長」、「配当の増加」、「株主還元の継続」という成長ストーリーがあります。投資家は両方を保有することで、「金の成長ストーリー」と「米国企業の成長ストーリー」という異なる源泉のリターンを取り込むことが期待できます。
2025年以降について日本の投資家がドル買いに伴う為替リスクを取ったうえで、S&P500に投資した場合、S&P500と金に均等配分で投資した場合、S&P500高配当株と金に均等配分で投資し場合のパフォーマンスを比較すると、均等配分した場合は米株投資のみよりも良好なパフォーマンスとなりました。またS&P500高配当+金はS&P500+金とそん色ないパフォーマンスを上げています。
図表2:米株のみと米株と金の均等配分、米高配当と金の均等配分のパフォーマンス
投資の世界に万能な資産は存在しません。金には利息や配当がなく、米国高配当株には株式市場の変動リスクがあります。しかし両者を組み合わせることで、「分散効果」、「配当収入」、「長期的な成長機会」を一つのポートフォリオの中で追求することが可能になります。
金投資で守る。米国高配当株で受け取る。そして両者の成長を取り込む。
不確実性が高まる時代だからこそ、そんなバランス型の投資アプローチを検討してみてもよいのではないでしょうか。