グローバル市場展望アップデート

堅調な回復の中に一抹の不安

昨年12月に当社が「グローバル市場展望(GMO)」を発行して以降、ワクチン接種の進展と強力な金融・財政政策の下支えによって景気回復のペースは加速している。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に関連する問題は依然として多くの地域で深刻な影響を及ぼしているが、大きな打撃を受けた新興国でも状況は改善している。米国経済の急回復に伴い、欧州の経済成長も加速が見込まれ、新興国もまもなく追随するだろう。市場を牽引する先導役が、米国からその他の地域に速やかに移行するかもしれない。


Lori Heinel, CFA

Gloabl Chief Investment Officer

Gaurav Mallik

Chief Portfolio Strategist

Simona M Mocuta

Senior Economist

Louis Basque, CFA

Portfolio Strategist

Thomas Coleman

Global Head of Fixed Income Investment

Altaf Kassam, CFA

EMEA Head of Investment Strategy & Research

Desmond Lawrence

Senior Investment Strategist


経済成長が数十年ぶりの水準に近づき、好調な企業業績が発表され、ボラティリティの高まる懸念が後退するなど、前向きな兆候で満ちている。同時に、投入コストの上昇と旺盛な需要がインフレ上昇を後押ししており、インフレ率は投資家が見慣れた水準を上回って推移する可能性がある。当社独自の市場レジーム指数(MRI)は、市場が楽観と幾分かの陶酔感(ユーフォリア)の間の微妙な境界線上を進んでいることを示唆しているが、これは慢心ともいえる警戒感の欠如の可能性もある。多数の良好な兆しに安心しきった市場は、今後数カ月に発生するであろう避けられないショック(インフレ関連など)にどう反応するだろうか?

今回の「2021年中間期グローバル市場展望(GMO)」では、マクロ経済見通しと現在の戦術的ポジショニングについて再考し更新する。また、債券と株式の見通しから浮上した一連の主要テーマを取り上げ、差し迫ったリスクを特定する。

マクロ経済見通し

  •  繰延需要と緩和マネーが2021年の目覚ましい景気回復に拍車を掛けている。製造業からサービス業への大規模な需要のローテーションが、2022年も広範囲にわたる継続的な回復を牽引しよう。
  •  欧州と新興国は、米国に続き堅調な経済成長のトレンドを辿っている。米国が成長モメンタムのピークを突き進む中、欧州と新興国の成長は加速している。
  • 現在のインフレ率の急上昇は今年下半期には鈍化する公算が大きい。しかし、今後2年間は(Covid-19前と比べて)インフレ率が高めに推移することが予想される。
  • 投資家が成長モメンタムのピークと金融緩和のピークが過ぎたとみなすことで、市場の変動はより激しくなる可能性がある

世界経済はCovid-19に伴う難局にもかかわらず、年初から大きく前進している。特に先進国では、ワクチン接種率の急上昇とともにモメンタムが第2四半期に著しく加速した。新興国は、現時点ではワクチン接種の面で後れを取っているものの、大幅な改善が見通せる段階まで既に達しており、今後数カ月でさらなる改善が見込まれる。

2021年の世界の経済成長率は、前年の発射台の低さと経済活動が驚異的に活発化したことを主な要因に数十年ぶりの高水準を付け、2022年も際立ったパフォーマンスが続くと予想される。鉱工業セクターは既に操業が完全に本格化し、世界の貿易数量と鉱工業生産は過去最高水準にある。その結果、グローバルなサプライチェーンの負担が如実になっており、多くの製造業企業に影響を与えている。IHSマークイットによれば、世界の製造業の設備稼働率は2004年のピークを超えた。また、現在の受注残は2004年以降で最も高い水準だ。先進国の大部分では(および新興国の一部でも)家計の貯蓄が増加しており、このペントアップ需要(これまで控えられていた需要の反動)はわずか数カ月では吸収できないことを示唆している。このことは、当社が2022年の成長率について強気な見方をとる理由の一つである。今のところ、ペントアップ需要が解放される対象は有形の商品に大きく偏っている。2021年下半期から2022年にかけてはサービスへの需要の大規模な広がりが定着し、より完全で広範囲にわたる継続的な景気回復が下支えされるだろう。

こうしたことを背景に、コモディティ全般の価格が急騰していることに意外感はない。投入コストの上昇と旺盛な需要は、世界金融危機後に比べて価格設定力の大幅な強化に寄与している。重要なことは、健全な家計の状況が米国で最も顕著に表れている可能性があるとはいえ、一国に限られた話ではない点だ。

当社の見方では、欧州でも同様に素晴らしい進展が見られることが他社予想と大きな違いになっており、ワクチン接種の急速な普及を踏まえ、第2四半期が力強い回復の幕開けになると予想する。2020年末以降、当社予想は欧州の経済成長率に対するコンセンサス予想より強気サイドにあるが、発表されるデータは引き続き当社の前向きな見方を裏付けている。中国は今年も世界経済の成長に対し引き続き安定的にプラス寄与すると推察されるが、他の国・地域のパフォーマンスも改善しているため、相対的な寄与度は低下するだろう。また、中国がCovid-19前の債務削減の取り組みに再び重点を置くようになれば、国内政策による下支えは他のいずれの国よりも早く後退する公算が大きい。

需要の裾野拡大から示唆されることとして、各国中銀が現在予想しているほどインフレ圧力は一時的ではない可能性が挙げられる。確かに、現在目にしているインフレ急上昇の大部分は、その性質上、一時的で終わりそうだ。しかし、下半期のインフレ率はピークから鈍化する見込みではあるものの、今後2年ほどのインフレ率のニューノーマルは、Covid-19前に優勢だった水準を上回るのではないかと当社は考えている。

各国中銀は異例の緩和政策を継続しているが、年末が近づくにつれて「緩和のピーク」時期は過去のものとなるだろう。同じことは財政政策にも言える。繰延需要は依然として強力な支えとなっており、政策の正常化ペースも極めて緩慢となる見込みだが、投資家がモメンタムのピークが過ぎたとみなすことで、市場に一定のボラティリティが生じる可能性がある。