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アクティブ運用ファンドをポートフォリオに組み込む方法を再考する


伊藤 拓之

アセット・アロケーション/為替運用グループ

クオンツ・アナリスト


アクティブとパッシブ間での配分は、二者択一の決定ではありません—それらは共存できます。アクティブな割り当ては既存のパッシブな割り当てを補完することができ、投資環境の変化に応じてそれらの相対的な比率が変化する可能性があります。今回はアクティブ運用ファンドをポートフォリオに組み入れる方法を考えてみたいと思います。

1. コア・サテライト投資

過去10年間で、機関投資家向け株式ポートフォリオの構成に変化が見られました。図表1左にありますような株式スタイルボックスへの配分を行うというアプローチに始まり、図表1中央にありますようなインデックス運用を中心に据えつつもアクティブ運用に大きく依存するアプローチとなりました。現在では、図表1右のような高トラッキングエラーのサテライト部分と組み合わせたパッシブコアへの大規模な配分=「コア・サテライト投資」が主流となってきています。

この「コア・サテライト投資」の枠組みにおいて、インデックス運用に、エンハンスト運用やスマートベータ戦略を付け加えることは、特定のリスクファクターの強化等を通じたポートフォリオ全体のリスクリターンプロファイル改善を企図しています。次に、よりアクティブ度合いの高い運用戦略を付け加えていくのですが、ここでは、「投資家はさまざまなアクティブ株式戦略にどのように配分する必要があるのか」という問題が出てきます。

2. アクティブ/パッシブかどうかではなく、いつアクティブになるかに焦点を当てる

アクティブ運用にとって投資環境が好ましい場合、または異常な課題に直面している資産クラスがある場合に、アクティブ運用ファンドに積極的に投資することが考えられます。2021年10月発行のレポート「アクティブ運用ファンドが有利な投資環境を探る 」では(1)ボラティリティが極端に高くも低くもない局面、(2)資産間相関が低い局面、(3)銘柄間リターン格差が高い局面が、アクティブ運用者が他者と差別化するのに好ましい局面であると分析しました。そのような局面で、アクティブ運用ファンドに積極的に投資することが考えられます。

また独自の課題に直面している資産クラスにおいて、積極的にアクティブ運用ファンドに投資する、という考え方もあります。具体的には(1)金利の大きな変化がある場合に、債券投資において積極的にアクティブ運用を採用する、(2)過去の高い評価を考慮しつつ、リスク管理/ヘッジ能力を備えたアクティブマネージャーを活用する、(3)通貨のボラティリティが高い局面では通貨リスクをヘッジする能力を持つアクティブマネージャーを利用するなどが挙げられます。

3. アクティブ運用ファンドをポートフォリオに組み込む場合の注意点

図表2では、663のアクティブファンドのデータに基づいたポートフォリオのアクティブリスクの分布が示されています。「1ファンド」には、663の各アクティブファンドのアクティブリスクの分布が、そして、「4ファンド」および「10ファンド」には、それらのアクティブファンドがランダムに組み合わされた10,000個のポートフォリオのアクティブリスクの分布が示されています。ポートフォリオに組み入れるファンド数を増やすにつれて、アクティブリスクは大幅に減少し、アクティブリスクが2%を超える組み合わせを作成することは非常に困難になります。投資家にとって残念なことに、このアクティブリスクの低下は運用報酬の低下を伴わないため、過度の分散は、運用報酬支払いに対する収益性の低下につながることを意味します。

図表3は、アクティブシェアと運用報酬率(モーニングスターより取得)の関係を示しています。アクティブシェアとは、ポートフォリオの内容をベンチマークとしているインデックスからどの程度アクティブに変化させているかを示す指標です。黄土色の点は、各ファンドの推定アクティブシェアと運用報酬を関連付けています。トレンドライン(Linear)は、アクティブシェアと運用報酬の間に正の関係を示しており、投資家が追加のリスクに対してより多く支払う意思があることを確認できます。緑色の点は、先述の10ファンドを合成したポートフォリオについて、推定アクティブシェアと運用報酬を関連付けています。合成したポートフォリオの場合、トレンドラインは左上方向に移動します。分散を進めること、ここでは組み入れファンドの数を増やすことは、運用報酬は一定のままで、アクティブシェアが低下する、という結果をもたらします。

超過収益のかなりの部分は、ファクターエクスポージャーから生じると言われています。Mok, William, Jennifer Bender, and P. Brett Hammond 1 によると、アクティブリターンへの寄与度はマネージャースキルが20%−50%、共通のファクターからの寄与度が50%−80%と分析されています。これらの超過収益を獲得するために、効率的で比較的低コストのファクターベースの戦略を利用できます。

2021年9月発行のレポート「アクティブ運用からパッシブ運用への移行の背景を探る」の分析では、アクティブ運用ファンドがベンチマークを継続的に上回るのは困難な場合が多く、投資家は運用コストの削減に加えて運用報酬控除後のパフォーマンスを考慮したうえでパッシブ運用を選好していることからアクティブ投資の死と言われることもあります。しかし、これは非常に誇張されており、「アクティブ対パッシブ」は二者択一の決定ではないので、アクティブになる方法や時期を考えて、アクティブ運用ファンドをポートフォリオに組み込むことを提案したいと思います。ただし、ファクターエクスポージャーを注意深く見ながら、「過度の分散」に注意してください。


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