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新興国株式投資の振り返り



清水 英彦

運⽤部

ポートフォリオ・ストラテジスト


新興国株式は長期的に先進国株式より高いリターンを実現してきた一方、特にリーマンショック後は金融緩和等を背景に先進国株式が優位な展開が続いてきました。足元では世界的に金融引締めが進む中、金融緩和に支えられた相場局面の転換も意識されています。このような相場の転換期において本稿では新興国株式投資について振り返ってみたいと思います。

高い経済成長に裏付けられた高い株式リターンと高いリスクは新興国株式の大きな特徴と言えるでしょう。図表1、2から2000年以降、一貫して新興国は先進国より高い経済成長を遂げ、新興国株式は先進国株式を上回るパフォーマンスを上げてきたことが分かります。図表3が示すように一時的に先進国優位な期間があるものの、長期的には新興国の高い経済成長をその企業が享受するとの考え方に立てば、株式リターンを効率的に獲得できる最小分散戦略は依然として有効な投資手法の一つと言えそうです。図表4のように新興国の最小分散(ボラティリティ)戦略はMSCI World並みのリスクでMSCI EM以上のリターンを上げており、長期的に非常に投資効率性が高い結果となっています。

 
一方で近年も新興国は一貫して先進国より高い経済成長を遂げてきたのに対して、図表5のように株式リターンは先進国を下回る結果となっています。この背景として先進国を中心とした大規模な金融緩和が挙げられますが、新興国株式市場の構造的な要因にも注意を払う必要があります。図表6は新興国と先進国のセクター配分を示したものですが、新興国は依然としてエネルギーや素材、金融などのいわゆる景気敏感セクターの比率が相対的に高く、このような構造的な要因が新興国株式のアンダーパフォームにつながっている可能性があります。また今後、コロナショックによって脆弱性が明らかになったグローバルサプライチェーンの再構築や脱炭素社会への移行など、新興国にとって長期的な逆風となりそうなテーマも浮上しています。これらを考慮すると、新興国市場においてより成長性の高い企業に投資をする成長株投資も有効な選択肢の一つと言えそうです。図表7はステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)の新興国成長株式戦略のパフォーマンスを示したもので、期間が5年程度ですが、新興国株のパフォーマンスが冴えなかった期間においてベンチマークを大きく上回る運用実績を上げています。

新興国株式が長期的にはその高い経済成長を享受し、先進国を上回るパフォーマンスを上げると考える場合は投資効率性が高い最小分散戦略、新興国株式の景気敏感性や脱炭素などの影響を懸念する場合には成長株投資がそれぞれ有効な投資戦略の一つとして検討できそうです。