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日本、欧州、米国の景気回復の現状と見通し



吉橋 諒佑

運⽤部

ポートフォリオ・ストラテジスト


先日発行した資産運用フォーカスNo.50「2022年グローバル経済市場見通し」で示した通り、当社では2022年はこれまで景気回復を牽引してきた米国と出遅れていた地域の間の成長率のギャップ縮小を見込んでいます。本稿では回復に先行している米国と、景気回復が遅れた欧州、及び日本の各地域について景気回復の現状を分析し、来年の見通しについて検討します。

始めに各地域の景気回復の現状を確認します。新型ウイルスの感染拡大が始まった2020年初頭から現在までの景気回復のペースには、地域間でばらつきが見られました。下図は感染拡大が始まる前の2019年末時点を基準とした各地域の実質GDPと、ワクチン接種の普及率の推移です。ワクチン接種の普及がいち早く進んだ米国では感染拡大前の水準を上回って景気が回復し、また欧州では接種率の上昇と行動制限の解除が進んだ夏場にかけて大きく景気が改善しました。しかし日本については、ワクチン接種の普及に時間がかかり、加えて夏場にかけて新型ウイルスの感染が大きく拡大したために行動制限の措置が継続したことで、21年度9月末の時点では景気回復度合いで欧米に比較して劣後する結果となりました。

こうした感染拡大状況と行動制限による経済への影響は、各国の実質GDP変化率の寄与度の内訳をみると、消費の部分に顕著に表れていることがわかります。下図は米国、欧州、日本の各地域について、2019年第4四半期から2021年第3四半期までの実質GDPの変化率を項目ごとの寄与度に分解したグラフです。各地域を比較すると、今年グローバル景気回復を牽引した米国では民間消費が大きく拡大した一方で、他の地域では依然として消費の水準がコロナ前を下回っていることがわかります。来年は経済活動の正常化によって、今年の米国と同様に、日本や欧州でも消費を中心とした景気の改善が進むことが期待されます。

また堅調な需要面の指標からも欧州、日本の各地域で消費の拡大が進むと見込まれます。下図は欧州と日本の家計貯蓄率の推移です。どちらの地域でも、20年の半ばに給付金等の経済対策と行動制限によって消費が控えられる中で貯蓄率が大きく上昇しており、その後も現在に至るまで過去と比較して高い水準で推移しています。こうした高い購買力を背景とした消費の大幅な拡大は今年の米国でも見られましたが、今後、日本や欧州でも消費を促進する材料になると考えます。

足元では新型ウイルスの感染再拡大によって、欧州を中心に行動制限を再強化する動きが見られており、感染拡大状況は引き続きリスク要因として注意が必要です。しかし来年度はワクチンや治療薬といった感染の影響を抑制する手段の開発により経済活動の正常化が進展する中で、日本や欧州では、上述の通り消費の拡大を中心に景気改善が進むと予想します。