インサイト


インサイト   •   投資

アクティブ運用ファンドが有利な投資環境を探る


伊藤 拓之

アセット・アロケーション/為替運用グループ
クオンツ・アナリスト

 


資産運用フォーカス No.44「アクティブ運用からパッシブ運用への移行の背景を探る」の分析では、アクティブ運用ファンドがベンチマークを継続的に上回るのは困難な場合が多く、かつ低コストファンド群のパフォーマンスが良好なことからも、投資家は運用コストの削減に加えて運用報酬控除後のパフォーマンスを考慮したうえでパッシブ運用を選好していることが分かりました。今回は、アクティブ運用の特徴である他者との差別化をするためにどのような投資環境が有利なのか、(1) ボラティリティ、( 2) 資産間相関、(3) 銘柄間リターン格差の観点から分析したいと思います。

まず過去20 年間における株式市場の運用者のパフォーマンスとして超過リターンの中央値(図表1)を見てみると、2000年代前半に比べて、各市場ともに水準が切り下がっていることが分かります。特に米国大型株では2010年以降マイナスの超過リターンとなっているので、米国の株式運用者は良好なパフォーマンスをあげるのに苦慮していました。

equity-largecap-performance

(1)ボラティリティが極端に高くも低くもない局面は、アクティブ運用者が他者と差別化するのに好ましいと考えられています。1990年以降の米国株式(S&P500) とボラティリティ・インデックス(VIX )の推移(図表2)を見てみると、株式の上昇局面ではボラティリティは低下する傾向にあり、一方株式の急落局面ではボラティリティが急上昇する関係にあることが分かります。2020年第一四半期のコロナ危機は2008年後半のリーマンショックの水準までボラティリティが急激に上昇しましたが、各国の大規模な金融政策や財政政策によりボラティリティは急激に下がり株式市場は続伸を続けています。現在のボラティリティ環境はアクティブ運用者が他者と差別化するのに好ましくないと考えられます。

sp500-vix

(2)資産間相関が低い局面では資産配分を通して差別化を促進することができます。一方資産間相関が高い局面では各資産のリターンが似かよりがちになり差別化が難しくなります。これは基本ポートフォリオと実際の資産構成配分の差による効果として「資産配分効果」として知られています。株式/債券、株式/コモディティ、債券/コモディティそれぞれの1年ローリング相関係数の平均値の推移( 図表3)を見ると、2020年3月のコロナ危機で急上昇しその後も高水準を維持しています。資産間相関の観点からは、資産配分におけるアクティブ運用は困難になっていると言うことができます。

historical-correlation

(3)銘柄間リターン格差が高い局面は、アクティブ運用者に他者と差別化する絶好の機会を提供します。一方、銘柄間リターン格差が低い局面では、どの銘柄を選んでもリターン格差がつきにくく差別化が困難となります。これは各銘柄の実績のリターンと市場平均リターンの差として「銘柄選択効果」として知られています。図表4の先進国各市場の1年ローリング銘柄間リターン格差(MSCIの各市場ユニバースにおいて、四半期ごとの年率リターンの銘柄間分散(cross-sectional dispersion))を見ると、米国・欧州では2020年3月のコロナ危機によって過去最高水準の銘柄間リターン格差を記録し、その後低下に転じています。日本、英国でも高い水準の銘柄間リターン格差を維持しています。このように先進国各市場では銘柄間リターン格差は高い水準を維持しており、アクティブ運用者は他者との差別化をしやすい環境にあると言えます。

stock-return-divergence

これまでに分析してきた3つの視点のうち、銘柄間リターン格差が最重要であると我々は考えています。図表5は銘柄間リターン格差に基づいた4つの期間について、米国大型コア株式のRussell1000、S&P 500それぞれをベンチマークとする運用者の平均超過リターンを測定したものです。両ベンチマークにおいて銘柄間リターン格差が高い局面(第1分位) ではアクティブ運用ファンドの超過リターンが高い傾向にあることが分かります。

active-fund-outperformance

このようにアクティブ運用者は近年ボラティリティ、資産間相関の観点からは他者と差別化するのは難しくなっています。しかし、銘柄間リターン格差はなお高い水準にあり他の運用者と差別化するのに大いに資すると考えられます。また銘柄間リターン格差が高い局面ではアクティブ運用ファンドが超過リターンを獲得しやすいことが分かりました。

Share