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中国の経済再開は、金市場にとって何を意味するのか

中国は長期にわたって、金の主要購入国の一角を占めています。2022年12月初旬、中国は突如ゼロコロナ政策を解除し、経済活動を再開しました。これは金市場にとって何を意味するのでしょうか?そして、この経済再開で中国の金需要は増加したのでしょうか?

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APAC Gold Strategist & SPDR Gold Sales Specialist - Hong Kong

中国は長期にわたり、金の主要購入国の一角を占めています。インドを抜いて世界最大の金の消費国となった2013年から、2019年までに中国が世界の年間宝飾品需要と金地金・コイン需要に占める割合はそれぞれ平均31%、24%でした1。しかし、ゼロコロナ政策と厳しいロックダウンの影響が広がると、その割合はそれぞれ29%、21%に低下しました2。2022年12月初旬、中国は突如ゼロコロナ政策を解除し、経済活動を再開しました。これは、金市場にとって何を意味するのでしょうか?そして、この経済再開で中国の金需要は増加したのでしょうか?

図表1:中国の卸売金需要に、ここ数ヵ月で回復の兆候

Metric Tons

出所:上海黄金交易所(SGE)、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、2023年3月31日時点。過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスとして信頼できる指標にはなり得ません。

中国のゼロコロナ政策撤廃からまだ4ヵ月しか経っていませんが、直近の中国の金需要トレンドには明るい兆しが見受けられます。中国の金需要の強さを判断するには、上海黄金交易所(SGE)からの金現物の引き出し状況を見るとよいでしょう。SGEから金の現物を引き出せるのは、金融機関、金取引業者、宝飾品メーカーなど、金現物の主要な買い手で構成されるSGEのメンバーに限られるため、SGEからの金の引き出しは中国の卸売金需要を見極める重要な指標となります。最新の公表データによると、2023年3月のSGEメンバーによる金の引き出しは157トンと3、2月に続き需要は旺盛でした。3月の引き出し量は昨年9月以来の高水準であり、これは中国の経済再開が国内の金需要を押し上げたことを示す、初期の兆候です。

中国は経済再開以降、中央銀行レベルでの金の購入についても公表を再開しています。中国人民銀行(PBOC)によると、金の保有量は11月に32トン増と、2019年9月以来の顕著な伸びとなりました。PBOCによると、さらに12月から3月までに、30トン、15トン、25トン、18トンと毎月追加購入しています。その結果、2022年11月から2023年3月までの購入量は合計120トンとなり、金準備は1,948トンから2,068トンに増加しました。

わずか5ヵ月間で、6.2%の増加です。ちなみに、中国政府は2019年に合計93トンの金を購入した後、金の購入に関する報告を2019年第4四半期に停止しました。中国が最近になって金の購入を積極化している背景には、主に地政学的緊張の高まりがあるとみられます。金準備の増加により、国内経済と現地通貨に対する国際的安定性ならびに信認が向上し、国際取引の決済に、人民元の国際銀行間決済システム(CIPS)が使用される可能性が高まるでしょう。

図表2:中国は5ヵ月連続で金を購入したと報告

Months of Gold Purchase

出所:ブルームバーグ ファイナンスL.P.,ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、2023年3月31日時点。過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスとして信頼できる指標にはなり得ません。

ワールド ゴールド カウンシルの2022年中央銀行金準備調査によると、インフレや地政学的不安などの経済的な懸念は、新興国や発展途上国からの需要増大に寄与した可能性があり、現在、中央銀行は金準備の運用判断に際して、主にこれらの要因を考慮しています。

中国は、2022年の成長率が3%と1970年代半ば以降で最低クラスの伸びとなった後、3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で消費者主導の景気回復計画を発表し、2023年の年間成長率目標を5%に設定しました。今後、中国政府は消費支出拡大を主な優先課題とし、そのために都市部における雇用創出の目標を1,200万人とするなど、家計所得の増加を目指すでしょう。国際通貨基金(IMF)は2023年の中国経済について、ゼロコロナ政策解除後に家計支出と製造業の活動が持ち直す中、成長率は5.2%に回復する可能性が高いと予想しています4

コロナ禍後、政府が消費者主導の経済成長を支える政策を打ち出しているため、中国は、引き続き金の消費にとって世界で最も重要な市場の1つとなるでしょう。中国の景気悪化を受け、また2020年以降の相対的に軟調な中国株式市場に対するヘッジ目的で、金は目先、中国の消費者の間で資産の形成・保全手段として人気を集める可能性があると当社はみています。市場は、ロックダウンならびに一部セクターに対する中国政府の取り締まり策によって悪影響を受けています。

ゼロコロナ政策の解除後に中国で投資と消費需要の拡大が予想されることは、世界の投資家と中央銀行が市場の混乱や地政学的リスクの管理にますます迫られるとともに、2023年およびそれ以降、金市場にとってプラス材料になるでしょう。

図表3:中国は2023年の成長率目標を5%に設定し、国内経済の回復を目指す

Revive Chinese Economy

出所:ワールドゴールドカウンシル、IMF、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、2023年3月31日時点。過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスとして信頼できる指標にはなり得ません。

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