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不測の事態を金投資によって乗り切る

2020年は世界中の資産市場に劇的な変化が引き起こされました。年初に株式市場と債券市場が大打撃を受ける中、金は分散、リスク調整後リターン、流動性を提供したほか、ポートフォリオのドローダウンの低減に寄与し得る有効な投資対象として輝きを放ち、多くの投資家にとって重要かつタイムリーな役割を果たしました。こうした市場の混乱期に恩恵をもたらしてきた過去の実績は、安全な逃避先資産としての金のレピュテーションにつながっています1


ボラティリティ上昇を抑制するための資産

過去の実績から見て、金は株式や債券といった他の多くの伝統的資産クラスと低水準または負の相関関係を有しており、優れた分散投資のメリットをポートフォリオにもたらす場合があります。例えば、2020年にも見られたように、マクロ経済に起因してボラティリティが急上昇している状況下では、金は平均して、市場の混乱を乗り切るために投資家がしばしば利用する他の多くのオルタナティブ資産やコモディティをアウトパフォームしてきました2

市場が混乱した2020年の金のパフォーマンスを見れば、ボラティリティやリスクが上昇した市場を乗り切るために、金が果たし得る役割についての理解が深まるでしょう。

Source: Bloomberg Finance L.P., and State Street Global Advisors, as of September 30, 2020. Gold is represented by LBMA Gold Price PM (USD/oz).

*August 15, 1971 – President Nixon removed gold/US dollar from Bretton Woods system and the price of gold was then determined by open-market forces rather than by being linked to the US dollar. **Bloomberg Barclays US Agg TR Index was launched on January 30, 1976. Past performance is not a guarantee of future results. Performance above does not reflect charges and expenses associated with the fund or brokerage commissions associated with buying and selling exchange traded funds. Performance above is not meant to represent the performance of any investment product.

市場のボラティリティが極端に高まった時でも、金の取引市場にはかなりの厚みと流動性があり、金の日次平均売買金額は1,890億米ドルと、S&P500指数の2,120億米ドルと遜色はありません3。金投資家との意見交換や過去の実績が示すように、市場の混乱期に投資家が追加証拠金の差し入れに対応する、または下落している他の証券の売却を回避するための流動性(すなわち現金)を確保する目的で、金に依存する傾向があることが明らかになっています。こうした投資家の動きは金価格の動向に表れており、金は当初は株式と連動して下落するものの、その後に流動性需要が落ち着くと回復し、結果的に元の価格を上回ることが往々にしてあります。

Source: Bloomberg Finance L.P. and State Street Global Advisors, date as of September 30, 2020.

金の流動性に関する洞察、新型コロナウイルス感染症に関連した2020年の市場ボラティリティの期間中における金のパフォーマンスについては、当社の「Gold Midyear Outlook(金の年央見通し)」を参照してください。

現在の金投資のメリットについて理解する

金は単なる危機時の戦術的資産ではありません。2020年の力強いパフォーマンスにもかかわらず、投資家は戦略的で長期的な視点に基づいた、金投資独自の多様な潜在的メリットをしばしば誤解しています。

最近、顧客から寄せられる質問を列挙します。 

金は市場の下落局面における短期的で戦術的なソリューションとしてのみ有効ですか?

市場の危機的な下落局面における安全な避難先としての魅力に加えて、金は投資家にとって、長期的で戦略的な役割を果たすとともに、さまざまなタイプの予想外のリスクや市場イベントに対する多面的で強力なヘッジ機能をポートフォリオに提供します。

金特有のリスク・リターン特性に多様な需要の源泉も重なって、金は景気サイクルのさまざまな局面において、ドローダウンの低減や資産保全に寄与する可能性があります。 

さらに、金は古来より交換手段や富の象徴として活用されてきた有形資産であり、株式や債券のようなカウンターパーティ・リスクもなく、歴史的に価値の保全手段として機能しています。金が公開市場で需要に基づいて初めて取引されるようになった1971年8月15日以降、金価格の年率複利の平均上昇率は8.01%に達します4

Source: Bloomberg Finance L.P., and State Street Global Advisors, date range from December 31, 1970 to September 30, 2020. Past performance is not a guarantee of future results. Performance above does not reflect charges and expenses associated with the fund or brokerage commissions associated with buying and selling exchange traded funds. Performance above is not meant to represent the performance of any investment product.

金をポートフォリオに加えるのは、リスクが高過ぎるのではないですか?

目下、伝統的資産クラスのボラティリティは高く、リターンが低下していることから、金に対する関心が高まっています。また、新たなリスクの枠組みの下で、投資家は多くの異なる資産のリスク・リターン特性を理解しなければならないため、投資家は有意義な形でガードレールを設定し、各自の投資目標の範囲内でポートフォリオを構築する上で、ボラティリティは1つの指標となっています。しかし、多くの投資家は、金の断続的で短期的な価格変動だけに注目し、それが金のボラティリティの全体像を示していると誤解している可能性があります。金価格は時には短期的に大きく上下することがありますが、長期的に見ると全く異なる様相を呈しています。 

実際、過去30年間における金の3年ローリング年率換算ボラティリティは11.47%であり、同期間のS&P500指数の11.77%を若干下回るものの、ほぼ同水準です5。下記のグラフに示すように、金とS&P500指数の週次リターンの3年ローリング標準偏差は、1970年代後半と1980年代前半の期間を除き、概ね似通っています。例外の期間に関して言えば、当時は米国のインフレ率が高止まりしたため、FRB(連邦準備理事会)は政策金利(の上限)を20%に引き上げざるを得ない状況にありました6

しかも、指数は構成銘柄である個別の株式よりもボラティリティが小さい傾向にあることを考えると、金の潜在的ボラティリティは個別銘柄、セクター、あるいは他の証券と比較してさほど懸念するものではないと思われます。

Source: Bloomberg Finance L.P., State Street Global Advisors, data from August 20, 1974 to September 30,2020. Index returns are unmanaged and do not reflect the deduction of any fees or expenses. Past performance is not a guarantee of future results. 

投資家のポートフォリオ構築戦略において、実物資産へのエクスポージャーに精通している投資家にとって、金は歴史的に他の多くの貴金属、コモディティ、不動産よりも低いボラティリティを提供しています。

Source: Bloomberg Finance L.P., State Street Global Advisors, data from August 31, 2012 to September 30, 2020, reflect annualized monthly averages for 120 months. Past performance is not a guarantee of future results.

金は他の多くの資産と比べてユニークな特性があり、過去の価格動向を見ると、全般的にはテクニカルな支持線と抵抗線の範囲内で推移しながらも、短期的に上下することがしばしば見られます。しかし、上記のグラフに示すように、全体的に見ると、金の長期的な価格ボラティリティは、他の多くの資産と同程度または下回る水準にあります。

金はインカムや配当を支払わないため、債券ほど優れた投資対象とは言えないのではないでしょうか?

金は大半の株式や債券と異なり、クーポンや配当を支払うことはありません。金の価値はもっぱら価格上昇に根差しています。しかし、金投資には多くの債券に付随するカウンターパーティ・リスクがありません。債券投資では、クーポンの支払いは当該債券の発行体の信用力に左右されますが、格付機関であるS&Pグローバル・レーティングスによると、そうした信用力の多くが過度に高く評価された状態にあり、2020年に格付けが引き下げられています。現に、2020年第2四半期にS&Pグローバル・レーティングスは414件の発行体長期信用格付けを引き下げましたが、これは2008~2009年の世界金融危機の最中にあった2009年第1四半期の331件を上回ります7

Source: Bloomberg Finance L.P., and State Street Global Advisors, as of September 30, 2020.

世界中でマイナス利回りの債券残高が高水準にあり、また2020年に入って多くの債券のリスク・リターン特性の魅力が薄れていることから、金に投資する機会コストが一段と低下しています。このことは、金からの配当支払いはないものの、金投資が一部の債券戦略をアウトパフォームする可能性があることを意味します。

突き詰めると、危機時や市場が下落局面にある時に、金は投資家のポートフォリオの中で重要な役割を果たす可能性があります。しかし、金は単なる「危機時の避難先資産」では決してなく、市場が良好な時もポートフォリオに利益をもたらし得る多様なメリットを提供します。

昨今の不透明な市場環境は、投資家が金投資に対する認識を見直すのに絶好の機会であり、また変動しやすい投資環境下にあって、金への配分が投資ポートフォリオに寄与する戦略的・戦術的利点を検討するのに最適なタイミングかもしれません。