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SPYは投資をどう変えたのか: 米国初のETFの物語

  • SPDR® S&P 500® ETF (SPY)は、S&P500®指数のパフォーマンスに連動する証券のバスケットであり、米国初の上場投資信託(ETF)として1993年に誕生しました。
  • それから30年、今やSPYは世界で最も規模が大きく1、最も流動性が高く2、最も取引量の多いETFであり3、1日当たりの平均売買高は390億ドルにのぼります4
  • SPYは、投資の民主化を実現しました — 1993年以前には大半の投資家がアクセスできなかった市場への扉を開いたのです。


「ウォール街は大混乱」とロサンゼルス・タイムズは第一面で大々的に報道

「株価は508ポイント下落 … 世界中に影響」と伝えたニューヨーク・タイムズ

「昨日、株式市場が暴落」と簡潔に伝えたウォール・ストリート・ジャーナル

お分かりですか?1987年10月19日 — 「ブラックマンデー」を報じた見出しです。グローバル市場が突然暴落し、その結果、株式市場は大恐慌時を上回る打撃を受けたと推定されています。これを受けて、当局は直ちに原因究明に着手しました。

その過程で、米証券取引委員会(SEC)の捜査官はあることに気づきました。株式市場には、先物市場におけるS&P500®指数先物のように、市場全体を反映する単一の証券がありませんでした。そうした商品があれば暴落の打撃を最小限に抑えられ、危機自体を回避できた可能性さえあると考えたSECが興味を示したのは、全く新たな種類の証券の開発でした5

危機から生まれたSPYが、投資を永久に変えた

時は過ぎ1993年1月。金融機関の幹部ら関係者がアメリカン証券取引所(AMEX)で取引開始の鐘を鳴らすために集まっており、米国初の上場投資信託(ETF)が正式にローンチしようとしています。ティッカーSPYがスクリーン上で初めて点滅します。ステート・ストリートとAMEX(2008年にニューヨーク証券取引所[NYSE]が買収)が3年にわたって協力してきた、成果が実る時が来ました。

S&P 500®指数のパフォーマンスに連動する証券のバスケットは、ついに上場を果たしました。しかし、このセレモニーにはある人物が参加していませんでした。同僚から冗談で「配管工」と呼ばれているジム・ロスは、この日ボストンのオフィスで、SPYのローンチを成功に導くべく、舞台裏の作業の指揮を執っていました。

ローンチまでの数週間、ジムとステート・ストリートの同僚たちはSPYが上手く機能するように、何日も徹夜で作業を行いました。ブローカー・ディーラーからステート・ストリートへ500銘柄を移動させ、同時に同じブローカー・ディーラーによって証券取引所で売却される可能性のある株式を受け渡す、という疑似テストを何度となく繰り返しました。初めてのことで、100%出来ると確信していた者は一人もいませんでした。

インデックス事業の先駆者でカストディ/クリアリング事業最大手のステート・ストリートにAMEXがアプローチしたのは、ステート・ストリートがポートフォリオ運用における確かな専門知識と資金移動サービスの能力を有していたからです。しかしETFの開発には、独自の課題が幾つもありました。

ETFは株式や債券のように取引所で売買されますが、裏付けとなるファンドは実際に証券を保有する必要があります。ジムはこう述べています。「1億ドルのファンドなら、主に指数の構成銘柄からなる資産を1億ドル保有する必要がある」。

さらに厄介なことに、資金と証券は共にリアルタイムで移動・決済する必要があるため、当日監査を実施する必要がありました。

「現金だけでなくS&P 500®指数の構成銘柄も拠出されているため、500の個別銘柄の監査が必要でした」とジムは説明し、さらにこう続けます。「通常、このプロセス全体で45日かかります。しかしETFの場合、このプロセスは市場の取引が終了する午後4時から翌朝の取引開始(午前9時30分)までの約16時間で完了しなければなりません。財務データを揃えて、監査が確実に完了できるよう入念な計画が求められました」。

最終的には、SPYは成功することができました。ジムはこう言っています。「機関投資家のコミュニティ、大口投資家、加えてバイ・アンド・ホールド型の投資家までもが、SPYを取り入れたのです。彼らは、SPYはS&P500®指数を証券として購入できるコスト効率の良い方法だと考えました」。

SPYの初期の重要な投資家は、海外にいました — オーストラリアの年金基金です。ジムによると、「当時、ミューチュアルファンドの購入には申請書への記入という、他の金融商品の購入とは大きく異なるプロセスが求められていました。一方、SPYは取引所で購入できました。そのため、突然、海外の年金基金がSPYを購入し、世界の年金受給者の半分が米国株式市場に対するエクスポージャーを保有するようになったのです」。

新たな課題の解決に、SPYのようなETFを利用

30年後の現在、特定の産業、セクター、コモディティ、地域を対象とする8,000本以上のETFがあります6。それでも、SPYは引き続き、世界で最も規模が大きく7、活発に取引されている8ETFです。

現に、SPYの取引量は、世界最大の時価総額を誇るApple(AAPL)株の3.12倍です9。この取引量に加え、SPYの資産規模、流動性、様々な市場環境で見せる底堅さは、世界中の最も洗練されたトレーダーがポートフォリオを構築する際に、また市場混乱時に投資家を支えるために、極めて重要な役割を果たしてきました。

SPYにとって初めてのストレステストは米国での9.11同時多発テロの後、米国の証券取引所が6日間にわたり閉鎖された時です。4日以上連続で売買が停止したのは50年ぶりのことでした10。9月17日に市場が再開すると、投資家は航空セクターなどの株式を大量に売却しました。しかし市場参加者はSPYの価格をS&P 500®指数構成銘柄の推定バリュエーションとして使用し、これが市場に透明性ならびに適応・修正に向けた時間を与えました。

9.11の同時多発テロ以降、ETFは市場の閉鎖、構成銘柄の取引停止、市場の混乱、自然災害、人為的ミスの発生時に、徐々にですが極めて重要な流動性の源泉となってきました — 投資家が市場危機から直ちに抜け出すためのツールを提供したのです。

実際、新型コロナウイルス感染拡大の当初に市場が急落し始める中、SPYの1日の売買高は2020年2月28日にETFとして初めて1,000億ドルを超えました11。ストレス時における売買高の増加は、金融の世界で不可欠となったSPYの位置付けを裏付けるものであり、投資家がその豊富な流動性に、とりわけ最も必要な時に、引き付けられることを示しています。

投資家の新たな発想を刺激

SPYがもたらしたイノベーションに関し、ジム・ロスはETFをiPhoneになぞらえて説明しています。「iPhoneのプラットフォームは確かに重要な発明ですが、真の変革は人々が新たな発想でスマートフォンを日常生活に取り入れたことによって実現しました。同様に、ETFの世界のイノベーションは、必ずしもすべてプロバイダーが起こしたわけではありません。その多くは投資家が牽引したものです」。

ジムは保険会社が一般勘定の運用に債券でなく、ETFを使用している点を指摘しています。フィナンシャル・アドバイザーも、アセットアロケーションや分散投資の計画にETFを利用しています。複数のウェルス・マネジメント会社は、顧客向けの結果志向の商品に、自らの投資理念を組み入れるためにETFを利用しています。また、顧客の成果に集中するために、アドバイザーが投資活動を外部委託できるように、モデル・ポートフォリオの構築にもETFは使用されてきました。

現在、ETFは爆発的に成長したものの、依然として投資可能な市場全体の9%未満にとどまっています12。ただ、日中に売買でき、価格の透明性があるため、流動性の点で本来優位なことから、ETFの採用は増加基調を続けています。2022年には、65%のアドバイザーがポートフォリオへのETF採用を推奨し、41%のアドバイザーが今後12ヵ月でETFの利用を増やす意向を示しました13

変革から進化へ

SPYは投資アプローチの民主化に、道筋をつけました — 1993年以前には大半の投資家がアクセスできなかった市場への扉を開いたのです。

誕生から30年、投資家がETFを使用する方法は、現在も進化を続けています。ETFはアセットアロケーションの決定の重要な構成要素となり、ETFにより金融アドバイザーは、より効率的に投資家の運用成果にフォーカスできるようになりました — ポートフォリオの目標に合致したターゲット・エクスポージャーとポートフォリオ保有銘柄の透明性向上により、デューデリジェンスの効率化につながっています。

投資家は、なぜ現在SPYやその他のETFを利用しているのでしょうか?

流動性
いかなる市場でも、とりわけボラティリティが上昇する局面では、流動性が極めて重要です。SPYやその他のETFは日々、取引所で売買されており、設定・解約(交換)プロセスによって複数の流動性の層を有しています。ETFは流動性が高いため、投資家は迅速かつ容易に、そして相対的に魅力的なコストで売買が可能です。

分散投資
ETFは通常、指数に連動しているため、投資家は1回の取引で証券のバスケットのエクスポージャーを得られます。ミューチュアルファンド(投資信託)のように、SPYやその他のETFは投資家が効果的かつコスト効率良く分散されたポートフォリオを構築するのに役立ちます。

リスク管理
現在は多様なETFがあるため、以前は大手機関投資家しか採用できなかったリスク管理アプローチを個人投資家や中小規模の投資家も取り入れることができます。

SPYが促した変革は、いかなる観点から見ても、投資家に勝利をもたらしました。ジムは「当初、ETFを利用するのは、主に機関投資家か一部のヘッジファンドになると考えていました。ところがなんと、我々は間違っていたのです」と言っています。

SPYについて詳しく知りたいと思いませんか?詳細を読めば米国初のETFについて、
なぜ知る価値があるのかお分かりになるはずです。


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