2022年は、各国中央銀行による金購入が記録的な年でした。どの国が金準備を購入したのでしょうか。そしてそれは、2023年の金価格にとって何を意味するのでしょうか。
2022年のまとめ:2022年の各国中央銀行による金の買い越しは、過去最高を記録しました。ワールド ゴールド カウンシルの最新「ゴールド・デマンド・トレンド」レポートによると、中央銀行による公的準備としての金購入量は1,136トンの買い越しとなりました。これにより、買い越しは13年連続となりました。
中央銀行による2022年の金購入量 | |
国 |
金購入金額(トン) |
トルコ |
148t |
中国 |
62t |
エジプト |
47t |
カタール |
35t |
イラク |
34t |
ウズベキスタン |
34t |
インド |
33t |
アラブ首長国連邦 |
25t |
出所:ワールド ゴールド カウンシル、ゴールド・デマンド・トレンド2022、2023年1月31日時点。 |
これほど金を購入する理由は、かなり明快です。各国政府は最も重要な要因として、公的準備の分散を挙げています。欧米諸国は通常、公的準備の約3分の2を金で保有しています。対照的に、一般的な新興国の公的準備に占める金の割合は5%未満であり、残りのほとんどはドル建て資産となっています。新興国政府の多くは、自国の公的準備がドル建て資産に過度に偏っていて、危険であると認識しています。この不均衡を是正するために、新興各国は2010年以降、着実に金を購入しています。
最近では、一部の国で第2の要因が浮上しています。匿名性です。SWIFTの決済システムは、2015年の対イラン制裁や2022年の対ロシア制裁に利用されており、この戦術を「兵器化」と表現する人もいるほどです。もし、ある政府が国際制裁を現実の脅威として認識していたら、ドル資産から金などの匿名性のある資産への切り替えは、とても魅力的なはずです。
大半の中央銀行は20年ほど前から、金の売買について極めて高い透明性を維持しています。しかし、最新の統計では、正体不明の国が2022年に金を大量に購入したことが分かっています。これはおそらく、混乱が続いている現在の地政学的情勢を反映したものと思われます。ロシアはウクライナ侵攻を機に、毎月の金購入量を国際通貨基金(IMF)に報告するのを止めました。今では、ロシアは法律によって、金準備高を国家機密としています。中国は3年以上前から金の取引情報を報告していませんでしたが、突然IMFへの報告を再開し、11月と12月に購入したことを明らかにしました。どちらの国も、2010年に中央銀行による金取引が買い越しに転じて以降、最大の購入国の1つとなっています。同様に、アフガニスタンも、タリバンが政権を握って以降、金取引を一切報告していません。
こうした透明性の欠如は必ず目に留まりますが、以下の例を見ても分かるように、過去においても中央銀行による事例は珍しいことではありません。
記録的となった2022年のペースを維持することは難しいと思われますが、ワールド ゴールド カウンシルの「ゴールド・デマンド・トレンド」レポートは、各国中央銀行の金購入が2023年も堅調に推移すると指摘しています。歴史に照らせば、中央銀行が金を積極的に購入し続けることで、金価格の上昇が後押しされる可能性があります。
6カ月前、当社は1つの疑問を提起しました:「中央銀行は金の購入を続けるでしょうか? 」。その後の中央銀行の動きを見ると、回答は明らかに「イエス」です。
2023年には、他にどのような要素が金に影響を与えるでしょうか。「2023年の金の市場見通し 」に、考えられる3つのシナリオを提示しています。金に関する当社の最新の考察は、 こちら からご覧いただけます。