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戦略的資産クラスとしての金

金は、市場の調整局面や地政学的リスクの高まり、あるいは米ドル安が長引く局面においてリスク分散効果が期待され、相対的に流動性の高い資産であることから、投資家は資産保全手段としての金をポートフォリオの一部に戦術的に活用してきました。金は、このように戦術的利点があるだけでなく、さまざまな景気サイクルを通じた分散投資の中核資産として、より長期的で戦略的な役割を果たすこともあります。


金は、いくつかの点でポートフォリオ特性を改善させる効果が期待できます。金投資には次のような潜在的な利点があります。

  1. リスク管理 
  2. キャピタルゲイン
  3. 資産の保全

これらの金投資の利点について、過去におけるデータを例示しつつ、以下で説明をします。

1. 金とリスク管理:短期の戦略的利点

ポートフォリオのパフォーマンスを最適化する上で、短期かつ未知のリスクに対する備えは極めて重要です。金を組入れることにより、市場や景気サイクルのあらゆる段階を通じてポートフォリオを安定化させる以下の効果を期待することができます。

  • ポートフォリオのリスク低減
    金は、歴史的に見て多くの金融資産に対して低水準または負の相関性を示してきたため、ボラティリティの抑制や資産の保全に寄与することが期待されます。例えば、1970年代以降、金はS&P500指数およびブルームバーグ・バークレイズ米国総合債券指数に対して、0.00と0.07の相関(月次収益率に基づく)を示しています1。このように他の多くの金融資産との相関性が長期的に極めて低い理由は、景気拡大または後退の局面にかかわらず、金に対する需要が多岐にわたっていることにあります。

ポートフォリオへ金を組入れることによって、ポートフォリオのドローダウン低減や、シャープレシオの向上を通じて運用効率を改善させる分散効果が期待できます。また、長期的な資産価値の保全にも寄与すると考えられます。

  • 市場下落局面でのプロテクション
    金は安全な逃避先資産として見なされているため2、極端なボラティリティの上昇や市場が混乱した局面で優れたパフォーマンスを上げることが期待されるほか、伝統的な株式との低相関性により、ドローダウン低減効果も期待されます。資産市場は2020年に大きく様変わりし、投資家は低金利とリスク環境に耐えられるポートフォリオの構築を迫られています。歴史的に金がもたらしてきた恩恵は、現代のポートフォリオにおいても有効と考えられ、変化し続けるリスク環境を投資家が乗り切るための助けになると思われます。

Source: Bloomberg Finance, L.P., State Street Global Advisors. Data from August 25, 1987 to December 31, 2020. Date ranges for the time periods noted are: 2008 Financial Crisis: 08/11/08 - 03/09/09; Coronavirus: 02/19/20 - 03/23/20; Black Monday: 08/25/87 - 12/04/87; 2002 Recession: 03/19/02 - 07/23/02; Dot Com Bubble: 09/29/00 - 04/04/01; Gulf War: 07/16/90 - 10/11/90; LTCM & Asian Crisis: 07/17/98 - 08/31/98; US Credit Downgrade: 07/07/11 - 10/03/11; Subprime Meltdown: 10/09/07 - 03/10/08; September 11th: 08/24/01 - 09/21/01; Flash Crash: 04/23/10 - 07/02/10; Trade War/Recession Fears: 09/21/18 - 12/26/18. US Equity represented by S&P 500 Total Return. Gold = gold spot price. Index returns are unmanaged and reflect peak to trough returns for the stated period. Index returns do not reflect the deduction of any fees or expenses. Past performance is not a guarantee of future results.

  • 他の資産クラスやオルタナティブ投資との低相関
    金は多くの伝統的資産クラスとの相関が低いことから、ボラティリティが極端に高まり、市場が混乱する局面においてプラスのリターンを生み出してきました。そのため、金を「安全な逃避先資産」と評価する投資家も少なくありません。

ポートフォリオのリスク分散のために通常用いられる他の資産クラスとは異なり、金は歴史的に高い分散効果を発揮してきました。多くの実物資産が伝統的な株式や債券との連動性3を強めている一方、金の低相関性はますます強まっています。

Source: Bloomberg Finance, L.P., State Street Global Advisors. Data from 12/31/1993 to 08/31/2020. Gold = gold spot price. Commodities = S&P GSCI Total Return Index. Hedge Funds = Hedge Fund Research HFRI FOF Diversified Index. REITs = FTSE NAREIT All Equity REITS Total Return Index. Private Equity = LPX50 Listed Private Equity Index Total Return. Past performance is not a guarantee of future results.

上記はMSCIワールド指数に対する各資産(指数)の相関を表します。

2. キャピタルゲインと金の潜在的価値

金投資を検討すべき理由は市場下落時における打撃を抑えるだけではありません。金には、投資家にキャピタルゲインを通じて、長期的かつ戦略的な投資機会を提供するという利点もあります。金がもたらすリスク低減効果とリターンの低相関性は、ポートフォリオのドローダウンを低減することが期待され、ポートフォリオの最適化につながると考えられます。また、金はダウンサイドの管理に役立つだけではなく、値上がりの可能性も期待できることから、市場サイクルにおいて投資元本を成長させる機会も提供すると考えられます。

  • 過去における長期投資からの収益率
    金は好不況にかかわらず、さまざまな景気サイクルを通じて、競争力のある長期リターンを歴史的に提供してきました。金を組入れることにより、長期的なリスク分散効果を通じてリスク調整後リターンの最適化が期待されます。

Source: Bloomberg Finance, L.P., State Street Global Advisors. Data as of December 31, 2020. Gold = gold spot price, US Cash = ICE BofAML US 3-Month Treasury Bill Index, US Bonds = Bloomberg Barclays US Aggregate Total Return Index, Global Equities = MSCI World Total Return Index, Commodities = S&P GSCI Total Return Index. Past performance is not a guarantee of future results. 

  • プラスのリスク調整後リターン
    景気サイクルを通じてポートフォリオの価値を高め、リターンを最適化することは、長期ポートフォリオを構築する際に極めて重要なポイントです。さらに、ポートフォリオ内の資産クラスの相関性の低さは、ポートフォリオのボラティリティ低下に寄与するため、他の条件がすべて同じ場合、分散効果は大きくなり、時間とともにシャープレシオの改善や全般的なリスク調整後リターンの向上につながることが期待されます。

当社はリサーチレポート「Case For Constructing Portfolios with SPDR® Gold Shares (GLD®)(SPDR®ゴールド・シェア (GLD®)を用いたポートフォリオ構築の事例」)で例示したように、仮想マルチアセット・ポートフォリオ(組入資産にはグローバル株式、各種債券資産クラス、不動産、プライベート・エクイティ、コモディティなども含む)にGLDを組入れることで、リスク・リターン特性がどのように改善するかについて分析しました。その結果、2005年1月1日(GLDの設定1年目)から現在までのSPDR® ゴールド・シェア (GLD®)の組入比率を2~10%とした場合、GLDを組入れなかった場合に比べて、仮想ポートフォリオの累積リターンとシャープレシオは改善し、最大ドローダウンは低下していた可能性があることが分かりました。以下にレポートの抜粋を掲載しますが、記載のように定義した仮想ポートフォリオのパフォーマンスに基づくと、ポートフォリオに金を組入れることでもたらされ得る、いくつかの戦略的および戦術的利点が示されています。

ポートフォリオに金を組入れる潜在的な利点を例示

仮想ポートフォリオを定義する

3. 資産の保全: 金を組入れるさらなる戦略的メリット

金には短期的にポートフォリオのボラティリティを抑制し、ドローダウンを低減する効果が期待できるだけでなく、さまざまな景気サイクルにおいて優れたリスク調整後リターンを達成してきたことにも示されているように、不測のリスクに対しても長期的な資産価値の保全に寄与すると考えられます。上記のグラフは、金の長期パフォーマンスと、さまざまな景気サイクルにおいて金が時間とともにポートフォリオ構築にどのような影響を与える可能性があるかを示したものです。

  • 厚みのある流動性
    金の流動性は資産保全の役割を果たす可能性があります。取引市場において相対的に厚みのある流動性を投資家に提供していることは、金を戦略的に保有する際の重要な利点と言えるでしょう。歴史的に見て、取引額は主要な債券、通貨、株式市場と同水準であり、金の日次平均売買代金は1,880億米ドルを上回ると推定され、年間45兆米ドルに相当します。そして、2020年3月のような市場混乱時であっても、金市場の流動性は維持されました。新型コロナウイルス感染拡大による当初のロックダウンが実施された3月に金の売買額は2,370億米ドルに達し4、他の多くの資産の価値が減少するのを横目に、投資家は流動性のある取引市場、すなわち、キャッシュにアクセスすることができました。
  • 歴史的に価値の保存手段
    長期的には、金は投資家にとって価値の保全に優れた投資手段であり、購買力を維持する役割を果たすことが期待されます。金はインフレ上昇時、特に極端なインフレ局面において、歴史的にプラスのリターンを提供することにより、物価上昇と歩調を合わせてきました5。さらに、金は米ドルと歴史的に負の相関性を維持することによって、通貨下落の影響をヘッジする能力を示しています6。総合すると、金は、通貨下落および物価上昇に強い性格を有していることから、投資家は購買力を保ちつつインフレ圧力から資産価値を保全することができると考えられます。

投資家にとって、金は危機時において戦術的に利用するだけの資産ではなく、多様な利点に着目した長期的かつ戦略的な投資対象になりえます。金が仮想複合ポートフォリオのパフォーマンスにどの程度寄与したのかに関しては、当社のホワイトペーパー「The Role of Gold in Today’s Global Multi-Asset Portfolio」をご覧ください。