2022 Midyear Market Outlook
Head of SPDR Americas Research
Chief Investment Strategist
Head of Gold Strategy

インフレ感応型の代替投資手段を検討

米国では3月に消費者物価指数が40年来の高水準となる8.5%の上昇を記録し1、住宅価格は19.8%と大幅に上昇しました2。そして、現在も続くパンデミックや対ロシア制裁が、高騰するコモディティ価格やグローバル・サプライチェーンの混乱にさらに圧力をかけ続けています。こうしたことすべてが、インフレが予想以上に長期化することを示しています。

こうしたなか、物価上昇は家計の貯蓄を圧迫しています。3月の米貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄の割合)は1年前の26.6%から6.2%に低下し3、景気や企業業績の減速に対する懸念の高まりにつながっています。この二重の逆風を緩和するには、伝統的な市場の外に目を向け、不動産投資信託(REIT)、天然資源株、インフラ関連株、インフレ連動債、コモディティ全般や金などのインフレ感応型の資産をポートフォリオに組み入れる必要があります。

これらの代替投資商品は目先、恩恵を受けそうなことから、ポートフォリオに組み入れれば、リスクを考慮した長期的により強固な戦略的アセットアロケーションを構築できます。

インフレ感応型資産を組み入れる

インフレ感応型資産に対する直接のエクスポージャーは、どのような形であれ(原資産である会社の事業、不動産やコモディティなどの有形資産に対する直接的なエクスポージャー、インフレ率に応じたリターンを支払う義務のある約束手形など)、インフレ率の上昇や高止まりする環境から恩恵を受ける傾向にあります。そして米消費者物価の月次変化に対するこれらの資産の感応度からみて、株式と債券両方の代替資産として使用できると考えられます。

グローバル・インフラの「エクイティ不動産」、REIT、天然資源は、いずれも米国およびグローバルの株式指数よりも、米消費者物価指数(CPI)に対するベータ値が高く、その結果、下図に示したように、過去20年間のグローバル60/40株式/債券ミックスに対する相関性は0.70~ 0.89のレンジとなっています。したがって、インフレからポートフォリオを守るためにこれらの資産を追加すれば、分散効果はさらに高まるでしょう。

広範な伝統的ベータ・エクスポージャーよりも価格変動が大きいセクターもあるため、こうしたインフレ感応型の株式テーマや産業で構成され分散されたバスケットへの投資は、理にかなったアプローチと言えます。

インフレ感応型資産は、伝統的な債券アロケーションの補完にもなります。グローバル・コア債券は、ポートフォリオの株式セグメントとの相関性は低いものの、インフレによるクーポン価値の毀損ならびに金利上昇に伴うデュレーションに起因する価格下落から、引き続き圧力を受けそうです。下図に示したように、債券のインフレに対するベータ値はマイナスであり、債券がインフレ上昇局面で困難に直面することが分かります。

米国物価連動国債(TIPS)と金は伝統的な債券の代替資産であり、インフレ対策に役立ち、分散効果の改善につながります。ともにグローバル・ポートフォリオとの相関性は低いものの、消費者物価水準の変化に対する感応度は高い傾向にあります。

インフレ感応度と伝統的資産との相関性の比較

Inflation Sensitivity versus Correlation to Traditional Assets

上図に示したように、インフレ感応型の代替資産を分析したところ、その中ではコモディティ全般がインフレの変化に最も高い感応度を示しました。これには意外感はありません。消費者物価指数への寄与度が特に大きい2項目、エネルギーと食料品、はともにコモディティに基づいているからです。ただ、コモディティ全般は過去20年にわたりインフレに対して高いベータ値を示しているものの、足元のインフレ環境はそれよりも極端なものとなっています。長期的にみると、コモディティ全般と金には違いがあることが分かります。

インフレおよびマクロ・リスク防衛に金を活用

下図のように、分析期間を1970年代のスタグフレーション期まで拡大すると、著しい高インフレ期(CPIの平均水準から1標準偏差以上上回っていた期間)には、金も資産防衛効果を発揮したことが分かります。このように著しいインフレ・ショック局面では、金とコモディティの実質リターンはともに株式、債券、REITのリターンを上回っています。またコモディティと比べて、金には著しいディスインフレ、さらにはデフレ局面でも、実質リターンを維持できるメリットがあります。

インフレ局面別のパフォーマンス

Performance Based on Inflation Regimes

インフレを注視することは引き続き極めて重要ですが、様々なマクロリスクが同時に浮上した結果、ボラティリティが伝統的ポートフォリオの大きなリスク要因となっています。金は年初来でS&P 500指数を14.17%アウトパフォームし4、株式市場の反落に対するヘッジ効果があることを示しています。株式と債券に対する、金の長期相関係数はそれぞれ0.00、0.07と5、金に金融資産の分散投資効果があることは十分に立証されています。

広範なコモディティ・インデックスにエクスポージャーをとることで、ポートフォリオ分散効果が得られます。しかし、ダウンサイドリスクの軽減という点では金に比べて効果は小さく、効率的でもありません。たとえば、コモディティ全般は年初来で30%上昇しましたが、リターンの30日ボラティリティは22.57%です。これに対して、金価格は年初来で横ばい6、ボラティリティは僅か13.72%と7、コモディティ全般を40%下回っています。また金のボラティリティは過去平均並みですが、コモディティのボラティリティは過去平均を70%上回っています8

金融資産のダウンサイドリスクに対する金の軽減能力は、上記の簡単なサンプルだけでなく、株式リターンの上昇局面と低下局面で個別コモディティおよびコモディティ・インデックスと比較すると、さらに明らかです。石油、銅、銀などのコモディティは本質的に金より景気循環に敏感で、その需要は景気循環的な消費に依存しているため、市場や景気循環との相関性が高くなる傾向があります9

コモディティの対株式アップサイド/ダウンサイド・キャプチャー・レシオ

Upside/Downside Capture of Commodities to Equities

その結果、コモディティは歴史的にグローバル株式の上昇を金よりもよく捉えています。ただ、株式が下落したときのダウンサイドも大幅になります。コモディティの株式リターンに対するアップサイド・キャプチャー・レシオをダウンサイド・キャプチャー・レシオと比べると、その比率は平均1.0未満であり、コモディティはポートフォリオ分散手段としてあまり効果的ではありません10。これに対して、金は、株価上昇時にはコモディティに比べて上昇ペースは低いものの、グローバル株式の下落局面を1.8%しか捉えておらず、ヘッジ効果があります11

とりわけ経済や地政学をめぐる不透明感からボラティリティが上昇する環境で重要なのは、相関性が低く、魅力的なダウンサイド・キャプチャー・レシオをもつ資産のエクスポージャーを増やすことにより、真に分散されたポートフォリオ・アロケーションを構築することです。そうすることで、ポートフォリオの非対称的なトータル・リターンを長期的に実現できるようになるでしょう。

投資アイデア

インフレ感応型代替資産を追加すれば、高インフレや、景気や地政学をめぐる不透明感を背景とするボラティリティ上昇の影響緩和に役立つ可能性があります。たとえば次のようなアイデアがあります。


インフレおよびボラティリティ管理のための、金に特化したエクスポージャー


アクティブ運用で分散された実物資産戦略による、リスク管理されたエクスポージャー