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Bond Compass

PriceStats®:インフレ鈍化の動きは持続可能

オンライン⼩売業者が販売する数百万品⽬の価格に基づいて算出した四半期インフレ指標を分析し、投資家がインフレの及ぼす影響を予測・評価するための⼿助けをします。

2023年末のリスク資産の世界的なラリーを促したのは、中央銀行が正常化プロセス開始に前向きであるとの見方です。

そして、そうした政策転換の可能性に信ぴょう性を与えたのは、秋に台頭した根強いディスインフレ基調でした。この1年間、インフレが封じ込められたとの楽観論は何度も覆されてきましたが、多くの国で経済データが減速を示し、成長が低下に転じたことは、今回の物価上昇ペースの鈍化が持続可能なことを物語っています。

先進国市場と新興国市場のインフレ基調は乖離

中央銀行はインフレへの警戒姿勢を維持しており、今後のデータの動きを見守る意向のようです。一方で、近いうちの利下げ開始も示唆していません。こうした観点から、最近のPriceStats指数の先進国市場と新興国市場の基調は注目に値します。

先進国の物価は依然として目標を上回る水準にとどまっているようで、主要中央銀行の多くが採用する「より高い金利をより長く(higher for longer)」という政策をサポートしています。一方、新興国のインフレは、食品や燃料の価格上昇が少なくとも一因で再び上昇しつつあります。年末のラリーではリスク資産が揃って上昇したことから、インフレ基調の乖離が顕在化すれば、こうしたリターンの強力な連動性に影響するでしょう。

米国のインフレは平均値に接近

財価格のデフレは、米国のインフレ率を米連邦準備制度理事会(FRB)の目標近くまで押し下げた重要な要因です。直近のコア消費者物価指数(CPI)は予想通り、前月比0.3%の上昇となりました。最近のインフレ率上昇に最も寄与したのは、6ヵ月連続で低下し、デフレ基調にあったコア財の価格です。

少数派となったインフレ・タカ派は、FRBの物価安定目標を依然として大きく上回る、サービス・インフレへの懸念を指摘するでしょう。PriceStats指数は、財の価格が過去数ヵ月にわたり全般的に長期月次平均を下回り、デフレ基調にあることを示唆してきました。ただ第4四半期初めのインフレ鈍化を示すデータには、注意が必要です。ホリデーシーズンの値引きが早めに開始したことを示している可能性もあり、全般的な消費支出が力強さを維持すれば、鈍化は一時的なものとなる可能性があるからです。

データは2023年末まで引き続き同様のデフレ基調を反映し、12月のPriceStats指数は-14ベーシスポイント(bp)と、10年平均に近い水準を記録しました。平均まで戻っても米連邦公開市場委員会(FOMC)にとってはまだ明るい兆候ではあるものの、利下げを見込むには、特にサービス・インフレが引き続き粘着性を示す場合、過去数ヵ月のように平均以下で推移する必要があります。

米国のインフレ率は、ついに平均値に接近

米国のインフレ率は、ついに平均値に接近

日銀のインフレ政策は世界に逆行

日銀は主要な中央銀行のなかで唯一、様子見を続け、他の国や地域が近代の金融史で最も積極的な引き締めに動く中、景気刺激的な金融政策を維持してきました。

日本が世界に逆行するアプローチを取る最大の理由は、数十年に及ぶデフレとの闘いにあります。世界的にインフレ基調が定着する中、日本の物価も上昇基調をたどり、40年以上ぶりに2%の目標を上回るデータが続きました。これを受けて日銀はイールドカーブ・コントロール政策の目標を引き上げ、金融緩和の解除に向けて小さな一歩を踏み出しました。

最近のインフレ基調を見ると、日本のPriceStats指数は過去3ヵ月で再び2%に向かって低下基調をたどっており、日銀の忍耐強さが正しかったことが最終的に証明されるかもしれません。長年デフレと闘ってきた国にとって、物価が2%近くで安定すれば、パンデミック後の数少ない成果となるでしょう。