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Q1 2023 Bond Compass

PriceStats® Analysis: インフレのピークは近いのか?


Q1 2023


先進国市場:インフレは依然として高止まり

インフレ率は、先進国、新興国を問わず数十年ぶりの高水準に達した後、第4四半期にようやく改善し始めました。エネルギー価格の下落、成長鈍化による需要の減退、サプライチェーンの正常化といった要素は、いずれもインフレ率が大半の国でピークを迎えたとの見方につながりました。この見方は、当社のPriceStats指数でも裏付けられており、12月の同指数は先進国全体で前月比0.1%低下となり、2022年で最大に近い低下幅となりました。

しかし、前年同月比では依然として4.2%上昇と、ほぼすべての主要中央銀行のインフレ目標値の2倍であるため、現状で満足するには程遠い状況です。最近の改善理由もやや限定的で、エネルギー価格が前月比で7.8%も急落しましたが(これも2022年で最大に近い下落幅)、ウクライナ戦争が続く中でエネルギー価格は不安定であるため、安心はできません。一方、食品価格も驚くほどのペースで上昇し続けており、12月には前月比0.66%上昇(前年同月比では12.1%上昇)と、このカテゴリーでパンデミックが始まるまでの10年間で最も高い上昇率の、2倍の水準が続いています。こうした懸念から、2023年が始まるにあたり、最終的なピークインフレ率が主要な投資テーマとなっていますが、その後の分析で、各国の経済成長と物価動向には、国によって大きな違いが見られるようになっています。

2022年末にインフレは改善したが、祝杯をあげるほどではない

Inflation Improves to End 2022, But No Celebrations Yet

米国:インフレの焦点はコアサービスへ移行

米国のインフレ状況は、他の多くの主要国と比べて明らかに改善を示して2022年を終えました。米国の消費者物価指数(CPI)は、総合インフレ率とコアインフレ率の両方で改善が見られた11月に続き、12月も予想を下回る数値となる可能性があります。11月のPriceStats指数は前月比0.11%上昇となり、10月の同0.41%上昇と比べて、上昇率は30bpも低下しました。これは、11月の総合CPIが30bp低下して前月比0.3%上昇となったことと一致しています。

この明るいニュースは年末も続き、12月のオンライン価格はさらに50bp低下してマイナス0.37%となりました。エネルギー価格の代用指標となる輸送コストは前月比マイナス3.3%となり、前月に続き、昨今のディスインフレ動向に最も大きく寄与しましたが、こうした一連の変動を見て、インフレ改善に対して楽観し過ぎないように注意する必要があります。米国のセクター別データを詳しく分析すると、状況にはばらつきが見られます。特に、食品やその他の財カテゴリーの価格は底堅く、米連邦準備制度理事会(FRB)は、価格動向の転換がより確実で持続可能なものであることが明らかになるまで、警戒を続けるとみられます。

12月のPriceStats指数は、一般的にホリデーシーズンに大幅な値引きが行われる生活用品と衣料品の分野で、例年の平均値を大幅に上回りました(下のグラフを参照)。また、CPI構成要素の中で上昇傾向にあった住居費が、変動の大きいホテル宿泊費の下落によって大きな影響を受けた点も注目に値します。つまり、全体的な物価の改善は年が明けても持続する可能性はありますが、住居以外のコアサービス価格に対するFRBの懸念は、依然として完全に払拭されてはいません。

 

12月の物価は、例年の平均を上回る水準が持続

December Prices Stay Above Seasonal Averages

ユーロ圏:ECBはユーロ圏のインフレ改善にも安心せず

米国やその他先進国市場と同様に、ユーロ圏のインフレ率もピークを迎えたと見られ、12月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年同月比9.2%上昇となり、8月以来の1桁の上昇率となりました。ドイツ、フランス、スペインの速報値が低下して下振れのサプライズとなったことが、ユーロ圏全体の改善を牽引しました。その他の国と同様に、こうした改善傾向の大部分はエネルギー価格の下落によるもので、ユーロ圏では臨時の補助金が追い風となりました。これらの補助金は2023年初めに終了する予定であるため、価格は再び上昇すると思われます。とはいえ、インフレがピークを付けるとのシナリオは依然として有効であり、財価格の下落によってインフレは一段と改善する可能性があります。

下のグラフが示すように、ユーロ圏では食品価格のインフレが引き続き懸念されており、消費者のインフレ期待も高止まりしていることから、欧州中央銀行(ECB)は警戒を続けるとみられます。12月のユーロ圏PriceStats指数は前月比0.31%上昇となり、12月として過去最高を記録した2021年12月をわずかに下回る水準でした。こうした相反する流れは、複数のECBメンバーによる最近のタカ派的発言を後押しし続けると思われ、引き締め政策が十分に成果を上げ、インフレ率が望ましい水準に到達するまで、50bpの利上げを複数回行う必要性があることを示唆しています。

 

ユーロ圏では食品価格のインフレが引き続き懸念される

Food Price Inflation Remains a Concern in the Eurozone

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