オンライン⼩売業者が販売する数百万品⽬の価格に基づいて算出した四半期インフレ指標を分析し、投資家がイ ンフレの及ぼす影響を予測・評価するための⼿助けをします。
第3四半期における債券市場の利回り上昇はインフレ同様に激しいものでしたが、インフレの基調とはほとんど無関係でした。
米国では総合インフレ率が再加速し、四半期ベースで再び季節平均を上回っています(図表1)。原因はほぼエネルギー価格の高騰と言ってよいでしょう。そのため、総合インフレ率は再び上昇する可能性がありますが、コア・インフレ率の指標は穏やかに推移するとみられます。
この点でPriceStats指数のセクター・シリーズは、特に心強い動きを示しています。第3四半期を通じて住宅設備、家具、付帯サービスの価格(財価格のインフレや住宅市場の動向の代替指標として有用)がここ2年超ではじめて下落しました。
これは財セクターの供給問題が完全に正常化し、待望の住宅市場におけるインフレ減速の時がついに訪れたことを示すものです。もちろん、総合インフレ率上昇がコア指数に波及する可能性もあります。そうした動きは、ここ数年見られています。
しかし、今のところコア指数はディスインフレ基調を維持しており、状況は良好です。また、これまでのところ、エネルギー価格の高騰が市場ベースまたは消費者のインフレ予想に、ほとんど影響を及ぼしていない点も同様に明るい材料です。
ほとんどの国はこの2年間、厄介なインフレを金融システムから締め出すために政策を実施してきました。一方、日本はインフレ促進を目指してきました。そして今、失敗を繰り返してきた20年にわたる取り組みがようやく実を結び、日本にインフレが戻ってきました。
これを簡単に示すため、日本の物価水準の指数をプロットしてみました(図表2)。2010年から2021年まで、物価水準にはほとんど変化はありませんでした。インフレ率は、増税により跳ね上がった時期を除き、ゼロ近いまたはゼロを下回る水準で推移していました。しかし2021年半ば、日本のオンライン商品価格の動きに変化が生じ、当社がデータを集めている他のほとんどの国と同様に、規則的に上昇し始めました。
現在公式データも追随しており、インフレの基調に変化の兆候はありません。インフレの復活です。
これは歓迎すべき展開ではありますが、同時に、日銀が超緩和的金融スタンスを後退し続ける必要に、迫られることも示しています。これまで日本の投資家資金の流入が海外債券市場の需要の主な源泉となってきたことを考えると、今後日銀が国内市場の利回り上昇観測にどう対応するのかに、注目が集まるのは間違いないでしょう。
原油価格の反発は、特に新興国市場にとって厄介な問題になりそうです。新興国市場のインフレ・バスケットは食品とエネルギーのウェイトが大きく、その影響は多くの場合、現地通貨市場の軟調さによって増幅されるでしょう。
為替レートのパススルーは通常、高インフレの新興国で早く生じますが、今まさにそうした状況が起きています。9月のPriceStats新興国指数の前月比上昇率は約2%と、ロシアのウクライナ侵攻以来の大幅な伸びとなりました ―― そして、前年比の総合インフレ率を急加速させるのに十分な伸びでした(図表3)。
これは主にエネルギー価格の高騰を受けた米国と同じ展開ではあるものの、既に緩和サイクル入りした国では、状況がさらに複雑になります。既に厳しい投資環境に直面している新興国現地通貨建て債にとって、これは新たな障害です。