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Q1 2023 Bond Compass

投資家センチメント:楽観的な見方が散見され、相対的な安全性を好む傾向が継続

このデータは数万のポートフォリオから投資家行動の傾向を捉えたもので、世界の債券発行残高のおおよそ10%強を網羅しています。


Q1 2023


Investor Sentiment
Investor Sentiment
Investor Sentiment

ピーク金利への関心の高まり

2022年末、各国中央銀行は利上げのアクセルを踏み続け、さらに19ポイントの利上げを行いました。これにより、先進国と新興国を合わせた年間の総利上げ幅は、ほぼ100ポイントに達しました。今回の金融引き締めの大半は先進国の中央銀行によるもので、大幅に後れを取ったインフレ曲線に追いつこうと、積極的に利上げを行いました。金融引き締めが世界的に加速する中、金利上昇は経済規模の小さい国々よりも、米国、ユーロ圏、英国の金融環境に大きな影響を及ぼしました。今では多くの国が、金利上昇によって経済活動が制限される状況に直面していますが、中央銀行は積極的な利上げの継続、または高水準の金利が長期化する見通しを表明するなど、タカ派的メッセージを堅持しています。

経済成長を減速させるという暗黙の目標の結末、世界的に景気後退の危機が高まっています。国際通貨基金(IMF)は、3分の1の国でGDPがマイナス成長になると予想しており、米国、ユーロ圏、英国は失速寸前の不安定な状態にあります。その結果、リセッションを示唆する多くのシグナルが一段と明るく点滅し、米国では逆イールドが進行して1980年代に見られた水準に達しています。

債券投資家はこうした展開を、他でもないリセッションに対抗するという理由から、引き締めサイクルが終わりに近づいていることを示すさらなる兆候と捉えました。これを受けて、債券価格は2022年第4四半期に上昇し、投資家は2023年の利下げを予想し始めました。価格上昇は幅広い債券セクターに及び、ソブリン債、社債、エマージング債は、3四半期にわたる下落からようやく反転しました。

リスクラリーが広まる一方で、投資家の動きには、相対的に安全な債券資産を選好する傾向が見られました。その筆頭が米国債で、60日資金フローは12月を通じて90パーセンタイルを維持しました。満期の点では、リアルマネーの米国債投資家はデュレーションを好み、イールドカーブの5-7年部分が最も堅調となりました。ユーロ圏でも、信用リスクを限定したデュレーションの買いが顕著で、資金流入はロングエンドを中心に、過去5年間で最高水準に達しました。国別に見ると、ドイツ国債とフランス国債が買いを牽引し、イタリア国債とスペイン国債は、少なくとも中立的な動きで、後れを取りました。社債へのフローは全体的に回復しましたが、中でも投資適格社債で動きが非常に活発となったのに対し、ハイイールド債へのフローは中立にもどるにとどまりました。当社の債券カバレッジの中で明らかに出遅れているのは新興国債券で、リセッションのリスクから投資家は国内市場から離れることをためらっているようです。

米国債に追い風だが、インフレ連動債(TIPS)へのサポートは弱い

米連邦準備制度理事会(FRB)は第4四半期も積極的な金融引き締めを継続し、2022年の最後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)では、短期金利が合計125bp引き上げられました。FRBが一貫してタカ派的な行動と発言を維持していたにもかかわらず、市場は引き締めサイクルの終了に注目しました。そのため、投資家は、年末時点のFRB予想が高いターミナルレートを示唆していることを認めながらも、フェデラル・ファンド金利(FFレート)が5.125%でピークアウトし、2023年終盤には積極的な利下げに転じるという見方を続けています。

FRBは基本的に、FOMCメンバーの誰一人として、2023年に利下げに転じることが適切だとは考えていないと述べていますが、市場はそうした積極的な方向転換を織り込んだままでいます。こうした見通しによって第4四半期にはリスク資産を支える環境が整い、債券と株式の両資産クラスが、四半期ベースでは2022年で最も高い上昇となりました。長期国債の利回りもピークアウトしたとみられ、一時4.25%に達しましたが、その後、リセッション懸念の高まりを受けて3.5%まで低下しました。一方、短期国債の利回りは、継続的な利上げで押し上げられたままで、イールドカーブの逆転は1980年代以降で最も大幅に進行しています。

当社の投資家行動データ(20日デュレーション加重の国債フローは85パーセンタイル)は、リアルマネーの資産運用会社が引き続き、利上げサイクルの終了とその後の方向転換を予想していることを示しています。インフレ懸念の後退を示唆する兆候の1つとして、インフレ連動債(TIPS)市場への資金流入は、最近になって25パーセンタイルまで低下し、2022年で最も低い水準となりました。

 

米国債には投資家の需要があるが、インフレ連動債(TIPS)は出遅れている

US Treasuries See Investor Demand While TIPS Lag

ハイイールド債よりも投資適格債

第4四半期にはクレジットもリスクラリーに加わり、投資適格債とハイイールド債の両クラスで、3四半期続いたマイナスリターンにようやく終止符が打たれ、四半期ベースでは2年超ぶりの上昇率となりました。社債は、FRBの政策転換への期待、ボラティリティの低下、全体的な発行量の少なさといった要因に支えられて、国債利回りの低下とスプレッド圧縮の両方から恩恵を受けました。投資適格債を広くカバーする指数のスプレッドは30bp低下して130bpとなり、ハイイールド債のスプレッドも84bp縮小して450bpとなりました。第4四半期を通じてリセッション懸念が高まりましたが、労働市場の逼迫と堅調な消費が、ソフトランディングへの道筋を示し続けました。

FRBの450bpの利上げを受けて企業調査では見通しが悪化し、信用状況が逼迫しつつあるにもかかわらず、デフォルト率は穏やかで、景気サイクルの最低に近い水準を概ね維持しています。こうした見通しの悪化は企業の業績予想に織り込まれ、第4四半期には下方修正が相次いで行われましたが、2023年の業績予想は好調を維持しています。最終的に、このような楽観的な見通しにはFRBの積極的スタンスが後退することが必要ですが、FRBは、インフレの持続的改善と労働市場の緩和の両方が明らかになるまで、引き締め政策を継続すると表明しています。

そのため、高格付け債とハイイールド債はどちらも第4四半期に上昇しましたが、リアルマネーの投資家は明らかに質の高い資産を選好しています。投資適格債への資金フローは第4四半期に、5年ぶりの高水準に達し、年末には90パーセンタイル付近にとどまりました。対照的に、ハイイールド債へのフローには活気がなく、過去最低水準からは上向いたものの、ニュートラル水準となりました。今年も経済成長に対する不透明感が続いているため、投資家は、デフォルトが増加した時に最初に影響が現れるとみられる低格付け社債に対して、慎重姿勢を維持すると思われます。

 

投資家はハイイールド債よりも投資適格債を選好

Investors Show Preference for Investment Grade Over High Yield

リセッション懸念から新興国債券は回避されている

新興国債券は2022年を通じて、成長やインフレ懸念、ドル高による逆風、経常収支の悪化といった試練を乗り切り、第4四半期には、四半期ベースでは過去5年間で最高のパフォーマンスとなり(2020年に見られた一時的な急騰を除く)、好調な年越しとなりました。

多くの新興国では、先進国よりもかなり早い時期から利上げサイクルを開始しており、一部の国では利上げを受けて、先進国では依然として見られないプラスの実質利回りを実現していることから、新興国市場を引き続き楽観視する理由があります。FRBをはじめ、先進国市場でターミナルレートをめぐる議論が高まっていることも、新興国投資家のリスク軽減につながる可能性があります。しかし、中央銀行の方向転換への期待は、リセッションのリスクが高まることで引き起こされることが多く、その場合、過去の例を見ると、新興国市場にとっては厳しい環境が生まれることを意味します。

そのため、先進国ソブリン債への需要が高まる一方で、新興国債にはそうした熱狂は伝わっていません。昨年秋には、金利のピークアウトが近いとの見方が強まったことを受け、先進国ソブリン債へのフローは90パーセンタイルに達しました。また、ターミナルレートをめぐるプライシングに関するボラティリティは高まっていますが、金利上昇に伴うリセッションリスクは高まっており、これも、リアルマネーの先進国へのフローを下支えしています(依然として上位10パーセンタイル圏内にとどまっています)。対照的に、新興国ソブリン債へのフローは11月にニュートラル付近で頭打ちとなり、リセッション懸念の高まりを受けて、下位25パーセンタイルまで再び落ち込んでいます。

 

先進国ソブリン債に対する熱狂は、まだ新興国債券に伝わっていない

Enthusiasm for DM Sovereigns Not Yet Translating to EM

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