Bond Compass

投資家センチメント: 債券投資家にとって最悪の時は過ぎたのか?

このデータは数万のポートフォリオから投資家行動の傾向を捉えたもので、世界の債券発行残高のおおよそ10%強を網羅しています。


Q4 2022


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Eurozone Tornado Chart

金利がピークをつけてもまだ喜べない

インフレが平均を上回り、成長が平均を下回るなか、依然として低い水準ではあるものの急速に上昇している金利は、債券市場における悪夢の元凶です。ファンダメンタルズを大まかに見ると、第4四半期も概ね同じ状況が続きそうです。ただ長期投資家の行動は、リターンが既に底を打った可能性を示唆しています。

市場が乱高下を続けた第3四半期を通じて、長期投資家は米国長期国債を大量に購入しました。残存年数7年超の債券保有額が既にかなり高水準にあるなか、こうしたアプローチは米金利のピークが近づいており、デュレーション・リスクを再び取っても安全、との強い確信を示しています(映画「ジョーズ」のテーマが聞こえてきそうです)。

同様に注目すべき点として、米国債市場の投資家の行動が、米連邦準備制度理事会(FRB)の方向転換を促し、少なくとも金利がピークを打つとしても、名目米国債市場以外には、楽観的なフローがほとんど見受けられないことがあります。インフレ連動米国債(TIPS)については、おそらく驚くほど力強いインフレに対するヘッジ手段として、引き続きプラスの需要を集めています — 詳細に関してはPriceStats sectionをご参照下さい。
ソブリン債であれ、それ以外であれ、よりリスクの高い債券へのフローは依然として異常なほど低調でした。第3四半期のフローは、イタリア国債(BTP)が下位13パーセンタイル、新興国市場(EM)の現地通貨建て債券は下位10パーセンタイル、米ハイイールド債は下位9パーセンタイルとなりました。最後に、おそらく最も意外だったのが、長期投資家が英国債(Gilt)を買い越したことで、5年ぶりに最大であったアンダーウェイトを削減し、結局、第3四半期最後の市場の動きによって窮地に追い込まれることになりました。

こうした行動パターンからは、投資家が米金利のピークを視野にポジションを追加することに満足しつつも、それが、よりリスクの高い債券資産に対する需要を喚起するとは、現時点ではあまり確信していないことがうかがえます。足元も先行きが不透明ななか、結局、投資家は米国債を、たとえ長期国債であっても、安全な逃避先と見なしています — 現在利回りは若干上乗せされています!

米国債に対する投資意欲は損なわれず

第3四半期にはFRBがさらに2回の大幅な利上げを実施しており、積極的なフォワードガイダンスで今後の利上げが示唆されています。ただピーク金利が上昇すれば、それに伴い投資家はピークが既に織り込み済みとの確信を強めます。第3四半期を通じて投資家は、すでに、これまでになく大量に保有している米国長期国債を積み増しました。足元の不透明なマクロ情勢と地政学リスクを踏まえると、この行動は単なるリスク回避と解釈されても、しかたがないかもしれません。しかし1-3年物米国債の売りは、安全資産への逃避というテーマにはそぐいません。むしろ、金利のピークが近づいており、この先の引き締めは、単にイールドカーブのさらなる逆イールド化につながることを見ているようです。

こうした見方をしているのは米国の投資家だけではありません。海外投資家の米国債に対する需要も同様に旺盛で、第3四半期中、そのペースは5年ぶりの高水準で推移しました。これまでのところ、こうした状況から見て、上昇の一途をたどる米ドルと米資産のヘッジコストの上昇は、海外投資家による米国債の購入について何ら障害になっていないことがうかがえます。

リスク回避の動きは、イールドカーブ全体を通じて米国債の需要パターンには反映されていないかもしれませんが、米社債市場では鮮明です。社債の流通市場における需要は、最低水準で推移しており、変化の兆候はありません。デュレーションへの関心が高まったからと言って、投資家のクレジットへの関心が復活するわけではないようです。したがって、景気後退リスクはまだ排除できません。

長期米国債とハイイールド社債に対する投資家需要の格差が拡大

The Gap in Investor Demand for Long-dated Treasurys and High-yield Credit Widens

欧州のソブリンリスクは上昇

ウクライナでの戦争によって現在も経済的混乱が続き、天然ガス価格は激しく変動しており、欧州金融市場を圧迫し続けています。米国市場では景気後退リスクが取り沙汰されていますが、それよりも、ユーロ圏の一部や英国がスタグフレーションに陥る可能性の方が高そうです。欧州中央銀行とイングランド銀行が引き締めサイクルのキャッチアップを開始するなか、欧州のソブリン債市場を取り巻く環境は、一部の国の政治動向により、さらに厳しさを増しています。

英国のスタグフレーション・リスクは数ヵ月前からくすぶっていたため、長期投資家が英国債保有額をほぼ5年ぶりの低水準にまで削減していたことに、驚きはありません。むしろ意外だったのは、投資家が第3四半期に、アンダーウェイト分の買い戻しを始めたことです。政府のミニ予算発表で直ぐに阻まれ、この動きはタイミングが遅すぎて本稿に記載した四半期別フローデータには反映されていません。イタリアの国債市場もスタグフレーションと政治リスクの圧力にさらされています。英国債のようには相場下落に備えていないものの、これらの長期投資家は、マクロ・リスクの高まりを反映して、四半期中に売却を開始しました。

英国とイタリアの国債保有はリスク上昇を反映

Holdings of UK and Italian Sovereign Bonds Reflect Increased Risk

新興国市場への需要回帰はまだ

全体的には、新興国資産は、FRBによる数十年ぶりの急速な利上げと行き過ぎたドル高から予想されるような、ストレスにさらされている兆候はあまり示していません。これは経済運営の改善とドル建て債務減少の証しでしょう。こうした回復力の高さに加え、インフレ収束の暫定的な兆候から新興国市場の引き締めサイクルが終盤を迎えつつあることが示された(これに関してはPriceStats sectionを参照)にもかかわらず、第3四半期には、現地通貨建て新興国ソブリン債に対する長期投資家の需要は戻ってきませんでした。

短期的(月次ローリング)フローはFRBが方向転換を開始するとの期待が高まるなか、8月末にかけて一時的に上昇しました。しかし、9月に入って米国のデータが改善し、FRBがタカ派姿勢を改めて確認したため、この動きは短命に終わりました。そのため、長期投資家による新興国市場への資金流入は、新興国(特に中南米)債券保有額が平均を下回っているにもかかわらず、再び平均水準を割り込みました。

新興国債への需要は乱高下

Demand for EM bonds Pops and Flops

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