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金融政策引き締めを見据えた株式投資戦略


吉橋 諒佑

運⽤部

ポートフォリオ・ストラテジスト


2022年1月の株式市場は年度初めに米国で中銀の金融政策のタカ派傾斜が市場に意識され、金融緩和の早期縮小観測が高まったことが引き金となり、グローバルに株式市場は軟調となりました。本稿では年初からの株式市場の動向を市場が大きく動いた米国株式市場を中心に振り返り、その後他の地域も含めて、今年度の市場見通しについて検討します。

冒頭で述べた通り、1月の株式市場は年初に米中銀の金融政策の引き締めに対しての警戒感の高まりから債券利回りの上昇につながったことが、株式市場の下落の背景となりました。とりわけこれまで大規模な金融緩和政策を受けてPERが大きく拡大していたグロース株は債券利回りの上昇に対して影響を受けやすい状態となっていたため、金利上昇に対して大きく反応しました(図表1)。そのため米国の主要な株式指数である、ダウ平均株価、S&P500、ナスダック指数の2022年1月の月間騰落率を比較すると、金利上昇の影響を受けやすいグロース銘柄の指数構成比率が高いナスダックの下落率が特に大きくなっており、今回の株価下落がバリュエーションの調整に由来することがわかります(図表2)

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足元では大幅な金利上昇に対する過度な懸念は一旦後退しています。しかし、インフレ懸念や金融政策の引き締めスタンスへのシフトを背景に、今年度は引き続き金利上昇圧力の継続が見込まれることから、バリュエーションの観点からは、割高感の強い銘柄を中心に引き続き株価への下押し圧力が働くと考えます。

一方で、経済活動の正常化の進展による業績成長の見通しは変わっておらず、来期以降の業績見通しが改善していくことは株価のサポート材料となる見込みです。下図はS&P500指数の予想EPSとPERの推移を、過去の平均PER水準とともに図示しています。PERの水準は足元の下落を踏まえてもなお過去平均よりも高水準であることから、上述の通りバリュエーション面からの調整リスクには注意が必要です。しかし業績見通しについては、景気回復基調が続く中で、予想EPSの上方修正が継続しています。そのため今後の米国株式市場の見通しについては、金利上昇に対するリスクはあるものの、業績成長が株価を下支えすることで、株式市場が大幅な調整に至るリスクは低いと予想します。

また米国以外の地域の株式市場についてはバリュエーション・業績の両面で米国株よりも見通しは堅調であると考えます。下図は先の米国と同様に、欧州・日本の各地域の代表的な株価指数における、予想EPSとPERの推移を、過去の平均PER水準とともに図示していますが、こちらの図から明らかなように、欧州・日本については足元のPERの水準は過去水準との比較で平均的な範囲に収まっており、バリュエーションの割高感は見られません。またこれらの地域においてはマクロ経済環境の改善に伴い、今年度は業績の上方修正が進むことが予想されることから、今後業績主導の株価上昇への期待は高いと考えます。

上述の通り今後の株式市場の見通しについては、全般に経済活動の正常化に伴う業績成長に支えられて堅調に推移すると予想します。しかしその一方で、市場の関心事となっているインフレ懸念の高まりは、金利上昇に伴うバリュエーション調整やコスト高による業績下押し圧力という形で株価にネガティブに作用するリスクがあります。そのため今年度は市場のボラティリティと銘柄の選別色が昨年度以上に高まっているということに注意が必要です。リスクを踏まえた投資戦略としては、上述の通り今年度ファンダメンタルズの改善が見込まれる地域や、インフレに耐性のある低ボラティリティや高クオリティファクター銘柄への投資が有効になると考えます。


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