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米国10年金利は2%を超えるか



横谷 宏史

運⽤部

マネージング・ディレクター


米国10年国債金利は、2022年1月21日終値で1.76%と昨年末時点から25bp高い水準となっており、昨年のレンジ上限(2021年3月末近辺)付近まで上昇しています(図表1)。インフレ懸念が市場の関心事となりFRBによる3月利上げ開始、年内4回の利上げが市場に織り込まれる中、米国10年金利が昨年のレンジを明確に上抜けて2%を超えていくのか、米国金利の見通しを点検していきます。

まずマクロ経済ですが、米国経済の回復基調はしっかりと継続していると考えて良さそうです。図表2は米国ISM製造業指数の推移ですが、景気の拡大と後退の境目である50を大きく越える水準で推移しており、オミクロン株の懸念が広がる中でも景気回復基調に腰折れの兆しはありません。足下では、減速が懸念されていた中国の景況感や供給制約による失速が懸念された半導体売り上げが持ち直したことも明るい材料です。2022年は高い貯蓄率を背景にペントアップ需要が景気回復を下支えすると見ていますが、潜在成長率を上回る経済成長が引き続き期待できそうです。

次にインフレの動向です。1月中旬に発表された12月PPIコアは前年比8.3%、CPIコアは前年比5.5%と伸びが加速しましたが、伸び率自体は事前予想の範囲内で市場のインフレ懸念の更なる加速は一旦免れた格好です(図表3)。しかしながら、失業率は3%台に低下して時間当たり賃金の伸びは加速、消費者のインフレ期待は依然高水準にあり、インフレ懸念は当面市場の重要なテーマとなり続けそうです。

12月に発表されたFOMCのDOTSでは、2022年内に3-4回(計0.75-1.00%)の利上げ予想が示されました。一方で足下市場では3月利上げ開始、年内4回の利上げがほぼ織り込まれており、FRBと市場の認識に大きなギャップはなさそうです。図表4は米国の長短金利差(2年-10年)を見ていますが、長短金利差が拡大した昨年初の金利上昇局面と異なり、足下で長短金利差は縮小しています。長短金利差が抑制されていることは、足下の局面ではFRBの市場とのコミュニケーションが比較的上手くいっていることを示唆しており、長期金利上昇がコントロールを失って加速していく可能性は低いと言えそうです。

図表5はFOMCメンバーのインフレ予想に対する確信度とリスク認識(上振れと下振れリスクのどちらが大きいと見ているか)を表しています。これを見ると、FOMCメンバーは自身のインフレ予想に確信が持てておらず、かつ予期せぬ上振れリスクを警戒していることが分かります。先行きのリスクはやはり予期せぬインフレの高まりおよびその長期化である、といえそうです。

図表6は金利見通しに影響を及ぼす要因をまとめたものです。金利上昇が予想されますが、FRBが市場の期待をある程度グリップできており、過度な金利上昇懸念は今のところ低そうです。したがって米国10年金利が2%を超えて上昇する局面はまだ先になりそうだと筆者は見ていますが、短期的に予期せぬインフレの高まりには警戒が必要でしょう。投資家にとって米国国債金利の水準(キャリー)の魅力度は高まっている一方で、投資戦略においては金利上昇に対する一定の警戒スタンス、リスクヘッジが必要であると考えます。