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過剰流動性によって生じた市場の歪みが示唆するもの

田畑 富郎

 

運用部/

ポートフォリオ・ストラテジスト


足元の金融市場は米国を始めとする主要国の中央銀行が金融システムの正常化に向けて出口戦略を探る展開が続いています。本年2月に見られた米国長期金利の急上昇やバリュー株(割安株)に対する物色の鮮明化は、今後の経済ファンダメンタルズの回復や安定化を先取りした投資家の選好の表れであると捉えることができます。2019年から2020年にかけての株式市場は大規模な金融緩和に支えられた、いわゆる金融相場の様相が強まり、利益成長期待の高い銘柄が株価のモメンタムを伴いながら市場全体を大きくけん引してきました。しかしながら、昨年の秋以降は、それまで見られていたモメンタム・グロースを重視した銘柄の物色にも変化の兆しがみられています。これは、今後想定される金利の上昇傾向が、バリュエーション面で割高感が目立つこれらの銘柄の株価の圧迫要因になることが既に意識されて始めていることの表れであるとも言えます。このような市場内での物色動向の変化を踏まえて、従来の金融相場から業績相場への移行を想定しながら、今後の市場環境の変化に備えるべき時に来ているかもしれません。

株式市場内での株価のバリュエーションは、各企業の財務状況や将来の利益成長、あるいは企業が内包するリスク要因、そしてそれらの情報に基づいて売買を行う投資家の行動バイアスによって変化していきます。特に現在の株式市場では、2008年の世界金融危機(GFC)以降長らく続いてきた金融相場において物色の中心となってきたグロース株(割高株)のバリュエーションが拡大し続けてきた結果、1999年のITバブル期に相当するともいわれる価格の歪み(割高株と割安株のバリュエーション格差)が生じています。上述のように、企業のファンダメンタルズは個別銘柄のバリュエーションの重要な決定要因となりますが、特によく知られている関係は、PBR(株価純資産倍率)とROE(株主資本利益率)の関係です。