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ESG株式投資の潮流と持続可能な開発目標

清⽔英彦

運用部/

ポートフォリオ・ストラテジスト


近年、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)を考慮したESG投資が急速に拡大しており、コロナ禍でその勢いは加速しています。本稿ではESG投資について基本的なポイントや潮流を再確認しつつ、最近、様々なメディアで取り上げられることが多い持続可能な開発目標(SDGs)との関係性についても考えてみたいと思います。

ESG投資はE、S、Gに代表される非財務情報を活用した投資で2006年に国連の責任投資原則(PRI)で提唱されたことやリーマンショックに対する反省等を背景に急速に拡大、普及してきました。図表1に主なESGの投資手法を挙げています。ESG投資の前身とされる社会的責任投資(SRI)ではポートフォリオからタバコ、ギャンブル、武器関連銘柄等の特定の銘柄群を除外するネガティブスクリーニングが主流でしたが、ESG投資ではESGの観点で良好な銘柄群に投資するポジティブスクリーニングや投資プロセスにESG要素を組み込むESGインテグレーション、さらに気候変動等の特定の投資テーマに特化した投資等、投資手法の選択肢も増え、特に日本では近年、ESGインテグレーションを中心に拡大傾向にあります。

ESGと投資パフォーマンスの関係性については、ネガティブスクリーニングが主流だったSRI投資では、除外されることが多いギャンブル、武器関連銘柄等が相対的にハイリスク・ハイリターンの傾向にある(いわゆる、Sinプレミアム)ことから投資リターンへのネガティブな影響が指摘されていましたが、投資手法の発展によりポートフォリオ全体に包括的にESG要素を組み込むことが可能になったことで、ESG投資では非財務リスクの軽減等からパフォーマンスへのポジティブな影響を指摘する声も増えています。

昨今、企業が経営目標の中に組み込むことも増えてきた国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)とESG投資を整合的に捉える向きもあります。図表2は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によるESGとSDGsについての考え方の一例です。投資家はESG投資によって長期的なリスクの軽減やパフォーマンスの改善、企業はSDGs/ESGを経営に取り込むことで新たな事業機会から恩恵を受ける可能性があり、投資家や企業にとってESGはSDGsを達成するための一つの手段と考えることもできそうです。

地理的には、EUを中心にタクソノミー、低炭素ベンチマーク等様々な規制やフレームワークが考案されているヨーロッパがESGに最も先進的な地域でファンド運用総資産でも8割以上を占めている一方(図表3)、米国や日本でもESGファンドへの資金流入が続いています。ESG投資が拡大する一方、投資商品の中身や開示についての問題点を指摘する声からEUでは既に金融商品のESG特性の開示を義務付けるサイステイナブルファイナンス開示規則(SFDR)が始まっており、今後、日本でもESGファンドの要件や情報開示の拡充が求められる可能性があります。