12月の金市場はボラティリティが著しく高まり、最終的に前月比0.6%の下落で月末を迎え、1オンス2,625ドルで1年を終えました。2ヶ月連続の下落にもかかわらず、金のスポット価格は2024年に27%という目覚ましい上昇率を達成し、S&P500種指数とブルームバーグ米国総合債券指数をともに上回りました1。
12月初旬に1オンス2,700ドルを超える水準でスタートした金のスポット価格は、底堅い労働市場と米大統領選後の10年物米国債利回りの持続的な上昇に支えられて米ドル指数が数カ月ぶりの高値圏で推移したため、1オンス2,600ドルまで下落しました2。12月のFOMCでは25ベーシスポイント(bp) のタカ派的な利下げが行われ、米連邦準備制度理事会(FRB)が2025年の利下げはあと2回のみ(中央値予想)との見解を示したことと相まって、金価格にさらなる下押し圧力がかかりました3。
「ビットコインと金の比率」が月初に史上最高値を記録したことから、米大統領選後のリスクオン基調のムードは依然として残っています4。ワールド ゴールド カウンシルの各国政府のデータによれば、中国人民銀行(PBoC)をはじめとする新興国市場の中央銀行による購入が回復を示しており、年末までの金価格の安定に寄与しました5。
今後は、ETFへの資金流入の回復、中央銀行の需要、金融緩和政策および積極的な財政支出が2025年における金のパフォーマンスを下支えすると予想されます。米国の金融政策の緩和の度合いが小さかったとしても、特に過去10年間に著しい成長を遂げたアジア太平洋地域における金の力強い需要ダイナミクスは今後も続く公算が大きいと思われます(図表1)
フロー:12月の世界の金ETF保有量は0.4%減少し、推計9.6トンとなりました。COMEX金先物における資産運用会社のネット・ロングポジションは12月末に184,260枚となり、また、6ヵ月移動平均は215,154枚と健全な水準を維持しました。この持続的なETFの需要動向の改善は、投資家の金に対する関心が依然として高いことを示唆しています6。
ファクター:12月初めの14日RSIは中立水準の相場を示していました。その後モメンタムは強まり、月次のCPIデータがインフレの高止まりを示唆したため、12月11日にピークに達しました7。FRBが12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で2025年の利下げ回数の減少を予想したため、モメンタムは弱まり続け、月末には中立水準まで後退しました8。一方、金融政策に関する引き締め的なフォワードガイダンスが浮上する中、金は50日移動平均を下回ったものの、月末には100日移動平均でサポートされました。
ファンダメンタルズ:PBoCは過去7か月にわたって様子見を続けた後、11月に金市場に復帰しました。9中国人民元の下落と経済的な苦境は、PBoCと中国の消費者双方による金消費を支え続けています。さらに、インド準備銀行(RBI)は、2024年に金準備を9%増加させました。RBIによる金の買い入れは12月で11ヵ月連続となり、月平均で6.6トンの購入となりました10。