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セクター市場見通し:2026年第3四半期

マクロ経済の状況は、深刻な地政学的ショックや供給側に起因するインフレが支配的だった環境から、より安定しながらも依然として不透明感が残る環境へと移行しています。その中で市場は、短期的なニュースに振り回されることなく、経済や企業収益のファンダメンタルズに再び注目するようになっています。

US Sector Strategy & Research team

インフレの上振れリスクや金融政策の不確実性は依然として残るものの、今後6~12カ月間は、米国のマクロ経済環境は底堅さを維持すると思われます。経済成長見通しはわずかに低下しているものの、安定化しつつある労働市場、引き続きおう盛な設備投資、そして米国の税制改正を含む予算措置調整法である「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」による財政政策の支援に支えられ、依然として堅調さを維持しています。

企業利益も明らかに底堅さを維持しています。直近の決算発表シーズンでは、S&P 500®指数構成企業は2021年第4四半期以降で最も高い利益成長率を記録し、好調な第2四半期の業績見通しを発表した企業の数は平均を上回りました。1

利益成長が予想される企業の裾野は大きく広がっており、過去3カ月間は市場パフォーマンスが情報技術セクターに集中していたにもかかわらず、2026年にはS&P 500®指数の大半のセクターが二けた成長を達成すると予想されます。これは、情報技術以外のセクターでもファンダメンタルズが改善している事実と、一握りのセクターが市場をけん引している事実との間にかい離が生じていることを浮き彫りにしています。2

一方、その水面下では、消費の底堅さにはばらつきが広がりつつあります。家計全体のバランスシートは依然として健全であり、過去最高水準の資産に支えられているものの、基調的な所得の動向は軟化しています。実質可処分所得は前年比で減少し、低・中所得者層はより大きなインフレ圧力に直面しています。3こうした状況の悪化が消費の伸びに重くのしかかり始めており、現時点では、消費の伸び率は昨年の2.6%から2.0%へと減速すると予想されます。4

消費以外の面では、活発な産業活動に伴い、景気循環の勢いが引き続き回復基調にあります。前四半期に顕著であった製造業主導の景気回復は、最近の米イラン戦争がもたらした供給の混乱によっても腰折れすることはありませんでした。直近の経済指標は、生産と新規受注が幅広く回復していることを裏付けており、米国が数年にわたる製造業の減速から脱却しつつあることを示唆しています。5こうした回復力は、価格に敏感でない人工知能(AI)関連の設備投資、資本投資に対するOBBBAの税制優遇措置、在庫の積み増し、貿易に関する不透明感の緩和など複数の支援要因によるものです。

今後を展望すると、底堅い経済成長と製造業におけるモメンタムの回復といった環境の下、より幅広いセクターが好パフォーマンスを上げる条件が整っています。ホルムズ海峡を通過するエネルギー供給の正常化が継続すれば、インフレ圧力が低下し、米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派的なスタンスを緩和する余地が広がり、投資機会がより幅広い分野へ広がる可能性があります。したがって、けん引役となるセクターは、現在主流となっているAIインフラ銘柄や超大型テクノロジー銘柄にとどまらず、設備投資の増加や産業の回復から恩恵を受け、かつバリュエーションがより魅力的な景気循環セクターへと拡大する可能性が高いと考えられます。

第3四半期については、全体的なセクター見通しを踏まえ、ポートフォリオのバランスを若干調整しつつも、情報技術セクターやAIから恩恵を受けるその他のセクターに対してポジティブな見方を維持しており、資本財、素材、金融セクターにおける投資機会が増えると見ています。消費関連セクターについては、需要環境の変化や価格決定力への圧力が高まりつつあることを踏まえ、より慎重なスタンスを維持しています。ディフェンシブセクターの中では、ヘルスケアセクターへの追い風が強まっており、労働市場が軟化した場合や、AIの収益化の遅れや政治的反発といったAI関連の調整局面が生じた場合でも、相対的なバリュエーションを下支えし、ポートフォリオの回復力を高める可能性があります。

図表1:セクター市場見通しの概要

セクター見解変更点とその根拠
情報技術強気短期的なポジション・リスクはあるものの、業績予想の幅広い上方修正やAI需要の高まりがファンダメンタルズを下支えしているため、「強気」に維持します。
コミュニケーション・サービス中立インタラクティブ・メディアの力強い成長は続いているものの、AI向け設備投資の増加、抑制されたフリーキャッシュフロー、セクター内で業績・株価モメンタムにばらつきが見られることがそのプラスを相殺しつつあるため、「中立」に引き下げます。
金融強気イラン戦争による景気拡大サイクルへの混乱が後退しつつある中、規制面の追い風と魅力的なバリュエーションが引き続き支援材料となっていることから、見通しを「中立」から「強気」に引き上げます。
不動産中立金利環境による逆風は依然として続いているものの、圧力を受けていたサブセクターのファンダメンタルズの安定化と魅力的なバリュエーションを踏まえ、見通しを「中立」へ引き上げます。
一般消費財弱気家計負担の高まりを背景とした個人消費の鈍化、実質所得の伸び悩み、および高金利が経済成長見通しに重しとなっているため、「弱気」に維持します。
生活必需品弱気生活必需品セクターを代表する小売企業が引き続き利益率の圧迫、限定的な価格決定力、割高なバリュエーションの状況にあるため「弱気」に維持します。
資本財強気AI主導の投資、設備投資を後押しする財政政策、防衛支出が引き続き幅広い分野での成長を支えていることから、「強気」に維持します。
素材強気製造業活動の拡大、産業用金属に対する構造的に高まる需要、力強い業績モメンタムに加え、バリュエーションも依然として妥当な水準にあることから、「強気」の見方を維持します。
エネルギー中立米イラン間で暫定和平合意が成立したことを受け、需給見通しがよりバランスのとれた状況になったことに加え、当セクターが年初来から堅調に上昇していることを踏まえ、今後の上昇余地が限定的になる可能性があることから「中立」に引き下げます。
公益事業中立長期的な需要要因についてはポジティブな見方を維持するものの、消費者の料金負担の高まりや金利ボラティリティを踏まえ、当面「中立」に引き下げます。
ヘルスケア強気魅力的なバリュエーション、マネージドケアのトレンドの改善、そしてバイオ医薬品分野における継続的で力強いイノベーションを背景に「強気」に引き上げます。

出所:State Street Investment Management。2026年6月26日現在。緑色の網掛けはポジティブな見方、オレンジ色の網掛けはネガティブな見方を示しています。

情報技術

四半期見通し:短期的なポジション・リスクはあるものの、業績予想の幅広い上方修正とAI需要の高まりがファンダメンタルズを支え、数年にわたる構造的な成長機会をもたらしているため、情報技術セクターに対する強気な見方を維持しています。

情報技術セクターの業績は引き続き堅調で、幅広い産業で好調を維持しています。AIインフラ整備の力強い勢いが続いていることに加え、エージェントAIが登場したことにより、3月以降6、セクターを構成する6つの産業全体で2026年および2027年の利益成長予想が上方修正されています。3月以降、主要ハイパースケーラー(超大型IT企業)による2026年の設備投資額に関するコンセンサス予想は、15%増加して7,720億ドルに達しており、2027年には1兆ドルに迫ると見込まれています。7これは半導体セクターにおける大幅な利益成長のけん引役となっており、2026年の利益は86%増加すると予想され、2027年の増益予想も3月以降でほぼ倍増し、44%に達しています。8

一方、AI開発が大規模言語モデル(LLM)のトレーニングから、自律的に複数の工程を実行するエージェンティック・システムの開発へと進化するにつれ、処理負荷の複雑さが増し、成長機会も計算能力にとどまらず、テクノロジー関連分野全体へと広がっています。こうした動向を受け、先端半導体パッケージング、メモリ、データストレージ、ネットワーク分野の企業には、大きな価格決定力が生まれています。コンピューターストレージ事業(ハードディスク・ドライブなど)は、引き続き恩恵を受ける主要な分野になると予想されており、平均売上総利益率は2023年の10%台半ばから、2027年には64%(コンセンサス予想)まで上昇すると見込まれています。9

ソフトウェア・セグメントも、第1四半期に再評価された後、安定化の兆しを見せています。第1四半期の決算発表シーズンで報告されたクラウド・コンピューティングの急速な売上の伸びや、大規模な商業案件の受注残高を受け、ハイパースケーラーによる大規模設備投資の投資利益率(ROI)に対する投資家の信頼が高まっています。初期の兆候からは、AI主導の需要が、AIを企業データと統合するソフトウェア企業、エージェンティック・ワークフローに関する知見を提示するソリューション提供企業、あるいは堅牢なサイバー・セキュリティを提供する企業に恩恵をもたらしていることも示唆されます。一方、業界の既存企業の最終価値をめぐる議論が展開される中で、ボラティリティの高い状態が続く可能性があります。既存企業の最終価値は、新規参入企業の動向や、既存企業が新たなテクノロジーを自社のビジネスモデルや運営モデルにどれだけ効果的に統合できるかによって左右されます。

S&P 500®情報技術指数が第2四半期に40%上昇したことを受け10、情報技術セクター内のポジションは積み上がっています。テクノロジー関連のETF(上場投資信託)には年初来380億ドルの資金流入があり、機関投資家の保有高は5年ぶりの高水準に迫っています。11 AIの収益化ペースが期待外れに終わった場合、こうした偏ったポジションが同セクターのボラティリティをさらに高める要因となる可能性があります。しかし、バリュエーションの低下はファンダメンタルズ面での下支え要因となっており、絶対ベースおよび相対ベースのバリュエーションは、5年間の中央値を大幅に下回って取引されています。12

大まかに言って、情報技術セクターは、持続的な成長サイクルから引き続き恩恵を受けると思われます。その成長サイクルでは、AIへの投資と導入の拡大基調が続き、同セクターの構造的な成長をけん引するとみられます。

コミュニケーション・サービス

四半期見通し:コミュニケーション・サービスセクターの評価を「中立」に引き下げます。インタラクティブ・メディアの力強い成長、デジタル広告需要の底堅さ、そしてAIの収益化は引き続き追い風となっていますが、AI設備投資の増加、債券・株式の新規発行、市場のけん引役の集中、そしてセクター内のモメンタムのばらつきにより、短期的なリスク・リターン特性がよりバランスのとれた状況となっています。

堅調なデジタル広告需要と、AIによる広告ターゲティングおよびユーザー・エンゲージメントの向上に支えられ、インタラクティブ・メディアは2026年も引き続き、コミュニケーション・サービスセクターの成長の大部分をけん引しています。13 一方、インタラクティブ・メディア以外の分野の成長見通しは、3月以降低下しています。14 市場のパフォーマンスはこうした不均衡を反映しており、均等加重平均ベースでの年初来のセクター・リターンはマイナス(-9.6%)であるのに対し、時価総額加重ベースのトータルリターンはインタラクティブ・メディア企業が大きなウェイトを占めているため、4.2%とプラスになっています。15 これは、セクターのけん引役が少数に限られていることを浮き彫りにしています。

インタラクティブ・メディアのファンダメンタルズは依然として堅調ですが、AIによる収益機会と資本集約度の高まりが相互に作用し、セグメント内の緊張が高まる傾向にあります。大手プラットフォーム各社は、第1四半期の決算発表において、AIの収益化が順調に進んでいることを報告しました。具体的には、Metaでは広告のターゲティングとプレースメント(配信先指定)の改善が16、AlphabetのGemini Enterpriseサービスでは月間の有料アクティブユーザー数が前四半期比40%増加したことが挙げられます。17 一方、AIの開発と導入を支えるために、企業はインフラ投資を積極的に進めており、こうした成果を生み出すには設備投資の拡大や債券・株式の新規発行がますます必要になってきています。

高水準の資本支出は長期的な成長に向けた戦略的なコミットメントを反映している一方、利益率の持続可能性や投資回収のタイミングに関して、短期的な不確実性も高めています。特に、利益成長率が2026年の35%18から2027年には4.3%へと大幅に減速すると予想されることを考えると、なおさらそれが当てはまります。

重要な点として、当セクターの長期的かつ構造的な成長要因に悪化は見られません。デジタル広告、AIの統合、クラウド関連の成長機会は依然として確固たる基盤を保持しており、今後も利益拡大を支え続ける可能性が高いと考えられます。とはいえ、パフォーマンスをけん引する銘柄の集中が進む一方で、成長を支える設備投資負担も高まっていることから、当セクターのリスク・リターン特性は、よりバランスのとれた状況になっていることが窺えます。

金融

四半期見通し:イラン情勢が解決段階に入り、経済成長やクレジットをめぐる下方リスクが市場予想よりも限定的であることが明らかになったことを受け、金融セクターに対する見方を「中立」から「強気」に引き上げます。

マクロ経済環境は、金融セクターにとって徐々に好転しています。政策金利の道筋は依然として不透明ですが、経済活動と企業利益は堅調に推移しており、企業の与信実績と貸出の伸びを下支えしています。これにより、短期的な景気後退への懸念は大幅に後退しています。

米イラン戦争の解決に向けて良好な動きが続いており、エネルギー価格の下落とインフレ率の低下という見通しに追い風となっています。これにより、市場が依然として織り込んでいる利上げシナリオの可能性が低下するか、少なくとも金利水準が維持される可能性があります。実際、当社の経済調査チームは、FRBが利上げではなく利下げを行う可能性を依然として見込んでおり、19利下げがイールドカーブをスティープ化させ、貸出の伸びを支える可能性があります。それにより、銀行の収益性を支えるより強固な基盤が構築されると思われます。重要な点として、イールドカーブが足元の水準から徐々にスティープ化した場合、銀行の純金利マージンが大幅に改善し、金利が逆風から緩やかな追い風へと反転することになります。

金融セクター全体における利益の底堅さも、同セクターに対する投資判断を強固なものにしています。当セクターは、安定したクレジットの質と事業を進める力強い勢いを引き続き示しており、貸出の伸びや資本市場における活動も改善傾向にあります。20投資銀行業務は、新規株式公開(IPO)の増加に伴い、徐々に改善の兆しを見せ始めています。また、直近の決算発表シーズンにおけるコメントでは、M&Aや資本市場における活動の回復が引き続き強調されました。これは、今後数四半期にわたり手数料収入が徐々に正常化に向かうことを後押しするものです。同時に、コスト管理の徹底と信用損失の抑制により、より持続可能な収益基盤が構築されています。

バリュエーションは、引き続き、投資判断を引き上げる重要な柱となっています。金融セクターは依然として、市場全体に比べて大幅なディスカウントで取引されており、相対的なバリュエーションは数年ぶりの低水準近くにあります。21 ファンダメンタルズが安定し、利益見通しも改善しているにもかかわらず、こうしたディスカウントが続いています。このかい離は、当セクターの株価が、がい然性の高いシナリオよりもはるかに厳しいマクロ経済シナリオを前提に評価されていることを示唆しています。

規制面の動向も引き続き追い風となっています。改良型補完的レバレッジ比率(eSLR)の導入や、資本規制の調整案(バーゼルⅢの最終的な実施ルールやグローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)の枠組みを含む)により、大手行の資本要件が緩和され、融資余力が拡大する可能性があります。さらに、これはバランスシートの拡大と株主への利益還元の増加を通じて、株主資本利益率(ROE)を押し上げる可能性があります。今年後半に最終的な規制の枠組みが明確になれば、金融セクターにとって好材料となる可能性があります。

依然としてリスクは残るものの、より管理可能な水準にあるとみられます。プライベートクレジットに関する懸念は、より広範なシステミック・ストレスには発展しておらず、リスクはクレジット・システム全体の中にとどまっています。同様に、預金獲得競争や資金調達コストは依然として高い水準にありますが、こうした圧力への理解は深まっており、足元の市場予想におおむね織り込まれています。クレジットの状況に著しい悪化が見られないことから、これまで市場心理に重しとなっていた下方シナリオが実現する可能性は低下しています。

全体として、金融セクターに対するリスクはもはや高まってはおらず、景気循環の上昇局面における潜在的な好材料によってバランスが改善しつつあるように見えます。下振れリスクが緩和され、好材料がより明確になっていることを踏まえると、金融セクターは今後6~12カ月間、他のセクターをアウトパフォームする可能性が高まりつつあると考えています。

不動産

四半期見通し:金利に関する不確実性が続いているものの、不動産セクターに対するスタンスを「中立」に引き上げます。その理由として、主要セグメントにおける需給動向が良好なことや、これまで圧力を受けていた不動産投資信託(REIT)サブセクター全体のファンダメンタルズが安定していることを受け、リスク・リターン特性がよりバランスのとれた状況となっていることが挙げられます。

利下げ期待の後退を受けて米国債利回りが上昇しており、22 通常であれば、資金調達コストの上昇によって不動産セクターへの圧力が強まる状況であるにもかかわらず、不動産セクターは第2四半期以降、堅調に推移しています。

同セクターのパフォーマンスの底堅さは、シニア向け住宅やデータセンター、さらには小売り向けおよび産業用REITにおける良好な需給バランスによって部分的に支えられています。データセンターREITはAI分野からのおう盛な需要が明確に見込まれる一方、シニア向け住宅の需要は抑制された供給を上回っています。23 また、小売り向けREITはおう盛なテナント需要、高水準の入居率、限定的な新規供給によって支えられています。さらに、産業用REITの需要も、電子商取引、先進的製造業、そしてデータセンターのサプライチェーン需要によって、再び加速しているとみられます。24

これまで問題を抱えていた複数のサブセクターのファンダメンタルズが安定化していることも、さらなる下支え要因となっています。米国の無線通信事業者の統合・再編はほぼ完了したとみられ、主要な通信タワーREITによる第1四半期報告のアップデートによると、合併に伴うリース解約の最悪期は終わりに近づいている可能性があります。25 オフィスREITの直近4四半期のネット需要超過は、2019年以降で初めてプラスに転じました。26 これは、コロナ禍後にオフィス・スペースを縮小した企業が現在、スペースの不足を埋めようとしているためと考えられます。需要の回復は、将来のリース活動を示す先行指標にも表れており、米国のオフィス物件における新規テナントの需要動向を追跡する「VTSオフィス需要指数」は第1四半期に、パンデミック後の最高水準に達しました。27

最近の堅調なパフォーマンスにもかかわらず、同セクターのバリュエーションは依然として市場全体に比べて16%のディスカウントで取引されており、過去の平均ディスカウント率である5%を大幅に上回っています。28 軟調なバリュエーションは、金利が依然として同セクターにとって逆風になっていることを反映していますが、利下げが再び実施されれば、マルチプル・エクスパンション(株価利益率の上昇)をきっかけにアウトパフォームする可能性があります。金利見通しが依然として不透明であることを踏まえ、現時点では不動産セクターに対して完全な強気スタンスに変えることはありません。ただし、ファンダメンタルズの改善とパフォーマンスの底堅さという両要因を考慮し、「中立」なポジショニングに移行します。

生活必需品と一般消費財

四半期見通し:生活必需品セクターと一般消費財セクターの評価は「弱気」を維持します。これは、両セクターにとって、ぜい弱な消費環境が需要、価格決定力、成長見通しを依然として抑制しているためです。

消費の状況は堅調に見えますが、その水面下ではぜい弱化が進行しています。インフレ率の上昇が実質所得の伸びに重しとなっており、実質所得は4月末に、2022年以降で初めて前年同月比で減少しました。29支出の伸びは、過去最長となる23カ月連続で所得の伸びを上回っており、その結果、貯蓄率は2022年半ば以来の低水準となっています。30

一方、自動車ローンやクレジットカードローンの延滞件数の増加が示すように31、金利の上昇は消費者に経済的な負担を強いています。個人貯蓄の減少や所得の伸び鈍化に加え、物価や金利の上昇による経済的なストレスの増大が相まって、年末にかけて、個人消費を押し下げる要因となる可能性が高いものと思われます。

こうした厳しい状況にもかかわらず、弊社のエコノミスト・チームは依然として、2026年の家計支出は2%成長すると予想しています32。ただし、その成長は社会経済階層やセクターによってばらつきが生じる見込みです。高所得世帯は、堅実な財務状況および投資資産の価格上昇に支えられ続ける一方、生活必需品におけるインフレの影響を強く受ける低・中所得層の消費者33には、過度に大きな負担がかかっており、個人消費、特に一般消費財の分野における下振れリスクが高まっています。

こうした圧力は、消費セクターに対してより厳しいファンダメンタルズ環境を作り出しています。生活必需品セクターにおいては、原材料費や物流コストの高騰に加え、プライベートブランドとの競争激化が、特に加工食品や大衆向けの分野で利益率を圧迫しています。企業や消費者がいずれも低価格品へ切り替える動きによって、同セクターは引き続き相対的な底堅さを発揮する可能性もありますが、販売数量の伸びの鈍化および価格決定力の低下に直面する可能性が高いものと思われます。

需要が鈍化すると、消費者は必需品以外の支出を選別して切り詰めるため、一般消費財セクターは概して影響を受け易くなるものと考えられます。2026年の予想利益成長率は、3月以降14.4%へと上方修正されたものの、修正幅は限定的で、アマゾンがその大部分を占めています34。アマゾンを除くと、予想利益は若干の下方修正で、今年のEPS成長率は市場平均を下回る8%と、全セクターの中でも最も低いセクター群の一つとなっています35。これほどかい離しているということは、収益基盤は数値そのものが示すよりぜい弱であることを示唆しています。

バリュエーションによる下支え効果は限定的です。競合環境は良好であるものの、セクターを代表する生活必需品小売業の予想利益成長率は情報技術セクターの半分以下にとどまる一方、予想PERは情報技術の約1.5倍という高バリュエーションにあることから、引き続き慎重な見方を維持しています36。一般消費財セクターの相対的な予想PERは過去5年間の下位20%付近にあるものの、市場全体を25%上回っていることに加え、成長見通しも弱いことから、現時点では魅力的な投資対象ではないと考えます37

資本財

四半期見通し:AIが牽引するインフラ投資、設備投資を促進する財政政策および防衛関連支出が、米国の産業基盤全般に幅広くおよぶ力強さを引き続き支えており、資本財セクターに対する強気な投資判断を維持します。

政策面での支援策が広範にわたる国内産業の復活を下支えしています。設備投資を促進する優遇措置、製造業の国内回帰および貿易を取り巻く不確実性の低下が、投資や工業生産活動を支えています。新規受注の増加は基礎的な需要が堅調であることを示しており、同時に在庫売上高比率は4年ぶりの低水準にまで低下したことで、在庫を積み増す動きが生まれています38

在庫水準が依然として低位にある中、工業生産は上昇傾向にあり、これは企業が在庫の積み増し需要および持続的な受注に対応するために生産量を拡大しているためです39。その結果、5月のISM製造業PMIは過去4年間で最高水準となる54.5へと上昇傾向を高めたものの、過去の景気サイクルのピーク水準には依然として及ばず、さらなる上昇余地があることを示唆しています40。同セクターにおける成長傾向の広がりは2026年および2027年の成長見通しにも表れており、同セクターを構成する12産業のうち、二けた成長を記録すると予想されているのは、2026年は6産業にとどまっているのに対し、2027年には9産業に拡大することが予想されています41

一方、大手クラウド事業各社は設備投資計画を拡大し続けており、2026年の見通しは3月時点から15%増の7,720億ドル、2027年の見通しは1兆ドルに迫り42、AIインフラ拡大サイクルの持続性を裏付けています。こうした支出の大部分は、ますます複雑化するデータセンター施設に必要な電力、冷却、建設能力など、幅広い産業基盤にわたる需要を支える実物インフラ設備に向けられています43

また、足元ではアンダーパフォームしているものの、航空宇宙・防衛産業の成長見通しは依然として明るい状況です。2027年度の防衛予算の承認をめぐる懸念が防衛関連銘柄に対する市場心理を圧迫し、原油価格の高騰が民間航空宇宙に関する需要見通しを曇らせているものの、航空機受注が10年ぶりの高水準に近づいていることを背景に44、生産の拡大および受注残の見通しは引き続き堅調です。さらに、下院歳出委員会が提出した歳出法案はベースとなる裁量的歳出要求額をわずかに下回る水準で防衛支出の拡大を下支えしており、防衛資本財の受注額は過去2番目に高い水準に達しています45

資本財セクターの予想PERは高バリュエーションではあるものの、国内産業の復活はまだ初期段階にあることを踏まえると、それほど懸念すべきことではありません。同セクターの高水準の予想PERは、利益のピーク水準およびその後の平準化が市場で織り込まれていることを示唆していますが、一方で、実績ベースのバリュエーションは依然として低位にとどまっています46。このようなかい離が生じている背景としては、将来の見通しが保守的に見積もられている可能性があり、構造的な追い風がより持続的な利益見通しを支えているため上方修正の余地は十分に残されており、バリュエーションに関する圧力は徐々に緩和されていく見込みです。

素材

四半期見通し:主要な工業用金属に対する堅調な構造的需要、米国内の製造活動の拡大、および主要な基幹産業の力強い利益の伸びを背景に、素材セクターに対する強気な投資判断を維持します。

戦術的な観点から見ると、素材セクターは、金などの貴金属が歴史的な上昇局面を経て調整局面に入るなど47、米イラン戦争およびそれに伴う金属・鉱業セクターの株価パフォーマンスの一時的な鈍化の影響を受けています。短期的には、実質利回りの上昇および米ドル高が下方圧力を生み出していますが、国家債務の増加、通貨価値の低下、および中央銀行による積極的な資産配分の持続により、構造的な需要は依然として堅調です。1オンスあたり4,000ドル弱という現在の金価格48および、弊社Gold Strategyチームによる今年末の予想金価格(基本シナリオ:1オンスあたり4,750~5,500ドル49)を踏まえると、スポット価格および鉱業株の利益には上昇余地があると見ています。

工業用金属における構造的な需要要因は、このセクターに対する投資家の確信度を支え続けています。電化の進展、電力網インフラへの投資、そしてAI関連の電力需要の拡大を背景に、銅やリチウムといった金属に対する見通しは引き続き良好です。さらに、こうした需要は過去のサイクル以上に持続性が高まっていることが示唆されています。これは、銅の供給ひっ迫に加え、AIインフラ整備の重要な構成要素であり、かつ蓄電池に不可欠の原材料であるリチウムへの需要が高まっている状況下で生じています。こうした変化により、素材セクターの一部は純粋な「シクリカル」性を弱め、価格維持力および安定的な利益率を支える持続的な成長テーマに結びつける度合いが強まるという見方が広がっています。

また、米国製造業PMIが上昇を続けていることは、米国産業の復活の勢いがさらに増していることを示しており、こうした拡大局面では素材セクターがその恩恵を受けます。イラン戦争に起因する供給の混乱が解消されれば、米国の化学品価格は正常化に向かう可能性があるものの、米国の製造活動の拡大に伴い、工業生産に必要な化学品に対する需要が押し上げられることから底値が安定し、さらに上昇する余地もあると見ています。

バリュエーションの観点から見ると、同セクターは引き続き、利益見通しに比べて魅力的な投資機会を提供しています。今後12カ月間のPERに基づくと、素材セクターは過去のバリュエーションに比べて良好な水準にあり、過去5年間対比の現在の水準は46パーセンタイルに位置しています50。また、素材セクターは全セクターの中でも特に良好な成長見通しを維持しており、2026年度の予想EPS成長率は40%と、全セクター中3番目に高い水準となっています51。利益モメンタムも引き続き堅調で、化学および金属・鉱業セクターの業績向上を背景に、第1四半期末以降、2026年および2027年の予想EPS成長率は大幅に上方修正されています52

適正なバリュエーションおよび利益見通しの向上が相まって、同セクターの魅力度は高まっています。全体として、素材セクターに対する投資判断は、景気循環的な回復に加えて構造的なテーマにますます焦点が当てられるようになっており、これが弊社の強気な投資判断の根拠となっています。

エネルギー

四半期見通し:年初来の堅調な株価上昇および地政学的リスクの急激な低下により、エネルギーセクターのリスク・リターン特性が均衡を取り戻してきたことを受けて、同セクターの投資判断を強気から中立へ引き下げます。

エネルギーセクターは、インフレやエネルギー価格に対する感応度が高く、市場全体との相関が低いことから53、引き続きコア株式ポートフォリオに分散効果をもたらします。米イラン間の合意に対する楽観論が高まり、それに伴いエネルギー価格が下落した一方で、今年のエネルギーセクターの利益成長は、ホルムズ海峡の海上輸送量の段階的な正常化や1990年以来の最低水準にあるエネルギー在庫の積み増しに伴う堅調な需要が引き続き支えています54

ー価格の下限は紛争前の状況と比べて上昇しており、この動向が同セクターのフリーキャッシュフローを支え続けています。実際、エネルギーセクターのフリーキャッシュフロー利回りは8.4%と市場全体の3.5%を上回っており、GICS®11セクターの中で最も高い水準を誇っています55

こうしたプラス面はあるものの、米イラン間で結ばれた暫定和平合意により、エネルギー供給が長期的に途絶するというテールリスクが大幅に低下し、3カ月前に表れたエネルギーセクターにとってのプラス材料はなくなりつつあります。一方、中期的な需要の上振れ余地は限られており、和平合意が維持され、今後数カ月で中東の輸出および生産が正常化すれば、エネルギー市場は早ければ2027年にも需給均衡に戻る可能性があります。

ポジショニングの観点から見ると、エネルギーセクターの好調なパフォーマンスに伴い、同セクターに対する投資家のエクスポージャーは大幅に増加しました。エネルギーETFには年初から119億ドルの資金が流入しており、これは全セクターの中で2番目に多い水準です。また、機関投資家の保有比率は過去5年間の中で65パーセンタイル近くの水準まで上昇しており56、セクター再配分によるさらなる上昇余地はほとんど残されておりません。

エネルギーセクターは、1年前よりも構造的に高い地政学的リスク・プレミアムによって支えられているものの、需給見通しがより均衡化していることに加え、年初来で大幅に上昇していることから、今後の上昇余地は限定的です。こうしたことは2026年下半期を迎えるにあたり、我々の中立の投資判断を支持しています。

公益事業

四半期見通し:公益事業セクターの長期的な需要をけん引する要因については引き続き前向きな見方を維持します。もっとも新たな政策動向や電力料金の負担可能性(アフォーダビリティー)をめぐる圧力、ならびに金利のボラティリティを踏まえ、短期的にはよりバランスの取れたスタンスをとるべきと考え、投資判断を強気から中立へ引き下げます。

公益事業セクターは引き続き、長期的な利益見通しを支える構造的な需要要因の恩恵を受けています。AI需要を背景とするデータセンターの拡充が電力需要を加速させているほか、運輸、産業、住宅の各セクターにおける電化の潮流が、公益事業セクターの料金算定の基盤となる資産の拡大機会を広げています。さらに送電網や配電網の近代化に向けた継続的な投資は、同セクターが着実な利益成長を実現する可能性を高めています。こうした動向は、トレンドラインを上回る持続的な成長見通しを支えており、コンセンサス予想では2027年にかけて9.4%の利益成長が見込まれています57

一方、短期的な事業環境は厳しさを増しており、リスクのバランスも変化しています。金利上昇や政策動向、および料金負担能力(アフォーダビリティー)の圧力の高まりを背景に、同セクターの相対的な魅力度は低下しています。米10年債利回りが4.4%を上回る中、公益事業セクターの足元の配当利回りは2.8%と、長期国債利回りを170ベーシスポイント近く下回っており、過去5年間の平均も大幅に下回っています58。こうした変化により、同セクターのインカム特性の魅力度は低下しています。とりわけ、米国経済が堅調で企業の収益力も高い現状では、投資家は景気敏感な成長機会を選好する傾向が強まります。

さらに重要なのは、州レベルの選挙が相次ぐ中、電気料金の負担可能性(アフォーダビリティー)がより大きな逆風として意識されるようになっています。例えば、ペンシルベニア州ではシャピロ州知事が再選に向けて圧倒的に優位な位置につけているにもかかわらず、電力料金の負担軽減(アフォーダビリティー)を最優先課題として掲げ続けています。それにより電力会社の利益をより厳しく精査するとともに、低コストの資金調達を活用して、料金算定基準となる支出をより説得力のあるものにするよう電力会社に求めています59。こうした政治的な論調により、大規模な電力需要に対応したプロジェクトがシステム費用の増加や家計の電気料金負担増につながると見なされた場合、より厳しい監視にさらされるリスクが高まっています。法的な障壁や州知事の行政権限の限界を考慮すると、幅広い政策変更が即座に実施されることを必ずしも意味しませんが、中間選挙を控えて政治的な論調が激化すれば、同セクターのバリュエーションに下方圧力がかかる可能性があります。

こうした動向は、すでに市場パフォーマンスにも表れています。本質的な成長見通しの変化がほとんどないにもかかわらず、公益事業セクターは3月以降、パフォーマンスの最も低いセクターの一つとなっています60。このように、利益見通しが安定していてもバリュエーションが低下するというかい離現象は、利益見通しが根本的に悪化したというより、むしろ投資家心理の変化を浮き彫りにしているものと考えています。

同セクターの長期的な成長要因は依然として健在であるものの、金利上昇やアフォーダビリティをめぐる政治的な監視強化によって短期的な逆風が強まっていると見ています。こうした要因は、短期的には投資家心理やバリュエーションの下押し要因となる可能性があります。その結果、構造的な成長と景気循環的な圧力との間でよりバランスの取れた見通しを反映させるため、投資判断を強気から中立へ引き下げます。

ヘルスケア

四半期見通し:魅力度の高いバリュエーション、マネージドケアを取り巻く動向の改善、およびバイオ医薬品分野における強力なイノベーションの継続により、リスク・リターン特性の魅力度が一段と増していることを踏まえ、ヘルスケアセクターに対する投資判断を強気へ引き上げます。

ヘルスケアセクターの見通しは、今後の成長を牽引する一連の明確な材料が投資家の関心を再び高め得ることから、前四半期に大きく向上しました。複数の疾患領域における最近の臨床開発の進展により、同セクターのイノベーション・パイプラインに対する投資家の信頼度が高まっています。

次世代の肥満治療分野では、顕著な体重減少効果のみならず、心血管疾患の危険因子の明らかな改善をもたらすことも実証されています61。アルツハイマー病の研究でも、より効果的に薬剤を脳に届けることを目的とした新技術が進展しており62、ゲノム編集に関する初期データから、コレステロールを持続的に低下させる可能性63が示唆されています。また、先ごろ開催された2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された最新の画期的な成果の数々は、早期乳がん、非小細胞肺がん、膵臓がんなど、重篤な疾患領域におけるイノベーションの加速を裏付けています64。こうした進展の多くはさらなる検証が必要とはなるものの、現在の開発が幅広い分野で進んでいることは投資家心理を刺激し、今後数四半期にわたり同セクターのパフォーマンスを支える要因となる可能性があります。

ここしばらく同セクターの足かせとなっていたマネージドケアについても、安定化の兆しが見え始めています。最近のデータによると、医師による診察や医療処置を含む医療サービスの利用増加ペースはもはや加速しておらず65、利用動向は正常化しつつあります。こうした傾向は、マネージドケア企業の利益率見通しを向上させ、利益見通しの可視性を高まる要因となります。

機関投資家は、直近のファンダメンタルズの改善に注目しており、機関投資家による1カ月間の買い越し額は5年ぶりの高水準に近づいています66。機関投資家ポートフォリオでは現在アンダーウェイトとなっていることも相まって67、ファンダメンタルズが改善し続ければ、同セクターは再評価される条件が整いつつあるものと思われます。

下半期に入ると、投資家は2027年の利益見通しに対する注目度をますます高めることが見込まれます。2026年の利益はわずか2.6%という小幅成長が見込まれる一方、2027年のヘルスケアセクターは現在、全セクターの中でテクノロジーセクターに次ぐ第2位の利益成長率(約19.3%)が見込まれています68

薬価やマネージドケアの診療報酬に関する政策の不確実性は依然として懸念材料である一方、医療処置の増加ペースが正常化し続けていることから医療機器に対する需要環境は依然として弱含んでいます。もっとも、こうしたリスク要因の多くは株価にすでに織り込まれていると見ています。ヘルスケアセクターの予想PERの市場全体に対する相対バリュエーションは、過去15年間で下位20%の水準にまで低下しており、現在の水準では買いの投資機会を提供する可能性があるとの見方を裏付けています69

全体として、ヘルスケアセクターのリスク・リターン特性の魅力度は一段と上昇していると見ています。歴史的低水準にある相対バリュエーション、マネージドケアのファンダメンタルズの改善、およびバイオ医薬品分野における力強いイノベーションが同セクターを後押しする環境となっており、投資判断を強気へ引き上げる根拠となっています。

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