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インサイト

AIにどう投資すべきか

  • 人工知能(AI)がニュースの見出しを賑わせていますが、AIを定義することや、単一の投資エクスポージャーでAIの可能性を完全に捉えることは困難です。
  • AIは単なるチャットボットの域を超え、半導体、クラウドコンピューティング、自動運転車といった先進技術によって支えられ、またそれらの技術で活用されています。
  • AIが進化し、活用範囲が拡大するにつれ、投資家はより広い視野に立ち、AIへのより多様なエクスポージャーを追求したくなるかもしれません。
Global Head of Research

先日、 Alexaに「AIとは何か」と尋ねたところ、以下の答えが返ってきました:

「Wikipediaで以下の記述を見つけました: AIとは、人間や他の動物が示す知能とは対照的に、機械が示す知能(情報の認識、統合、推論)のことです。知能には、学習、論理的思考、一般化、意味の推論といった能力が含まれます」

もちろん、Alexaは簡単に「私がAIです」と言うこともできたでしょう。しかし、AIが私たちの経済の多くの部分にいかに深く根付き、密接に結びついているかを考えると、音楽を再生したり天気予報を伝えたりするのに用いる消費者向けデバイスとしてAIを定義するのはあまりに視野が狭すぎると思われます。

AIは変革を促す原動力であり、セクターではない

AIは特定のセクターや産業ではなく、むしろ社会に影響を与える変革を促す重要なカタリストであると考えることは投資家にとって有益です。

AIは、ハイパーコネクティビティ、スーパーコンピューティング、生物学的イノベーションと並んで、経済がより少ない投入物でより大きな価値を創出し、経済成長を促進することを可能にする技術的な柱です。実際、 International Data Corporation(IDC)は、AIを導入し、既存の事業運営でAIを活用し、より良い製品/サービスを提供するための企業投資が2030年までに世界経済に累計22.3兆ドルの影響をもたらし、2030年の世界GDPの3.7%を占めると予想しています1

図表1:AIは急成長を遂げると予想されている

2030年までの世界経済へのAIの寄与(予想)

AI投資が2030年の世界GDPに占める割合(予想)

出所:「AI投資は経済成長を促進し、世界の生産性向上とイノベーションを後押ししよう」、IDC、2025年4月1日時点

LLMからAIスタックへ

AIはChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)にとどまらず、他の先進技術(半導体、クラウドコンピューティングから医療機器、自動運転車まで)によって支えられ、またそれらの技術で活用されている変革的な技術です。イノベーションを後押しする生産性向上ツールとして、AIは高度なインプットを必要とします。また、AIの全体的なエコシステムは、より広範なAIスタック、またはビルディングブロックが積み重ねられたAIバリューチェーンの一部としての、相互に強化し合う機能と技術に分解できます。

「AIスタック」とは、AIの各レイヤーを利用可能にするすべての技術と機能を含みます。AIスタックの様々なレイヤー(インフラ、モデル、アプリケーション)には、AIエンジンを稼働させるための専用のソフトウェア、ハードウェア、およびサービスが含まれます。

図表2:AIスタックのレイヤー

コンポーネント

AIが必要とする膨大なコンピューティング能力を生み出す半導体に加え、データセンターや、バリューチェーンのさらに下流でスタックをサポートするために必要なその他の重要なAIインフラ

クラウドサービス

データストレージとコンピューティングパフォーマンスを大規模に提供するクラウドサービスプロバイダ

研究者・研究所

エンドユーザー向けアプリケーション構築の土台となるAI大規模言語モデルの開発に重点を置いた研究

アプリケーション

AI技術を利用して、機能やサービスを実行するユーザー

出所:米国ETFリサーチ、2026年1月1日時点。

図表3:製品・サービスへのAIの統合

製品またはサービス

製品またはサービス

仮想現実(VR)

AIを活用してモーショントラッキングデータを生成し、仮想現実/拡張現実体験をユーザーの視点とシームレスに融合させることができます。

ウェアラブル端末

機械学習アルゴリズムとデータセットを活用することで、ユーザーがどのように歩き、座り、動き、他者と交流しているかを理解し、ユーザーの気分、身体的反応、エネルギーレベル、さらには周囲の状況(コンテキスト)に関する手がかりを提供します。それらはコンシューマー、軍事、および医療用途に利用できる可能性があります。

ロボティクス・自動運転車

自動運転車はAIを活用し、センサーから収集したデータを基にリアルタイムの意思決定を行います。

スマートビルディング/ファクトリー/グリッド/ボーダー

AIを活用したスマートデバイスは、相互に作用・通信し、人間の習慣を学習することができます。

デジタルコミュニティ、プラットフォーム、ゲーミングアプリ

AIツールは、ソーシャルメディアプラットフォームの機能を拡張し、テキストおよびビジュアルコンテンツの制作、ソーシャルメディア監視、広告管理、インフルエンサー調査、ブランド認知度キャンペーンなど様々なユースケースで大規模にソーシャルメディア活動をリードするのに役立ちます。

エンタープライズコラボレーション

AIソリューションをサポートするための情報の運用・保存に必要な大規模データセットストレージの所有者と運営者。

データストレージおよびコンピュートコンポーネント

コンピューターハードウェアには、AIモデルのトレーニングに必要な膨大なコンピューティング能力を生み出す半導体と、データの保存に必要なストレージシステムが含まれます。

クラウドサービス

クラウドサービスプロバイダは、データストレージとコンピューティングパフォーマンスを大規模に提供します。

AIおよびデータ処理ソフトウェア

消費者と企業向けにAIベースのソフトウェアを開発する企業は、データの解釈と収集を支援できます。

研究者・研究所

AI大規模言語モデルの開発に重点を置いた研究は、エンドユーザー向けアプリケーションの構築をサポートします。

データセンター

AIはモデルの実行と計算処理のために大規模なデータセンターとハードウェアを必要とします。

アプリケーション

アプリケーションを開発する企業はAIを活用しています。

デジタル資産

ブロックチェーン上で行われるデジタル資産取引の分析、アルゴリズム取引、およびコントラクト検証にAIを活用できる可能性があります。

出所:米国ETFリサーチ、2026年1月1日時点。

純粋なAI投資エクスポージャーをピンポイントで狙うことは、望ましく思えるかもしれませんが実際は困難であり、たとえ純粋なエクスポージャーというのが存在するとしても、AIのポテンシャルを完全には捉えていないかもしれません。潜在的な投資機会は非常に大きいため、AIスタック全体に注目することで、より広い視野で検討すべきだと考えます。

一部の推定では、AI向けデータセンターの容量需要を支えるための資本投資/設備投資は2030年までの累計で3~8兆ドルに上る可能性があります(図表4)。このように、AIスタックの複数の領域にまたがって推計値に大きな幅があることは、AI構築がまだ初期段階にあることと、最終的な生産性向上は(非常に大きなものとなる可能性がある一方で)まだ完全には計測できないことを示唆しています。

AIが経済成長、生産性、企業利益にどのような影響を与えるかはまだ完全に把握できていません。また、どの企業がAI競争をリードする上で最も有利な立場にあるのか、またどのようなユースケースや技術が牽引役として浮上するのかも不明です。しかし、AIによって生まれる投資機会への資金投入が大きいこと、そして今後もその傾向が続く可能性があることは確かです。

図表4:AI主導の投資に関する想定シナリオ

AIが牽引する世界のデータセンター設備投資総額(カテゴリーおよびシナリオ別、2025-2030年予測、兆ドル)

出所: McKinseyデータセンター設備投資TAMモデル; McKinseyデータセンター需要モデル。注: 四捨五入により、数値の合計が一致しない場合があります。データセンターインフラ: ITサービスとソフトウェア(オペレーティングシステム、データセンターインフラ管理など)は、他のコンポーネントに比べて必要な設備投資が少ないため除外されています。IT機器にはサーバー、ストレージ、ネットワークインフラが含まれます。また、IT設備投資は4年ごとのAIアクセラレータ―の更新を考慮に入れています。電力設備投資は22‐32億ドル/ギガワットを想定し(発電・送電コストを含む)、様々な電源構成(ガス火力のみ、ガス火力とストレージの組み合わせ、太陽光など)と地域ごとのコストの差を考慮に入れています。ほとんどのAIデータセンターは50メガワット超規模となり、送電網と接続されると予想されるため、配電コストは無視されています。

AI関連のニュースが飛び交うなかでFOMO(取り残される恐怖)を回避


多くの投資家にとって、 AIはエキサイティングで注目すべきトレンドです。AIが大きな話題となっているのは事実であり、無視しがたい一方、AIの経済効果の全容は今のところまだ未来予測の域を出ないというのが実際のところです。

AIが進化し続けるなか、エコノミストやコンサルタントは、AIが成長とマクロ経済に与える影響の大きさを議論し続けることでしょう。しかし、AIスタックが拡大し、より多くのイネーブラー(実現要因)や潜在的受益者が含まれるようになるにつれ、AIがそれらの利益をどのように促進するかという点での可能性の幅が広がっています。


巨大ハイパースケーラーだけでなくAIスタック全体に投資することで、幅広いセクターや産業にまたがる変革的な成長ドライバとしてのAIの完全なポテンシャルをより上手く捉えることができるかもしれません。そのためには、イノベーションに焦点を当てたグローバルで広範なマルチセクター戦略を追求したり、個別のAI関連産業(ソフトウェア、半導体、発電事業者など)を組み合わせたりして独自のAIスタックを構築することが考えられます。