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通貨高が引き続きアジア債券のリターンを支える

アジア債券市場は2026年8月に堅調なパフォーマンスを示しました。iBoxx ABF Pan-Asia Bond Indexのリターンは、米ドルベース・為替ヘッジなしで1.45%となり、米ドルベース・為替ヘッジありの0.44%を大きく上回りました。全体として、アジア各国通貨の対米ドルでの上昇が、為替ヘッジなしリターンに1.02%寄与しました。こうした通貨高が、2026年8月のアジア債券投資のパフォーマンスを押し上げる主な要因となりました。

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市場概況

金融政策面では、韓国銀行が2026年8月に政策金利を0.25%引き上げ、3.0%としました。これは2会合連続の利上げであり、3年以上ぶりの連続利上げとなります。インフレ率が目標を上回り続ける中、経済成長も市場予想を上回ったことが背景です。フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)も同月に政策金利を0.25%引き上げて5.0%としました。これは年初来3回目の利上げであり、変動の大きい原油価格、エルニーニョ現象に関連した農産物価格上昇リスク、および賃金調整の可能性を理由として挙げています。


一方、その他のアジア地域の中央銀行は政策を据え置きました。インドネシア銀行は政策金利を5.75%に据え置き、タイ銀行は全会一致で政策金利を1.0%に維持しました。また、マレーシア国立銀行は翌日物政策金利を2.75%に据え置き、中国人民銀行(PBOC)は1年物ローンプライムレートを3.0%に維持しました。さらに、香港金融管理局(HKMA)は香港ドルの米ドル連動相場制度の下で、政策金利を4.0%に据え置きました。


10年国債利回りは当月、国によって異なる動きを見せました。インドネシア(▲32bp)、フィリピン(▲12bp)、中国(▲3bp)、韓国(▲2bp)では低下した一方、マレーシア(+16bp)、タイ(+8bp)、香港(+6bp)、シンガポール(+1bp)では上昇しました。
アジア地域の高利回り市場の一部で利回りが低下したことは、為替ヘッジを行う投資家のリターンを下支えしました。一方で、為替ヘッジを行わない投資家にとっては、アジア各国通貨が米ドルに対して総じて上昇したことが、パフォーマンスを左右する最も重要な要因となりました。

市場

現地通貨建てリターン

為替リターン(FX)

USDベースのトータルリターン

韓国

0.2%

4.2%

4.4%

インドネシア

2.2%

1.7%

3.9%

マレーシア

-0.7%

1.5%

0.8%

シンガポール

0.1%

0.7%

0.8%

中国

0.3%

0.4%

0.7%

タイ

0.0%

0.7%

0.7%

フィリピン

1.9%

-1.6%

0.3%

香港

-0.1%

0.0%

0.0%

成長加速とインフレ圧力を受け、韓国が利上げを実施

韓国(米ドルベース・為替ヘッジなし:4.4%)

韓国の10年国債利回りは2026年8月に2bp低下しました。一方、韓国ウォンが4.2%上昇したことにより、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは4.4%となりました。製造業景況感は引き続き拡大局面にありましたが、S&Pグローバル購買担当者景気指数(PMI)は53.1から52.3へ低下しました。国内受注の伸びが鈍化したものの、半導体および人工知能(AI)関連需要に支えられ、輸出受注は2020年11月以来で最も力強い伸びを記録しました。2026年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比3.7%となりました。一方で、輸出主導の景気回復が続く中でも、労働市場は比較的軟調な状況が続いています。インフレ率は2026年8月に約3.1%へ上昇し、韓国銀行の物価目標である2.0%を引き続き上回りました。このような環境の下、韓国銀行は2026年8月27日に政策金利を0.25%引き上げ、3.0%としました。これは2会合連続の利上げであり、根強いインフレ圧力、予想を上回る経済成長、および金融システム安定化リスクへの対応を理由として挙げています。

インフレ率は上昇も、引き続き目標レンジ内で推移

インドネシア(米ドルベース・為替ヘッジなし:3.9%)

インドネシアの10年国債利回りは2026年8月に32bp低下し、インドネシアルピア建てリターンは2.2%となりました。さらに、ルピア高が1.7%のプラス要因となり、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは3.9%となりました。総合インフレ率は2026年7月の前年同月比2.88%から同年8月には3.19%へ上昇し、コアインフレ率も2.92%へ上昇しました。ただし、いずれもインドネシア銀行(Bank Indonesia)の目標レンジである1.5%~3.5%の範囲内にとどまりました。2026年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比約5.29%となり、個人消費と政府支出が成長を支えました。製造業の景況感はやや弱含みました。S&Pグローバル製造業PMIは50.2から49.8へ低下し、生産と雇用の減少を背景に景況感がわずかに縮小圏へ入りました。一方で、新規受注は3カ月ぶりに小幅ながら増加し、企業の景況感は7カ月ぶりの高水準となりました。インドネシア銀行は2026年8月、政策金利を5.75%に据え置きました。堅調な経済成長が続く一方で、通貨およびインフレに関するリスクも依然として存在していることから、そのバランスを考慮した判断とみられます。

堅調な内需と輸出がGDP成長を下支え

マレーシア(米ドルベース・為替ヘッジなし:0.8%)

マレーシアの10年国債利回りは2026年8月に16bp上昇し、マレーシアリンギット建てリターンは▲0.7%となりました。一方で、リンギットが1.5%上昇したことから、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは0.8%となりました。2026年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.0%となり、第1四半期の5.4%から加速しました。堅調な国内需要、テクノロジー関連投資、および電気・電子製品の好調な輸出が成長を支えたほか、失業率も3.0%と低水準を維持しました。製造業活動は引き続き拡大圏を維持したものの、その勢いはやや鈍化しました。S&Pグローバル製造業PMIは50.7から50.2へ低下し、新規受注および生産の伸びが緩やかになったことが示されました。一方で、雇用は4カ月ぶりに増加へ転じ、物価上昇圧力も引き続き抑制された状態にありました。2026年1月から7月までの総合インフレ率およびコアインフレ率の平均は、それぞれ1.8%、1.87%でした。こうした中、マレーシア国立銀行(Bank Negara Malaysia)は翌日物政策金利を2.75%に据え置きました。抑制されたインフレ率と堅調な経済成長、さらには海外からのコスト上昇圧力とのバランスを考慮した判断とみられます。

シンガポール、引き締め的な為替政策を維持

シンガポール(米ドルベース・為替ヘッジなし:0.8%)

シンガポールの10年国債利回りは2026年8月に1bp上昇しました。一方で、シンガポールドル高による0.7%のプラス寄与が加わり、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは0.8%となりました。民間部門の景況感は引き続き堅調でした。S&Pグローバル・シンガポールPMIは59.2から59.4へ上昇し、新規受注の力強い増加と雇用拡大に支えられました。ただし、生産の伸びは鈍化し、過去12カ月で最も低い伸び率となりました。2026年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比5.9%となりました。また、2026年6月時点の失業率は2.0%と低水準を維持しています。最新のインフレ指標では、2026年7月の総合インフレ率は2.2%に上昇しました。シンガポール金融管理局(MAS)は、シンガポールドル名目実効為替レート(S$NEER)の政策バンドにおける上昇ペースを以前引き上げた後も、引き続き引き締め的な為替政策スタンスを維持しました。当局は輸入インフレと高止まりする投入コストの動向を引き続き注視しています。

海外需要は回復も、国内需要は引き続き低迷

中国(米ドルベース・為替ヘッジなし:0.7%)

中国経済は2026年8月、2026年7月の底打ち後に工業部門の改善が見られるなど、安定化の兆しを示しました。一方で、国内需要は引き続き低調であり、経済成長は輸出およびテクノロジー関連分野に依存する状況が続きました。中国国家統計局(NBS)の製造業PMIは49.2から49.8へ上昇しました。依然として2カ月連続で50を下回ったものの、景況感の縮小幅は大きく改善しました。生産、新規受注、新規輸出受注はいずれも拡大圏に回復し、AI関連投資サイクルの継続を背景に、設備製造業およびハイテク製造業が引き続き市場をけん引しました。S&Pグローバル製造業PMIも50.9から51.5へ上昇し、過去6カ月で最も力強い海外販売の増加に支えられました。一方、サービス業および建設業は引き続き軟調で、非製造業PMIは49.0で横ばい、総合PMIも49.5にとどまりました。2026年7月の経済指標は国内需要の弱さを改めて示しました。鉱工業生産の伸び率は前年同月比4.5%へ鈍化し、小売売上高は同0.6%増にとどまりました。また、2026年1~7月の固定資産投資は不動産投資が19.2%減少した影響を受け、前年同期比6.7%減となりました。都市部調査失業率も5.0%から5.2%へ上昇しました。2026年第2四半期の実質GDP成長率は前年同期比4.3%となり、2026年上半期全体では4.7%となりました。これは政府が掲げる年間成長目標である「5%前後」を下回るペースとなっています。こうした状況を受け、当局は景気支援策を加速させています。2026年3月に発表された8,000億元規模の政策金融支援策について、同年8月24日から申請受付を開始しました。ただし、制度開始が年後半となったことから、2026年中の景気押し上げ効果は限定的とみられます。中国人民銀行(PBOC)は、1年物ローンプライムレート(LPR)および5年物住宅ローン基準金利を、それぞれ過去最低水準である3.0%、3.5%に15カ月連続で据え置きました。これにより、引き続き緩和的な金融政策スタンスを維持する姿勢を示しました。債券市場では国債利回りは概ね横ばいで推移しました。2年国債利回りは約1bp上昇した一方、10年国債利回りは約3bp低下し、イールドカーブは小幅にフラット化しました。これは、弱い国内需要と今後も継続すると見込まれる政策支援への期待との間で投資家がバランスを取ったためです。人民元は上昇基調を維持し、2026年8月には米ドルに対して約0.5%上昇して6.72元近辺で取引を終えました。背景には、同月の米ドル安基調と中国の継続的な経常黒字があります。

力強い製造業生産が堅調な企業心理を裏付け

タイ(米ドルベース・為替ヘッジなし:0.7%)

タイの10年国債利回りは2026年8月に8bp上昇しました。一方で、現地通貨ベースのリターンは概ね横ばいだったものの、タイバーツが0.7%上昇したことで、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは0.7%となりました。総合インフレ率は、燃料価格や食品価格の上昇を背景に、2026年7月の前年同月比1.95%から同年8月には2.53%へ加速しました。コアインフレ率も約1.4%まで上昇しました。製造業は引き続き堅調な拡大局面を維持しました。S&Pグローバル製造業PMIは54.2から53.8へやや低下したものの、生産は2026年に入ってから2番目に高い伸びを記録し、新規受注も力強く増加しました。また、企業景況感は2026年1月以来の高水準に達しました。経済成長は引き続き緩やかかつ業種間でばらつきが見られましたが、輸出および民間投資は世界的なテクノロジーおよびAI関連需要の拡大から恩恵を受けました。失業率も低水準を維持しています。タイ銀行は2026年8月26日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%に据え置きました。当局は、現在の緩和的な金融政策スタンスが適切であるとの見方を示す一方で、エネルギー価格に起因するインフレリスクや地政学的リスクを引き続き注視しています。

フィリピン、中銀が3会合連続で利上げを実施

フィリピン(米ドルベース・為替ヘッジなし:0.3%)

フィリピンの10年国債利回りは2026年8月に12bp低下し、フィリピンペソ建てリターンは1.9%となりました。一方で、ペソ安による寄与が▲1.6%となったため、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは0.3%にとどまりました。総合インフレ率は2026年7月の前年同月比6.2%から同年8月には6.1%へわずかに低下しました。また、コアインフレ率も4.2%から4.1%へ鈍化しました。しかし、いずれもフィリピン中央銀行の目標レンジである2.0%~4.0%を引き続き上回っています。製造業は大きく改善しました。S&Pグローバル製造業PMIは51.8から54.9へ上昇し、2016年12月以来の高水準を記録しました。生産と新規受注が加速したほか、輸出需要も再び増加に転じ、雇用は5カ月ぶりに増加しました。一方、2026年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比2.3%と低い伸びにとどまり、投資活動の低迷が影響しました。また、直近の労働市場指標からは、雇用環境の軟化も示唆されています。こうした状況の中、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)は2026年8月27日に政策金利を0.25%引き上げ、5.0%としました。これは3会合連続の利上げであり、食品価格、エネルギー価格、輸送コストの上昇に伴う根強いインフレ圧力を抑制することを目的としたものです。

新規受注と生産が減少し、香港の景況感は悪化

香港(米ドルベース・為替ヘッジなし:0.0%)

香港の10年国債利回りは2026年8月に6bp上昇しました。一方で、香港ドルによる寄与はほぼゼロであったため、米ドルベースの為替ヘッジなしリターンは0.0%となりました。2026年第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.3%となりました。第1四半期の5.9%からは減速したものの、堅調な対外貿易と底堅い国内需要に支えられました。しかしながら、S&Pグローバル香港PMIは51.0から49.5へ低下し、民間部門の景況感が再び悪化したことを示しました。需要の鈍化と投入コストの上昇を背景に、生産および新規受注はいずれも減少しました。また、雇用も5カ月連続で減少しています。インフレ率については、2026年7月の消費者物価上昇率が1.7%となり、それまで2カ月連続で続いていた2.0%から低下しました。香港金融管理局(HKMA)は、香港ドルの米ドル連動相場制度(Linked Exchange Rate System)の下で、米国の金融政策環境との整合性を維持するため、政策金利を4.0%に据え置きました。

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