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アジア債券市場は「高金利の長期化」局面へ

世界的な金利上昇を受け、アジアの現地通貨建て債券市場では選別色が強まっています。そのような環境下では、債券の残存期間、通貨エクスポージャー、そして国内投資家による支援が重要な要素となります。

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Asia Pacific Head of Fixed Income, Head of State Street Investment Management Singapore

2026年9月、各国中央銀行はエネルギー価格の上昇を背景とするインフレにどこまで対応するかという課題に直面しました。その答えとして、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行(BOJ)は政策金利を引き上げ、FRBは追加利上げの可能性も示唆しました。一方、アジアの中央銀行はこれに追随しておらず、金利を据え置く国もあれば、選択的に金融緩和を進める国もあります。そのため投資家は現在、利回りの魅力度と為替変動リスクをそれぞれ個別に評価する必要があります。

引き締めサイクルが始動

2026年9月、主要市場の国債利回りは概ね大幅に上昇しました。米国とイランの対立再燃を受けてエネルギー価格が上昇し、インフレ懸念と金融政策の引き締め観測が強まりました。また、経済協力開発機構(OECD)は、このショックによりインフレ率が予想以上に長期にわたり高止まりするとの見方を示しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、エネルギー価格の上昇と根強いインフレ圧力を背景に景気見通しへの懸念が強まったことを受け、政策金利の誘導目標レンジを25bp引き上げ、3.75%~4.00%としました1。また、同会合で公表されたドットプロット(金利見通し)では、2026年末までに少なくともあと1回の利上げが実施されるとの見方が示されました2。

その後、日本銀行(BOJ)も政策金利を25bp引き上げ、1.25%としました。これは1995年以来の高水準であり、金融政策の正常化を段階的に進める姿勢を継続したものです3。これらの決定は、世界的に資金調達コストの上昇が続いていることを改めて示すものであり、米国金利の高止まりとアジア通貨への下押し圧力につながっています。

アジアの中央銀行は各国固有の事情に対応

地域の金融当局は一斉に対応するのではなく、それぞれの国内経済の実情に合わせて政策を調整しました。

中国人民銀行(PBOC)は、堅調な輸出の伸びと国内需要の弱さが対照的な状況を踏まえ、当初は政策金利を据え置き、慎重な姿勢を維持しました。しかしその後、政策銀行向け資金供給手段である1年物の補充的貸出制度(PSL)の金利を25bp引き下げ、1.5%としました。また、不動産市場の流動性を支えるため、住宅の初回購入者向けに住宅ローン金利補助を導入するとともに、銀行融資の促進策も実施しました4。

マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)は翌日物政策金利を2.75%に据え置きました。一方、インドネシア銀行(Bank Indonesia)も政策金利を5.75%に維持し、経済成長を損なうことなくルピア相場の安定とインフレ抑制を図りました56。現在では世界的な金利動向が市場の方向性を左右していますが、各アジア諸国の政策対応は、それぞれ固有の経済環境によって決定されています。

デュレーション管理とマクロリスク

中央銀行は短期金利を決定しますが、債券価格はあらゆる年限の利回りの変動によって影響を受けます。2026年9月は、残存期間の長い債券がいかに大きな影響を受けやすいかを示す結果となりました。長期債はデュレーションリスクが高く、金利上昇に対してより敏感に反応するためです。
日本はその好例でした。月初には10年物日本国債利回りが3.0%に達し、約30年ぶりの高水準となりました7。その後も、日本銀行による金融引き締めに加え、米国10年国債利回りが19年ぶりの高水準まで上昇したことを受けて、月後半には約3.06%まで上昇しました8。

中央銀行による政策金利の変更に加え、より広範なマクロ経済上のリスクも市場の不安定化要因となっています。中東地域における地政学的な緊張は、世界的なエネルギー供給や物流の要衝に圧力を及ぼしており、輸入インフレへの懸念を高めています。その結果、中央銀行が政策金利をより長期間にわたって高水準に維持せざるを得なくなる可能性があります。

米国の高金利は米ドルを下支えしており、為替変動によってアジアの現地通貨建て債券から得られる利回りの大部分が相殺される可能性があります。経済協力開発機構(OECD)とアジア開発銀行(ADB)は、長期金利のさらなる上昇、高止まりする原油価格、そしてAI関連資産のバリュエーション見直しを、世界経済の成長や地域の金融環境に対する主なリスク要因として挙げています。こうした不確実性が重なり合う環境下では、資本を守るために満期構成の選択がこれまで以上に重要になっています。

より選別的な長期投資の視点

こうしたリスクを踏まえると、長期投資の魅力は以下の3つの点に基づいています。すなわち、アジアの現地通貨建て債券は依然として魅力的な名目利回りを提供していること、発行体のバランスシートが良好なこと、そして主に国内機関投資家によって保有されていることです。実際に、この地域の現地通貨建て債券の約64%は、域内の銀行、保険会社、年金基金などの国内投資家によって保有されています9。

投資家は、アジア債券の利回りと通貨エクスポージャーをそれぞれ独立した投資判断として捉えることができます。これにより、地域のインカム収益を獲得しながら、為替変動リスクを別途管理することが可能になります。アジアの年金基金や保険会社にとって、現地通貨建て債券は、米ドルリスクを自動的に引き受けることなく長期的な負債に対応する手段を提供しています。ただし、アジアの現地通貨建て債券は一様ではありません。重要なのは、それぞれの市場や年限の中で、どこに投資価値が存在するのかを見極めることです。
 

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