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金と銀:2つの貴金属を比較する

長らく貨幣としての役割を果たしてきた金と銀は、いずれも現代において投資ポートフォリオにおける重要なリスク分散手段として利用されるに至ったものの、両資産は必ずしも同等レベルの分散効果やパフォーマンス、リスク抑制効果をもたらすとは限りません。以下では、詳細に掘り下げて、さまざまな景気サイクルを通じて、それぞれの資産が時間の経過とともにどのような動きを見せてきたかを検討します。


Maxwell Gold、CFA、
ゴールド戦略担当責任者

Diego Andrade、
シニア・ゴールド・ストラテジスト


すべての貴金属の中で、金と銀は明らかに貨幣として最高の実績を示しており、世界の通貨は数世紀にわたって金銀複本位制を採用してきました。米国通貨における銀との結びつきは1960年代で終わり、金本位制は、ニクソン大統領が1971年に米ドルと金の固定レートによる兌換を停止したことで終焉を迎えました。金との兌換停止は、しばしば「金の新規公開」とも呼んでいますが、これは金を一つの資産として民主化し、変化する景気サイクルを乗り切る役割が求められる現代のポートフォリオにおいて、金が戦略的資産としての役割を果たすための道を開くものでした。

通貨から資産クラスへ:2つの金属の価格変動要因を理解する

通貨としてのつつましいスタート以降、金と銀はともに、いくつかの大きな方向転換を経て、現在では潜在的な価値保全機能およびポートフォリオのリスク分散手段として、世界の投資家にとって魅力的な存在となっています1。とはいえ、価格、パフォーマンス、ボラティリティ、リスク管理といった面で、両資産がポートフォリオにおいて果たすことのできる固有の役割には大きな相違点が見られます。

多くの実物資産と同様、両資産の価格は、それぞれ固有の需給関係によって変動します。今日、銀は依然として幅広く利用される貴金属であり、その価格は主として工業用需要および生産量に左右されます。長期的には、銀への需要は多様な工業用途に大きく依存するため、経済成長に合わせて増減する傾向にあります(図1参照)。

対照的に、金に関しては工業やテクノロジー用途から世界の宝飾需要に至るまで、その需要は多岐にわたります。加えて、金は投資商品としての利用のほか、世界の中央銀行の準備資産としての役割も果たしています。こうした需要の多様性は、景気サイクルのあらゆる段階において、金と伝統的な株式や債券、そしていくつかの実物資産との低相関を支える役割を担ってきました。

図1:セクター別貴金属需要

出典:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズおよびワールド・ゴールド・カウンシル、2020年12月31日現在のデータ。注記:2016年から2020年までの年間需要の5年平均。**ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズおよびリフィニティブ、2019年12月31日現在のデータ(利用可能な最新データ)。注記:2015年から2019年までの年間需要の5年平均。

実際、様々な景気サイクルの中で、システミック・リスクや市場の混乱に対処してきた理由としては、この金特有の需要ダイナミクスが挙げられます。2020年に、「安全な逃避先」2としての魅力や潤沢な流動性3から記録的なペースで投資資金が流入したように、金投資の拡大という需要シフトが、パンデミックに関連した宝飾品および中央銀行の需要減少を相殺したことは、金が多様な需要に支えられていることの証左といえます。

図2:異なる景気局面における金の需要の比較

出典:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズおよびワールド・ゴールド・カウンシル、2020年12月31日現在のデータ。

供給の観点から見ると、金は銀よりも遥かに希少性が高いことが、これまでの両者の価格差に表れていると言えますが、その違いを分析すると、様々な景気サイクルを通じて金特有の需給特性がいかに価格変動を抑制することに寄与しているかを理解することができます。上段のグラフに示されるように、銀の年間供給量はトン数ベースで金の約7倍です。しかし、時価ベースでは銀の年間供給量は金に比べて比較にならないほど小さいことから、銀市場は相対的に流動性が低く、ボラティリティが高くなる結果となっています。(下段のグラフを参照)。

図3:希少性が金の価格を押し上げ、金価格のボラティリティを潜在的に抑制

出典:ワールド・ゴールド・カウンシルおよびシルバー・インスティテュート、2019年12月31日現在。注記:銀に関する入手可能な最新データは2019年12月31日現在のものです。金および銀の年間供給量(金額ベース)は、数量ベースの年間供給量に金および銀の年末価格を乗じて算出したものです。

金銀比価 

金銀比価は、両者の相対価値の評価に利用されるテクニカル指標です。下に示すように、この比率が低いほど金は過小評価されており、逆に高いほど銀がより魅力的であることを示します。この比率は、どちらが過大評価されているかを示す指標ですが、銀の場合、需要の大半を工業用途に依存していることが、物価上昇に対する脆弱性につながっており、金の長期的な実質リターンが相対的に優位である要因となっています。

図4:金銀比価とプライスポイントの理解

出典:ブルームバーグ・ファイナンスLP、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのデータは1971年8月1日から2021年2月28日までのもの。注記:金は金スポット価格(ドル/オンス)で、銀は銀スポット価格(ドル/オンス)で表示、金銀比価は金を銀で除すことによって算出されています。指数には、手数料や費用等は反映されていません。過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。

それぞれの資産の分散化効率を分析する

パフォーマンスとは別に、各資産のリスク分散効果あるいは、資産間の値動きの関係性を理解することは、ポートフォリオのリスク/リターン特性の改善を追求するための一つの方法です。相関の低い資産をポートフォリオの追加することにより、リスク分散効果が期待できることから、さまざまな景気サイクルを通じてポートフォリオのパフォーマンスの最適化を追求することができます。

以下に示すように、過去1年間、金が世界株式やコモディティ全般に対して低相関を維持してきたことは、金が相対的に高いリスク分散効果化をもたらすことを示唆しています。

図5:金の過去1年の相関

出典:ブルームバーグ・ファイナンスLP、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ。金価格は金スポット価格(XAU)で表示。銀価格は銀スポット価格(XAG)で表示。世界の株式にはMSCI ACWIを使用。コモディティにはS&P GSCIスポット指数を使用。相関は2021年2月28日までの1年間の米ドル建て日次リターンから算出。過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。

ポートフォリオのリスク分散効果は、ポートフォリオの長期的なリスク調整後リターンによって測定することができます。以下に示すように、金は、過去の多くのブラック・スワン・イベントにおいて平均して銀をアウトパフォームしたことにも示されているように、歴史的に競争力のあるリターンを上げてきました。金が株式の大幅下落に対するヘッジとして機能し、ポートフォリオのドローダウンを抑制してきた実績は、ポートフォリオのリスク分散効果の可能性を示す重要な事例の一つとなっています。

図6:長期的なリスク分散効果の測定

出典:ブルームバーグ・ファイナンスLP、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ。1987年8月25日から2021年2月28日までのデータ。60/40のポートフォリオとは米国株式60%と米国債券40%のポートフォリオ。金と銀を付加した60/40のポートフォリオとは、株式54%、米国債券36%、金または銀10%のポートフォリオ。金:米ドル建て金スポット価格。米国株式:S&P 500 Total Return Index。米国債券:Bloomberg Barclays US Aggregated Index。銀:米ドル建て銀スポット価格。指数のリターンには、手数料や費用は控除されていません。過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。上記のパフォーマンスは、上場投資信託の売買に関連したファンド関連の手数料や費用、または仲介手数料を反映していません。上記のパフォーマンスは、いずれの投資商品のパフォーマンスを表すものでもありません。

バリュー・アット・リスクを理解する

ボラティリティとは、ポートフォリオにおける投資商品にかかるリスク水準を把握するための指標の一つです。一般的に、ボラティリティが高いほどリターンのばらつきが大きくなり、予想収益率についての確信度も低下することから、リスクが高いと見なされます。銀は、比較的市場規模が小さく、需要も製造業や工業生産に依存していることから、歴史的にボラティリティが高い傾向にあります。以下の図に見られるように、1年ローリング・ベースで見た金と銀の週次リターンの標準偏差では、銀のボラティリティが金に比べて高いことが示されています。

図7:1年ローリング・ベースで見た金と銀の年率換算ボラティリティ

出典:ブルームバーグ・ファイナンスLP、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、1975年1月1日から2021年1月31日までの期間。注記:金は金スポット価格(ドル/オンス)で、銀は銀スポット価格(ドル/オンス)で表示。金と銀の過去の週次平均は、それぞれ17%と27%。指数のリターンには、手数料や費用の控除は反映されていません。過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。

金と銀を最大限に活用する

2021年の見通しが明らかになるにつれ、いくつかの要因が金、銀、その他コモディティに追い風をもたらし続ける可能性があります。実際、2021年は、テクニカル・リスクの高まりや景気サイクルの変化に対応するため、リスク分散効果が期待される資産がますます重要な役割を果たすと考えられます。分散投資の実行に際し、それぞれの資産がリスク調整後パフォーマンスの最適化にどのように役立つかを理解することは極めて重要です。2021年の市場リスクの舵取りを目指す投資家にとって、金は変化する景気サイクルを乗り切るためのリスク分散をもたらす効率的かつ低ボラティリティの資産である可能性があります。

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