取締役会のジェンダー・ダイバーシティ向上に関するステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのガイダンス

要旨

  • ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は、良好なガバナンスとプラスの投資結果の基盤として、取締役会のクオリティに重点を置いている
  • 我々は、取締役会が効果的で独立した統率力を確保することに関心を持っている。これには、取締役会が一連の正しい技能を備えることや、ジェンダー・ダイバーシティを含め考え方の多様性を持つことなどがある
  • SSGAは取締役会のジェンダー・ダイバーシティに関するレビューの一環として、6つの市場(オーストラリア、カナダ、欧州、日本、英国、米国)を対象に、多様性の水準について比較分析した
  • これらの市場では、大半の大手企業の取締役会に少なくとも1名の女性役員が含まれているものの、経営陣の中で男女平等を完全に受け入れるには至っていないことが分かった
  • 企業各社は、適切な女性役員候補者が限られていることを取締役会のジェンダー・ダイバーシティ達成に対する主要な障害として引き合いに出しているが、SSGAは現在の取締役の指名慣行に加えて、職場において女性の功績を過小評価しがちな行動が改まらないことが主な障害と特定した
  • 我々は、ジェンダー・ダイバーシティの向上を図る上で、取締役会が重要な役割を果たすと考えているため、取締役が組織内でジェンダー・ダイバーシティを推進するのを後押しするガイダンスを提供する

調査から、ジェンダー・ダイバーシティの高い企業はより堅調な業績を上げているだけでなく、贈収賄、汚職、株主との対立、不正行為などのガバナンスに関わる問題が少ないことが示されている。米民間調査機関のコンファレンス・ボードによる2017年1月の報告書では、良好な業績を上げている理由は、主に女性を取締役会に起用することによって、外部の視点が取締役会にもたらされる点にあると示唆されている4

SSGAはジェンダー・ダイバーシティを、業績改善を促すための多様な技能と専門知識として、取締役に対して取締役会が導入できる方法の一つと考えている。取締役会におけるジェンダー・ダイバーシティは、2015年以降SSGAのエンゲージメント・テーマとなっている。我々との対話の中で、大半の取締役会はジェンダー・ダイバーシティの向上を支持する一方で、適切な女性役員候補者が限られていることを取締役会のジェンダー・ダイバーシティ達成に対する主な障害として引き合いに出している。しかし、我々は様々な議論に基づき、現在の取締役の指名慣行に加えて、職場において女性の功績を過小評価しがちな行動が改まらないことが主な障害であると見出した。例えば、次のような障害が挙げられる。

  • 取締役候補を特定するための主要な人的リソースとして、従来からの取締役ネットワークや人脈に過度に依存していること
  • 全ての取締役候補に対して、取締役会に貢献するために、CEOの経験を求めること
  • 企業が組織の多様化を推進するための指針となるような、取締役会における指導的立場や経営上層部にいる女性の不足  5,  6
  • 組織内のジェンダー・ダイバーシティの向上がもたらす価値や必要性に対する評価や理解が限られていること
  • 職場の文化や組織内の人事関連の慣行に伴う、行動上の性別バイアスに対応する取り組みの不足
  • 個人が仕事と生活のバランスを達成する上で、助けとなる組織的な支援が限定的であること。これは、女性のキャリア・アップを阻止する場合があり、それによって、女性リーダーの育成に悪影響を及ぼす恐れがある

市場慣行
取締役会におけるジェンダー・ダイバーシティに関する2017年レビューから、オーストラリア、英国、米国の大半の大手企業の取締役会では、女性を取締役会に登用するために協調的な取り組みが行われていることが分かった。しかし対象を市場全体の株価指数を構成する企業に広げると、取締役会への女性の登用はかなり少ない(図表1を参照)。

図表1:オーストラリア、カナダ、欧州、日本、英国、米国における取締役のジェンダー・ダイバーシティの概要7

 

    日本   カナダ   米国   オーストラリア   欧州   英国
                         
    東証株価指数500(%)   トロント証券取引所総合指数(%)   ラッセル3000指数(%)   オーストラリア証券取引所300指数(%)   ストックス欧州600指数(%)   FTSE 350種総合株価指数(%)
                         
女性役員がゼロの企業の割合   55.4   37.0   20.0   9.0   2.4   2.0
                         

出所:ISSアナリティクス、2017年12月時点。

 

2018年にレビューの対象範囲を拡大して、カナダ、欧州、日本の3市場を追加した。2017年の調査結果と同様に、カナダと日本では、市場全体の株価指数を構成する企業における女性役員の起用不足が、大型株の株価指数構成企業と比較して顕著である。欧州では、多くの市場で取締役会のジェンダー・ダイバーシティ水準に関する規制要件が導入されているものの、ストックス欧州600指数を構成する一部の企業では、依然として取締役会ダイバーシティに欠けていることが示された。図表1に、女性役員がゼロの企業の割合を掲載している。 

ジェンダー・ダイバーシティに関するSSGAの立場

SSGAでは、良好なガバナンスが実施されるかどうかは健全な取締役会次第であり、その出発点となるのが強力かつ効果的で独立した取締役会のリーダーシップにあると考えている。「効果的」とは、適切な技能を備えていることを意味し、「強力」とは、取締役会の影響を行使する能力を意味し、「独立した」とは、取締役会が経営陣の言いなりになっていないことを意味する。取締役会ダイバーシティは、様々な技能、背景、専門知識を持った役員を起用することによって、取締役会のクオリティを高めると考えている。我々は取締役会ダイバーシティの達成には多くの方法があることを認識しており、あらゆる形態の多様性を支持するが、出発点として、取締役会が少なくとも複数の女性の独立取締役を登用するべきであると考える。さらに、取締役会は、経営陣や組織全体における性別多様性の強化に対し、経営上層部の期待値を設定する必要があると考えている。

我々が望ましいと考える手法は、企業および取締役リーダーシップとの積極的な対話や関与(エンゲージメント)を通じて取締役会ダイバーシティを推進することである。我々が企業に積極的に関与するため最善を尽くしたにもかかわらず、企業が取締役会における女性役員の数を増やす努力を怠った場合には、我々は状況を変えるために議決権行使に踏み切る。具体的には、必要に応じて、取締役会の指名/ガバナンス委員会の委員長、あるいは指名/ガバナンス委員会が不在の場合には筆頭取締役に対して、反対票を投じる。

取締役会のジェンダー・ダイバーシティ向上に関するSSGAのガイダンス

取締役会におけるジェンダー・ダイバーシティに関する我々の期待を踏まえ、SSGAは取締役会が女性の取締役への起用を促進するためのフレームワークを下記に策定した。

  1. 取締役会および経営陣内における現時点のジェンダー・ダイバーシティ水準を評価する
  2. 取締役会および経営上層部のジェンダー・ダイバーシティ水準の向上を目指し目標を設定する
  3. 取締役会および経営陣内において、設定目標を達成するための取り組みを支持する「ダイバーシティ・チャンピオン(推進者)」を特定する
  4. 役員候補者のピックアップや指名プロセスおよび経営陣の採用・昇進プロセスにおける行動バイアスに対処する

1「Why Diversity Matters(ダイバーシティはなぜ重要か)」マッキンゼー、2015年2月
2「Women on Boards: Global Trends in Gender Diversity on Corporate Boards(取締役会における女性:企業の取締役会におけるジェンダー・ダイバーシティの世界的トレンド)」MSCI、2015年11月
3「Is Gender Diversity Profitable?(ジェンダー・ダイバーシティは利益をもたらすか?)」ピーターソン国際経済研究所、2016年2月
4「The Effect of Gender Diversity on Board Decision-making: Interviews with Board Members and Stakeholders(ジェンダー・ダイバーシティが取締役会の意思決定に与える影響:取締役会メンバーおよびステークホルダーへのインタビュー)」コンファレンス・ボード、2017年1月
52017年12月時点で取締役会会長に占める女性の比率は、オーストラリア証券取引所100指数(ASX100指数)構成企業でわずか9.6%、トロント証券取引所総合指数(TSX総合指数)で4.9%、ストックス欧州50指数で8.2%、東証株価指数100(TOPIX 100)で1%、FTSE100指数で0%、スタンダード&プアーズ500種株価指数(S&P 500指数)で4.4%とわずかである。一方で、CEOに占める女性の比率はオーストラリア証券取引所100指数(ASX100指数)構成企業でわずか4.3%、トロント証券取引所総合指数(TSX総合指数)で1.8%、ストックス欧州50指数で0%、東証株価指数100(TOPIX 100)で0%、FTSE100指数で6.4%、スタンダード&プアーズ500種株価指数(S&P 500指数)で5.7%とわずかである。出所:ISSアナリティクス 2017年12月時点。
6取締役会のプロファイリング・ユニバースには、オーストラリア証券取引所100指数(ASX 100指数)採用の94社、トロント証券取引所総合指数(TSX総合指数)採用の223社、ストックス欧州50指数採用の49社、東証株価指数100(TOPIX 100)採用の100社、FTSE 100指数採用の94社、スタンダード&プアーズ500種株価指数(S&P 500指数)採用の495社が含まれる。出所:ISSアナリティクス、2017年12月時点。
7取締役会のプロファイリング・ユニバースには、オーストラリア証券取引所300指数(ASX 300指数)採用の289社、トロント証券取引所指数(TSX指数)採用の709社、ストックス欧州600指数採用の593社、東証株価指数500(TOPIX 500)採用の500社(2017年6月時点)、FTSE 350指数(FTSE 350指数)採用の302社、ラッセル3000指数採用の2,879社が含まれる。出所:ISSアナリティクス、別段の記述がない限り2017年12月時点。

本資料は、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが作成したものを日本の現地法人であるステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されます。また、図表等につき一部レイアウトが原文と異なる場合があります。あわせてご了承おきください。

State Street Global Advisors' Guidance on Enhancing Gender Diversity on Boards (English original)

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